心の在り方
ゆうあさ様作
人は自らの道を一人で決めることは滅多にない。
だが、それは一人一人の心の在り方によってちがう。
学問の道。
これは指導なしには得られない。
不良の道。
覚悟。自分が一人でも生きていける覚悟。
勉学に励めば遊べなくなったりする。
不良になれば世間からの目は厳しい。
そう全ての道には自分の意思、覚悟が必要である。
・・・しかしそれらは自分が決めた、自分だけの道。
そして・・・ハンターの道。決意。常に何かを失う覚悟。
嫌でもこんな気持ちを持っていなきゃいけない。
・・・そして・・・仲間すらも・・・。
「お〜い」ひときわ目立つ、少女が叫んだ。
目立つのは小さい背丈にもかかわらず背中に大きな大剣のせいだろう。
「今日は一緒に狩りに行くよねぇ?」
その少女は一人の青年の顔をのぞきながら言った。
「ゴメ!今日はむりだわw」その青年は笑いながら言った。
青年の名はスーザ・レリック。
「んもぅ!今日は、っていっつも一緒に言ってくれないじゃん!」
スーザは言い訳を探すように戸惑っていた。
「だ、だからそのさ・・・ルーンとはまだ狩りは早いかなぁ〜って思って・・・」
「そんなこと無いもん!!だってあたしよりスーザのほうが討伐数少ないじゃん!」
そうやって叫んだのはさっきの少女。
ルーン・マークル。スーザンの幼馴染である。
「一緒に来て見てよ!あたしの必殺剣が唸るんだからぁっ!!!」
ルーンは笑いながら言った。
しかしスーザはまた言い訳を探す子供のようになっていた。
「だから・・そのさぁ・・」
「もう、いい!スーザなんかもう誘ってあげない!!」
そう言うと、ルーンは走って酒場へ行った。
「・・・ふぅ・・」ほっと一息ついたスーザは
「俺、狩り苦手なんだよな・・・金になるって聞いたから頑張ったのに・・・これじゃ全然だよ・・まったく・・・」
独り言を言うとスーザは酒場へゆっくりと歩いて行った。
酒場へ行くとルーンがちょうど討伐に行ってるようだった。
「・・・・」
ルーンの行った後を悲しそうに見るスーザは仲がいい酒場のバイトの人にちかよった。
「シャラビさん!」
「あぁスーザ!いらっしゃい。・・・・もしかしてあんたもあの討伐作戦行くんじゃないでしょうね?!」
シャラビと呼ばれるお姉さんは真剣な眼差しでスーザを見た。
「?いやいかねぇ・・ってかなにそれ?」
不思議そうにシャラビをみていたスーザが聞いた。
「ふぅ・・・そうよね・・あんた規定満たしてないもんね・・・」
安心そうに下を向くシャラビにスーザが口を開いた。
「だからなんなの?それ」
下を向いていたシャラビは顔をあげ真剣に話始めた。
「・・・さっきギルドからHR5以上の若者たちに収集がかかったわ・・・」「?そうなの?でも別に俺には関係ないでしょ。」
スーザは笑いながら答えた。
「あんたはいいかもだけど・・・さっきルーンちゃんがいったわ・・・」
「! 一人でか!?」スーザは叫んだ。
「違うわ・・・いつものギルドのメンバーよ・・・」
「ふぅ・・ならいいじゃん?べつに」
胸をなでおろすようにスーザが答えた。
「違うの!ルーンの前に何組か討伐に行ってからかえって来てないの・・・!」
――え?
「じゃなんでルーンを行かせたんだ!止めればいいじゃないか!あいつはまだ俺より小さい子供だぞ!?」
そう。だからルーンとは一緒に狩りに行きたくなかった。
子供に負けるのが悔しいから・・・。
シャラビはうつむいて顔を上げない・・・
「いい!俺が行く!」スーザはわけも分からないことを口に出していた・・・。
「無理よ・・あんたHR5もないじゃない・・・」
「無くても!・・・フィールドに行けばなんとか・・」
「あんたじゃ無理なのよ!!!」
スーザがひるむほどの大声で言った。
「やって見なくちゃわかんない―――」
「わかるわよ!!・・・それにまだルーンがやられったって証拠はないでしょ?・・信じてればきっとかえって来る・・」
「・・っち・・・」両手を合わせるシャラビをみてスーザは舌打ちした。
――――3時間後―――――キィ・・・・フィールド方面のドアが開いた。「!」スーザはすぐに振り返ったがそこにルーンの姿は無かった・・・「・・・くそっ・・」
そしてまた向き直ると今帰ってきたぼろぼろのボウガン使いが話しかけてきた。
「お、お願いだ、お、俺の仲仲間を助けてくれないか・・・」
今にも死にそうに話しかけてきた男にスーザは言った。
「残念だけど人を待ってるんだ。ほかの人に頼んでくれないか?」
そう言うと男は叫んだ。
「だめだ!!少数じゃだめなんだ!!みんなで戦わないと・・・」
男は言いかけて下を向いた。
そして勢いよく顔をあげ再び叫んだ。
「ルーンや、ほかの戦士が死んじまう!!」
――なに?
「ルーンだと!?ルーンも一緒なのか!?」
「・・・・あ、あぁ。そ、そうだ」
自分の心臓音が耳まで聞こえてくるようだった。
これ以上ききだせなくなる。自分の感覚が無くなる。
――なぜ?――――忘れてた――――俺の心の在り方・・・・
ルーンを守る・・・そうだった・・・俺は金のためじゃない・・・ルーンのためだった・・・・
二年前・・・
俺がまだ16歳のとき・・
ルーンは14歳だった・・・
「あたし絶対ハンターになるの!!もう決めたの!!だからスーザも一緒にハンターになろ?」
ルーンはスーザの顔を覗き込みながら言った。
「・・はぁ?なんでハンターになんかならなきゃなんねんだよ!ハンターはいつ死んでもおかしくないんだぞ?そんなことできるか!」
スーザはそっぽ向くように答えた。
――このとき俺はまだ親の決めた線路を通っているだけだった・・・。
「だってかっこいいじゃない!お金もいっぱいはいるんだよ?」
ルーンはスーザの前に出るように言った。
「あのな、別にかっこよくもないし、金だって親の店継いでりゃ生活費なんて簡単にはいるんだよ。」
スーザはちょこっとしゃがんでルーンの顔を見て答えた。
「だからそんなことじゃなくて・・・」
ルーンはうつむきながら答えた。
「じゃなんなんだよ・・・」
「だからその・・・あたしがハンターになったら・・その・・・あたしを守ってほしいの・・・そして・・スーザはあたしが守るから・・・」
ぎりぎり聞き取れる声の大きさでルーンは顔を赤くしながら答えた。
「・・・ったく・・わぁーたよ・・・」
スーザは顔を赤くしながら答えた。
「ホントに!?!?やったぁ!これからずっと一緒だね!!」
「ばっか・・・喜びすぎだ・・・」
――このとき俺は「ルーンを守る」そう決めたはずだった・・・
――なのに俺は!!!!
「くそぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
酒場中にスーザの雄雄しい声が響いた。
「スーザ・・・?」
シャラビが恐る恐るスーザの顔を覗き込んだ。
「っ!!!」
そこには両手から血を流し、涙を流しながら唇を食べんとばかりに噛み締めて、顔は恐ろしいとしか表現できないスーザが見えた。
「す、すーざ・・・・?」
シャラビは恐怖のあまり言葉をよく喋れなくなっている。
スーザは黙ってクエスト掲示板へ行き、緊急クエストの張り紙を見た。
「・・・秘境の地・・・・」
それを聞いたシャラビは叫んだ。
「駄目!あなたが行ったらあなたのお父さんの申し訳がたたない!」
そう。スーザがハンターになると言った時、親父は反対した。
その時助けてくれたのはシャラビだった。
「きにすんな。シャラビのせいじゃない。罪を感じることはないよ」
「でもっ!!」
スーザは抑えるようにしてシャラビを止めた。
「気にすんなって。これは親は関係ないんだから。これは・・・俺が俺の道を決めたときに歩むと決めたことなんだ!邪魔されてたまるか!」
そういってある程度の準備をして出口の前に立った。
「スーザ・・・」
「待ってくれ!お前一人じゃ無理だ!あいつに勝てるわけがない!」
さっきのボウガン使いがスーザを止めた。
「・・・・大丈夫!絶対にルーンと帰ってくっから!」
そう言ってスーザは一人旅立った・・・。
最後に見えたのは・・・スーザの背中の大剣だった・・・
――秘境の地・・・・ここから走って30分くらいか?
そして・・・今はクエストを受けていない状況だ・・・・
HR足りなかったからな・・・いや!今はとにかくルーンを助ける。それしかない!
俺はもう!!!親の作った線路を通らない!!!
自分の道を歩むため・・・ルーンとの約束のため!!!
「ハァ、ハァ、ハァ、くそっ!まだか!秘境の地は!」
スーザは全速力で走り飛ばしたが、まだ秘境の地は見えていなかった。
「くそ!くそ!くそぉぉぉぉ!!」
スーザはひたすら自分を憎んでいた。
ルーンを守ることを忘れた自分。
ルーンを傷つけた自分。
そして、今回の緊急クエストで討伐の対象となっている相手とルーンを戦わせようとしている自分。
最も危険だと称されている龍。
鋼龍・クシャルダオラ。
主に雪山生息していると思われているが、なぜか秘境の地に下りてきているらしい。
そしてHR30以上のハンター達が収集された。
ギルド側が危険だと判断したらしい。
「くそ!あともうちょいか!?」
走り続けるスーザはやがて森の中へと入って行った。
「ハァハァ、ここか・・・」
森に入るとすぐに異変に気がついた。
「・・・・ランポス達がいない・・・」
肉食のモンスターランポス。
こいつらはここに生息しているはずだった。
「・・・おかしい・・なにがおこってるんだ・・・?」
スーザは顔を横に振ってパンパンと頬をたたいた。
「急がなくちゃルーンが危ないんだ!」
そしてまた走り出した。
「秘境の地に着いたのはいいがどこにいけば・・・・」
ドォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!
「っ!なんだ!?」
スーザのすぐ近くできこえた爆発音は次第に木々の倒れる音に変わった。
「・・・こっちにくる!?」
耳をすましていたスーザは大剣を構えた。
「っく!こいつまだ倒れないよ!」
そこできこえたのは聞き覚えのある声だった。
「ルーン!!!?」
スーザは叫んだ。
「スーザ!来てくれたの!?」
ルーンは後ろを向きながら答えた。
「あぁ!俺がお前を守るっていったろ?」
「バーカ遅いのよ!」
ちょっと照れ笑いしながらルーンが答えた。
「ルーン、そこの剣士!話は後だ!!!奴が来るぞ!!」
そう言ったのはルーンと一緒にいた剣士。太刀使いだ。
「来る!?もしかして奴がいるのか!?」
「うん。さっきから戦ってるんだけど倒れないの!ねぇ、グレイブ?」
グレイブと呼ばれる成年は太刀を構え木々が生い茂っている方向を睨んでいる。
「!来るぞ!!」
グレイブの声で皆がいっせいに剣を構えた。
「ゴォォォォォォォォォン!!!」
寛大な鳴き声とともに姿を現した龍。
クシャルダオラ。
奴の体には、少しながらも傷が入っていた。
「こいつが・・・クシャルダオラ・・・?」
ギン!っと恐ろしく睨みつける龍は口の回りに何かをためている。
「!くるよ!!」
その合図でみんなが一斉に散らばった。
次の瞬間スーザのいた場所は凍っていた。
「っく!あぶえぇ・・・・」
「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
グレイブは太刀で奴ののどもとに衝きつけられた。
「ッぐ!こいつ全然刃をとおさねぇ!!」
グレイブの太刀は弾かれていた。
「なら俺が力で!!」
ギャォォォォォォ!!スーザの剣は見事、背中に突き刺さっていた。
「うわぁ!」
クシャルダオラは背中に乗っていたスーザを弾き飛ばした。
――逃げられない
スーザの血が足からポタポタ落ちている。
奴の口から冷気が零れる。
――駄目か・・・
「ごめん。約束守れそうにない・・・ごめん・・・!」
スーザは泣いていた。
ルーンは走っていた。
グレイブは太刀を突きつけていた。
俺は、動けなかった。
――ルーンホントにごめん。
――俺さよならだ。
「ありがとう」
最後にはっきり見えたのはルーンのこぼれ落ちる大量の涙だった。
――全てがスローにみえた。
――この地球が一瞬でも止まったような気がした。
世界が止まったような気がした。
「スーザァ!!」ルーンの声が聞こえた。
「生きなさいよぉ!!!」
――ムリだよ・・・
「生きて!!生きるのよ!!!」
――ムリだって・・・
「あんた決めたんでしょ!!?あたしを守るって!!!心に決めたんでしょ!!?」
――俺がルーンを・・・?
守る・・・?
守る・・・・
守りたい・・・・
それなら・・・・
動け・・・・・
動くんだ・・・・・
動け!!!!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
世界が・・・・
動き出した・・・・
クシャルダオラも、スーザも、ルーンも、グレイブも。
スーザは自分が握っていた大剣、【紅蓮】を握りなおした。
「くっそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
スーザは握りなおした大剣を、クシャルダオラの顎に向かって切り上げた
ギャオォォォォアァァァァ!!!
スーザの大剣はクシャルダオラの顎を切り上げてクシャルダオラはのけぞった。
「スーザ!」
ルーンは嬉しそうにスーザに駆け寄った。
「お前のお陰だよ!ありがとう!」
スーザは足を引きずりながら立った。
「何言ってんの、あたしがスーザを守るっていったでしょ!!」
「へへっ・・・・」
二人は照れながらも喜んでいた。
ギャオォォォォォォォ!!
「!」
確かにクシャルダオラは口から冷たいものを出して激怒している。
「怒ったみたいだな・・・」
グレイブは二人に近寄りながら言った。
「でもそれだけ効いたって事でしょ」
グアァァァァァ!!
「こっちに来てるよ?」
「だね」
「俺がひきつける!ルーンはスーザを頼む!」
「わかった!」
そう言ってグレイブは閃光玉を投げた。
ボン!ピカ!グァァァァ!!
「よし!」
そのうちにルーンはスーザを遠くへ連れて行った。
「足出しなさいよ!」
スーザはフン!としていたがルーンに小突かれて足を差し出した。
「・・・・ゴメンな・・ルーン・・・」
ルーンは、うんと頷いた。
「お前のお陰で生きてる」
「そんなことないよ?スーザは自分で生きようとしたから生きてるの」
ルーンはスーザを見つめながら答えた。
「うん。もう迷わない。俺はルーンのために生きる。守る」
――うん。スーザ、ありがと。
「よし!なんとか足は動く!これから奴を狩りに行くぞ!」
「うん!」二人は大剣、【紅蓮】【氷麟魔】を構えて走っていった。