ライフライン
古龍観測所様作
―海・雨・川・日の光・街・道・命たち。
全ては重なり合い、そして歌い揺れる大舞台の上に―・・・
その中で人は、絶対の存在である<飛竜>と戦い、日々の糧として生きるために・・・
サンサンと照らす太陽の下、ドンドルマの街は今日も活気づいていた。
そんな街の中に、全身をハンター装備で歩く青年が一人。
彼の名はリオン・ストライフ。
この街に来てまだ日は浅いが、期待のルーキーとしてギルドマスターからも
一目置かれる存在だった。
なぜなら、村あがりのリオンがこのドンドルマで初めて成功を収めたクエスト・・・
それが、<砦防衛戦>―・・・つまり<老山龍ラオシャンロン>の撃退だったからだ。
とはいえ、緊急で街に残っているハンターを集め砦に赴かせただけである。
―と、周りの先輩ハンターは、リオンを嫉妬し、噂を広げる者もいた。
しかし、リオンの実力はその噂通りなワケがない。
しっかりと、老山龍に攻撃を与え手傷を負わせたのだ。
その証拠に奴の背中には、村から愛用の片手剣<イフリートマロウ>が刺さっている
無論、それは偶然ではなくリオンが故意に自分の実力を見せつけるためであった。
「さてと・・・行くか・・・」
リオンは街の広場に来ると、寄り道せずに大衆酒場へと入っていった。
予想通りリオンが酒場へ入ると、ハンター達の視線はこちらへと向けられた。
その視線はさまざまである。
憧れの眼差しを向ける者
冷やかすような視線で一瞥する者
何とも思わないのか、すぐに目の前の食事に戻る者―・・・
「ふん・・・」
リオンは、ハンター達に遠慮することなく堂々と椅子に腰かけた。
すると、すぐに隣へ座りリオンに話しかけてくる者がいた。
毎度のことだが、とことん迷惑な奴だ―・・・
どうせいつものように無駄にからんでは、邪魔をするだけだろう。
ハンターには、さまざまな種類の人間がいる。大半は変人だが。
だから、こうして野次馬根性を見せる輩も少なくない。
「へへ・・・どうも期待の新人さんよォ・・・ハンター装備なんかであの老山龍撃退に参加するたァ、たいそうな自信ですね・・・へへ」
明らかに酔っている。喋るたびに口から酒の臭いがする。
この男―・・・自分の装備を馬鹿にするわりには、自分自身の装備もお粗末である。
頭は何も着けておらず、胴から腰まではバトル装備、脚はブルージャージときた。
容貌は、頬がやせこけておりアゴには無精ひげが生えている。
あいにく今日は機嫌が悪い。仲間が人を呼びつけておいて、まだ来ないからだ。
「―・・・からむな、消えろ。」
リオンは男を一瞥し、そう言うと注文をとりにきたベッキー方へ向き、
ビールとオッタマケーキを注文した。
「け・・・何でぇ!少しマスターに気に入られてるからってよォ!!」
そう言って男は、立ち上がり機嫌悪そうに歩いていった。
それから15分が過ぎただろうか。やっと待ち合わせていた仲間<カズ>が到着した
「やっほー!!リオン、待ったぁ?・・・待ったよねぇ・・・」
リオンの顔を見て、不機嫌なのを悟ったのかカズは言葉をごもらせた。
「お前、人を待たせておいて何やってたんだよ!お前のせいでまた、馬鹿みたいな奴にからまれたんだぞ!?」
カズが座るやいなや、リオンは怒声をはった。
「ごめんごめん!実はさ、今日市場が特売日なのを見つけたら買わずにはいられなくなってね―・・・」
カズらしい―・・・と小さくつぶやくとリオンは注文がとどいたビールに手を当てた
カズは、街に来てから初めて知り合ったハンター仲間で、
リオンが心を許したうちの1人である。
もちろん、実力も見た目からうかがえる装備をしていた。
全身ガレオス装備―・・・しかもただのガレオス装備ではない。
Sの銘がつく一級品である。
武器は、主にハンマーを使用していた。
しかし、彼のきゃしゃな腕からはとても想像がつかない。
年齢も19歳と若く、リオンと同い年なためか、なんだかんだで馬が合った。
顔はリオンとは逆に優しそうな顔つきをしている。
そんなカズに、今日はリオンそしてもう2人の仲間が呼び出されたのだ。
「―・・・にしても遅いねぇ、ハル姉とザンギロフのおっさん。」
この2人も、リオンとは街で知り合った仲だが、深い交流がある。
カズと同様にリオンにとっては、背中をあずけることのできる頼もしい仲間だ。
「お前が言うな。ま、あの2人はハンターランクも高い。俺たちとは違って色々と依頼も回って来るんだよ。」
リオンは、遠くを見ながら再びビールを飲んだ。
「―・・・だねぇ、老山龍撃退したってハンターランクはまだ21だしね!」
ニカッと笑い、カズはリオンを見た。憎たらしい発言なのだが、
どうしてもカズを憎むことはできなかった。
得な性格だ―・・そう思いつつリオンは苦笑いをした。
その時だった。酒場がざわつきだしたのは。
入り口を見るまでもない。この状況が彼の来た証拠だった。
背中に人の気配を感じる。だが、リオンは振り返ることなくこう言った。
「よォ、おっさん・・大遅刻だぞ?」
「ガハハ!許せ、お前たちとは違って忙しい身なのだ。」
そう言うと再びガハハと笑って、リオンの隣にドカッと腰掛けた。
彼の名がザンギロフ。
ハンターランクが53と大ベテランハンターである。
彼は、数少ない<大老殿>への入室を許可されたハンターの1人であった。
<大老殿>とは、ハンターランク31以上になると、
この<大衆酒場>ではなく、ギルドマスターの上の者である<大長老>から直々に
依頼を要請される場所である。
<大老殿>へ入室を許されたハンターは、永遠にギルドの歴史に名を刻み、
莫大な名声と富を手に入れることができる。
いわば、ハンターの目標の一つでもあった。
リオンの2倍近い体型の彼は、全身をグラビモス亜種の装備で身を包んでいた。
もちろん、彼の装備にもUの銘がついていた。
UもSと共に一級品の証である。
「リオン!お前はレウス装備持っていただろう?ハンター装備もボロボロではないか。ましてや、その装備で満足できる実力じゃなかろう」
ザンギロフはリオンの全身をなめるように見回した。
「わかってるよ。変えようとは思ってる。でも、村からの愛着が・・」
「か―ッ!!幼いぞリオン!お前、まだそんなこと言ってるのか!?こないだ死にかけたじゃんか!」
すかさず、カズがリオンの発言につっかかる。確かにその通りだった。
そんな言葉を聞いて、リオンはボソっとこうもらした。
「何かきっかけがあればふっきれるんだけど・・・」
「幼いわねぇ、アンタ。」
フッと顔を上げると、そこにはハル姉の姿あった。ハル姉はいつもこうだ。
酒場の連中にも騒がれるほどの実力者なのにもかかわらず、誰も気づかない。
―・・そう、彼女は気配を消すのがうまい。性格は荒いのに。
多分、仕事柄なのであろう。彼女はリオンの仲間の中で唯一のガンナーである。
しかも、ガンナー種でも珍しい最新の武器<弓>を愛用していた。
全身はレイア装備で覆われている。
無論、彼女も<大老殿>への入室を許されたハンターであった。
「ベッキー!ビールちょうだい!!ザンギロフとカズも飲むっしょ?」
「ガハハ!もちのろんだ!」
「・・・・あ、うん!!」
ようやくハル姉の声に気づいたハンター達はこちらを見た。
「お・・おい!速矢のハルだぞ・・!?」
彼女は、アーチャーとしての実力から<速矢のハル>という異名を持っていた。
そんなハル姉には、ザンギロフはともかくリオン・カズは逆らえない。
「さぁて・・全員揃ったね?」
3人の顔を見渡し、カズは話をきりだした。
カズの言うことだ、どうせろくなことではあるまい―・・・
と、3人は話半分に耳を傾けた。
「もったいぶるな。早く言えよ。」
リオンがそうせかすと、カズはゴホン!と咳払いをし、一呼吸をおいた。
そして・・
「ここだけの話なんだけど、最近になって伝説化していた<古龍>が目撃されたらしいよ・・」
驚きはしない。やっぱりカズの言うことだった。ハッタリだろう。
もしくは変な噂にひっかかったか・・だ。
他の2人も驚いた様子を見せなかった。この3人の様子に腹が立ったのか、
カズは先ほどよりも声を大きくして言った。
「本当だよッ!!古龍が目撃されたんだってば!!」
酒場が一瞬静まり返る―・・が、すぐに元の大騒ぎする酒場へと戻った。
周りのハンターも気にも止めていない証拠だ。
中には、期待の新人の連れはイカれているのか?とまで言われる始末。
「―・・野郎共ォ・・今に見てろよォ。俺の情報網、思い知らせてやる。」
「その自信は、どこからくるのやら・・」
リオンは思わずため息をついた。
「む!?何さぁ!!?」
「まぁまぁ、こうして4人揃ったんだ。何か依頼でもこなそうや」
ザンギロフは、半ば無理やりに2人を落ち着かせながら言った。
まだハンターランクの低いリオンとカズにとっては願ってもない話だ。
ザンギロフとハル姉の存在はとてもありがたい。
実力はあっても、まだ街での生活に慣れていないリオンにとっては、
特にそう感じられた。
もちろん、リオン達は断るわけがない。
「あぁ、そうだな。」
リオンはうなずいた。他の2人も無言のまま了解した。
カズは、少しふてくされて渋々といった感じだが。
今の季節は温暖期。
とても暖かで、寒冷期に比べるとモンスターたちもおとなしい方である。
この時期は、暑さで危険のためギルド側が砂漠への狩猟を禁止している。
ザンギロフは、クエストボードを見回し、
1枚の紙を取ると受付にいたベッキーに渡した。
ベッキーは、メニューの注文からクエストの受注管理まで全てまかなっている。
他にも店員はいるが、ベッキーが1番働いているだろう。
一部のハンターにはファンがいるとの噂を聞いたことがあった。
ハンターたちはベッキーと必ず顔を合わすことになるが、
ベッキーの素性を知っている者は、恐らくほとんどいないだろう。
当然リオンたちも知っているわけがなかった。
そんなことを考えているうちにザンギロフは、受付から戻ると一枚の紙を机の上に置いた。
依頼主 ガノン・ドノン
狩猟対象 ドドブランゴ一頭
報酬金 18000z
とだけ書かれていた。詳しい内容は受注主のザンギロフが知っているはずだ。
「依頼主は元ハンターらしい。今は西シュレイド地方にあるどこかの地主のようだ。
早く済ませてやりゃァ、ギルド管轄外でも報酬をいただけるかもな。」
ガノン・ドノン―・・どこかで聞いた名だ・・
そう考えつつも、リオンはザンギロフの話に耳を傾けた。
「出発は明日の早朝6:00!!・・雪山だ。ホットドリンクを忘れるなよ?
俺は、クエスト帰りだったので先に失礼するぜ。」
そういうとザンギロフは酒場を後にした。
リオンは、その背中を見送ると2人の方へ向き直りこう言った。
「お前たちの言うとおり、このハンター装備ともこのクエストでおさらばするよ。
次からは、レウス装備で!」
「いいんじゃない?ルーキーさん。あんたはそれくらいの装備でなくっちゃ。」
ハル姉は微笑みそう言った。カズもニカッと笑う。
クエスト出発は明日―・・・・
第二章 依頼決行
朝5:30―・・・
4人は、中央の広場から少し離れた竜車停に集まった。
ここから竜車に乗って、目的の雪山を目指す。ざっと2時間くらいで着くだろう。
ターゲットは雪山の統率者<ドドブランゴ>―・・
ザンギロフとハル姉がいれば、それほど恐い敵ではない。
リオンは、それを励みに自分の心に喝を入れた。
実力はあるといえど、まだルーキーには変わりない。
実質、4人の中で一番ハンターランクが低いのもリオンであった。
4人の背中には、それぞれの愛用の武器が備わっている。
まずはザンギロフ。彼の背中には、
リオンの身の丈ほどもある大剣<クリムゾンゴート>が。
この武器の切っ先にはドクロをモチーフにしたようなデザインがあり、
刀身の赤色がそれをいっそう禍々しく見せた。
さらに、火属性も備わっておりドドブランゴにとっては絶大の効果を誇る。
ザンギロフのそれを見越してのことであろう。
次に、ハル姉―・・彼女の背中には<パワーハンターボウU>。
こちらは、二つ折りにたたまれていた。
岩竜バサルモスの甲殻をマカライト鉱石と鉄鉱石で融結したものだ。
パーティ内にガンナーがいるのといないのとでは断然効率が違う・・
特に<弓>に関しては、サポートだけでなく攻撃面でも戦力になった。
そしてカズ・・・男の割には肩幅も広くなく、
一見ひ弱に見える彼が振り回すのは<ヴェノムモンスター>というハンマーだ。
強い毒属性を兼ねており、モンスターたちの体をむしばむ恐ろしい武器。
その形状は毒怪鳥ゲリョスを思わせる。
最後にリオン―・・愛用の<イフリートマロウ>が老山龍と共に消えてしまったので、リオンは、今回のみ同じハンターであった亡き父の武器を借りることにした。
それは太刀<天下無双刀>―・・・・
昔、父が何頭もの飛竜を沈めてきた代物だ。
<天下>と名乗るだけあって刀身は鋭く、真血を注いだように光る紅は、
とても妖しく輝いていた。
今まで、この武器を使用しているハンターは見たことがなく、
それがリオンにとっては嬉しかった・・自分と父との間だけの武器だと―・・
素材は何で出来ているのかは知らないが、きっと貴重なものなのだろう・・
「うおッ!何かすげぇ太刀だな!?リオン!」
カズはリオンの太刀を輝かしい目で見た。
「あぁ・・親父の形見だ・・新しい武器が出来るまで借りることにしたんだ。」
刀身を見つめながらリオンはこうもらした。
そうこうしているうちに、今回リオン達を無事に雪山へと送るべく任務を
受けたアイルーが現れた。白い毛が明け方の日差しに反射してまぶしい。
「えーこの度、あにゃた方を雪山へ届ける役目を授かった・・
私、リムと申します。どうぞよろしくお願いしますにゃー!」
そう言うとリムは、ぺこりと小さな頭を下げた。
「あぁ、こちらこそ。さ、時間だ。」
そう言ってザンギロフは一足先に竜車の中へ入っていく。
入る時に、リムへマタタビを渡すのが見えた。
基本的に竜車を動かすアイルーへの報酬は現金ではなく、マタタビと決まっている
ザンギロフはきっとそれを払ったのだろう。
「さ、私たちも行きますか。」
ハル姉もザンギロフの後へと続いた。カズもその後ろを行く。
ここに集合してから、そう時間は経ってないのだが、雲が多くなった気がする。
その雲は、雪山の方向から続いていた。
「何だろう・・嫌な予感がする。」
リオンは言葉に表せない不安をその雲に感じた。
しかし、すぐに気持ちを切り替え、大きく深呼吸をし最後に竜車へ乗り込んだ。
竜車の中は、思ったより広い造りになっている。
村上がりのリオンには特にそれが感じられた。
村の竜車は、1人乗れるくらいのスペースしかないからだ。
「出発しますにゃー!」
かけ声と共に、運転手のアイルー<リム>は二匹のアプトノスにつながれた手綱を
引っ張った。
すると、アプトノスたちは低いうなり声を上げ、ゆっくりと走り出す。
リオンは、竜車の中で揺られながら静かに目を閉じた。
リオンが目を覚ましたのは、竜車の窓から雪山が見え始めた頃だった。
出発した時よりも雲が重い―・・
そう思いながら3人を見ると、ハル姉を除く二人も眠っていたようだった。
「あら?あんた目、覚めたの?そろそろだから、準備整えときなさい。」
リオンは目をこすりながらうなずいた。どうやらハル姉は準備万全のようだ。
他の2人も起こすと、リオンと同じように目をこすりながら、
自分の準備にとりかかっていく。
「なんか嫌な空模様してるね〜」
カズは窓を見て、空の状態を確かめた。
その言葉にハル姉も窓に目をむける。
「・・・そうね。何事もなければいいけど・・」
顔をしかめて、そう言いながら道具の最終確認にはいる。
そうこうしているうちに竜車は、目的地である雪山のふもとへとたどり着いた。
「皆しゃまお疲れ様でした。無事雪山に着きましたにゃー!!」
リムの声が外から聞こえると同時に竜車の動きは止まった。
「世話になったな。帰りは2日後のこの時間に頼む。」
ザンギロフは、そう言うと報酬とは別にマタタビをリムに渡した。
「にゃにゃッ!どうもありがとにゃー!では、健闘を祈るにゃ〜」
リムはそそくさと再び竜車に乗り、アプトノスの紐を引いた。
4人は、最後まで彼らの背中を見送る。見えなくなるとザンギロフは踵を返して言った。
「―・・ここでいいだろう。拠点となるキャンプは。」
有無を言わさず、ザンギロフは竜車から降ろしたキャンプ用具を広げ始めていく。
リオンたちもそれに続き、着々と準備にとりかかった。
30分くらい経っただろうか。キャンプ地はほぼ完成し、
4人はカズの焼いてくれたこんがり肉にかぶりつきながら、
地図を広げ作戦について話し合っていた。
「この時期、ブランゴの奴らも、うろついているから厄介ね。」
ハル姉は、そう言いながら
地図にブランゴの棲息するであろう地点に印を付けていく。
「あぁ、目的のドドブランゴを探すのにもあまり時間をかけたくないな。
なにしろこの天気だ。」
リオンは空を仰いだ。あいかわらず雲はどんよりと上に留まっている。
「やっぱり2:2に分かれて捜索するしかないか。ここは、俺とリオンがおっさんとハル姉のどっちかについたほうがいいよね?」
「あぁ、戦力分散するんだ。カズと一緒じゃきっと死ぬ。」
「あーひどっ!なんか俺が弱いみたいじゃん!」
「ガハハ!今頃気づいたのか?」
終始このようなやりとりで和んでいた場に、水をさすように強い風が吹いた。
その風はとても冷たく何やら嫌なものを感じさせる。
「・・おかしな風ね。ま、いいわ。じゃんけんでペア決めましょ?」
最初はグーの合図で4人は手を一斉に出す。
その結果、リオンはハル姉と、カズはザンギロフと組むことに決まった。
「じゃ、何かあったり見つけたりしたらこの<角笛>で。」
そう言って2組はそれぞれの雪山への道を歩き始めた。
第三章 VS雪山の統率者
リオン達の班は、キャンプ地から出てすぐの右ルートへ足を運んだ。
雪山は初めてではない。だから、道も少しくらいなら覚えている。
ハル姉は、きっとリオンの回数以上にここを訪れているだろう。
だが、いくら何度も来てるからといっていつも同じ状況とは限らない。
なにせ、雪山の天候は常に不安定である。
実際、リオン達が来る以前にも吹雪があったのか
所々道の造りが変化した痕跡がある。
さらに、雲が空全体を覆っているので太陽を拝むどころか、
雪が降ってこないのが不思議なほどである。
「冷えてきたわね・・。リオン!ホットドリンク飲んでおきなさい。」
「ん・・?あぁ・・」
ハル姉の言われたとおりにリオンは、
腰についているポシェットから赤い液体の入ったビンを取り出し、
一気に飲み干した。
途端、さっきまで冷えていた手足がウソのように温まってくる。
これがホットドリンクの効果である。
飲み干したビンをポシェットに戻すと、
足元に何やら妙なものが落ちているのに気づいた。
「・・・?何だこれ・・鱗・・?」
リオンが手に取ったそれは、鋼鉄のようなもので出来ており、
何かの鱗を思わせる形をしている。
だが、ドドブランゴはこのような鱗を持っておらず、
目標のものではない事に気づいたリオンは、その鱗をポシェットにしまい
何事もなかったかのようにハル姉の後を追った。
一方、カズとザンギロフはキャンプ地から出て、そのまま道を直進した。
その道の先では草食獣<ポポ>がのんびりと草を食べている。
この<ポポ>から採れる食材であるポポノタンは、非常に美味で2人もよく食べる。
しかし、今回の目的はポポではないので2人はそのまま道を進んだ。
吹雪の後だったので、やはりこちらも少し道が崩れたりしているのが
度々目に入った。しばらく歩き続けると大きな崖に突き当たった。2人はここを何度も通っている。いつものように上の丘へと登るため2人は近くにあったツタを登り始めた。
その時だった。2人の頭上が大きな影に覆われたのは。
反射的に上を見上げる。
何もない。あるのは朝からでている黒い雲―・・・
「・・・何だったんだ?今の・・」
「さぁな―・・だが、あまり良い予感はしないな。」
2人はしばらく黙り込む。だが、そうしてもいられないので
再びツタをつかむ手に力を入れた。