あるハンターの記録 竜神編
かるら様作







Epilogue

後の世の者は、この荒々しくも眩しかった
数世紀を振り返り、こう語る。
大地が、空が、そして何よりもそこに住まう人々が、
最も生きる力に満ち溢れていた時代であった、と。
世界は、今よりもはるかに単純にできていた。
すなわち 狩るか、狩られるか。
明日の糧を得るため、己の力量を試すため、
またあるいは富と名声を手に入れるため
ハンターたちの明日は続いていく――


1話 青年の旅立ち、青い狩人を追って


――ピーッピピピッピー
 「ん?…んん?もう朝?…朝だ!!」
 心地よい鳥の音と共に目覚めた少年は一目散にベッドから飛び起きた。
 温暖な天気と、豊富な資源。ここ、『ココット村』に、今、新米ハンターの誕生を迎えようとしている。
 ココット村では、『ココットの英雄』という伝説の片手剣使いが村長を務め、日々新米ハンターに、ハンターのいろはを教え込んでいる。
 今、目覚めた少年も、少なからずその『伝説』を夢見てハンターを志望した。
 だが、ただそれだけが彼を動かしたのではない。実は、彼の親は居ないのだ。
 村長が言うには、偶然森と丘で飛竜に襲われている所を助け育てた。と、村長に教えられた。
 それが真実でも、そうでなくとも、彼は、一番の近くでその『伝説』を見て生きてきた。
 だから、ハンターと言う生業に憧れ、ほだされ夢見たのだ。
 そんなこんなで家を出た少年は、一目散に村長の家に駆けてった。
 「村長!!今日は約束の日だぜ!!」
 大声で呼ぶ。
 「ええぃ、五月蝿い、ちゃんと聞こえ取るわい。」
 そう言って、奥のほうから小さい人(?)が現れた。
 どうやら、この老人が村長らしい。
 「なぁ、今日から俺も、ハンターなんだよな?」
 「そうじゃのぅ、…実は余り薦めたくは無いのじゃが…」
  村長は少し心配そうな顔をしている。
 「何言ってんだよ!!俺が十五歳になったら好きな武器でハンターにさせてやる、って言ったじゃねーか!!」
 少年は、いやいやとその場で飛び跳ねる。
 その揺れてなびく赤髪は、ハンターへの闘志をかもし出す様だった。
 「やれやれ…仕方がないのぉ。で、どれにするんじゃ?」
 「俺は…これにする!!」
 そう言って、背中から取り出したのは、身の丈もある大きな剣だった。
 「ほぅ、アイアンソードか。オヌシによぅ振れるのかのぉ?」
 村長が、意地悪っぽく言う。
 「村長、俺をなめるなよっ。てぇい!!」
 そう言って、少年は身の丈もある大剣を、ブン、ブンと両手で大きく振って見せた。
 さすがに村長も慌てたのか、「もういい。」と、言って、祝いのお金と、レザーライトという、ケルビの皮を繋いで作られた初心者ハンター必携の防具一式をくれた。少年はそれを器用に着こなし、大剣を背中に収めた。
 「お前も、今日から本格的ハンターじゃ、今日は生肉の入手でも…」
 「そんな事、大分前からやってきてるじゃねーかよ!!俺は飛竜の中の飛竜、『リオレウス』並のを狩りたいんだよ!!」
 大きく拳を振り上げた威勢のわりに、レザーライトシリーズとアイアンソードを携えた少年の姿は何だか可笑しいと言うか…無謀だ。
 「ええぃ!!全く、これだから若いのは…クドクド」
 また村長の長話が出たな、と思いつつ、ハンターとしての初陣を成功させるために、小年は、村のあちこちを回った。
 「あら?あなたも遂にハンターになったのね?私の兄はもう狩りで他の町に出て行ったけど、あなたはここに残って欲しいわ。」
 よく見ると、隣に住んでいるハンターの妹さんだった。
 彼女の兄は、自分より少し早くハンターになって狩りを続けている。最近、『ドスランポス』という、中型の肉食獣を倒したと知らせが入って、もうすぐしたら村に帰ってくるとの知らせがあった。
 彼女の兄とは、幼少の頃からの仲良しで、一緒にハンターになって、大きい飛竜を狩ろう。と、約束したのだ。
そんな、彼女の話題に付き合いつつも、アイテムの買出しを思い出し、また歩き出した。
 すれ違う人に、「よう。」とか「がんばれ。」とか励まされつつ、村の南のほうにある露天に着いた。
 「あら?リュウちゃん。その格好。おめでとう!ハンターになったのね!それじゃあ、お祝いにこれ、あげる。」
 そう言って傷の止血や、消毒に使える『薬草』という品をくれた。
 それをありがたく受け取って、その場を去ろうとした瞬間だった。
 「おい、知ってるか?最近『森と丘』でランポスの親玉が縄張りを作ったらしいぞ。」
 声は、露天の外からだった。
 それを聞くや、少年は、店から飛び出し、外で、話をしていた中年の男と女の間に割って入った。
 「それ、詳しく聞かせてくれ。」
 「ん?何だ竜神か、お前もハンターになったのか?いいぜ、教えてやろう。」
 そう言うと男は少年、竜神という名の男に話しはじめた。
お前が拾われた場所、森と丘はな、最近からランポスが増えて草食竜の数が減っていたんだ。これじゃあいかんと、村のハンターが総出で、ランポス討伐に行ったのは知ってるな?」
 あぁ、と、頷くと男は更に話を続けた。
 「一時は数も落ち着いてこれで元通り。と思ったんだが…」
 男は一瞬、息を止めた。
 「報復さ、生き残りのランポスが、ハンターたちに仕返しの為に別の縄張りから呼んだんだ。」
 「『ドスランポス』を?」
 竜神が聞く。
 「もう、いい所を横取りすんなよな。」
 男が冗談交じりで突っ込む。
 「と、とにかく、噂かもしれんがそういうことだ。一応、確率が高い所がここ。」
 そう言って、男は腰から『森と丘』のマップを取り出して指差した。『3』と書かれている。
 「今の昼間じゃ、ランポスたちもここに居る筈だ。」
 「あとは、ここかな?」
 竜神もマップを指差す。『10』と書かれている。
 「おぉ、よく分かったな。確かにそこにいる、って証言もあったみたいだな。」
 男は軽く驚く。
 「まぁ、もしかしたらだが…行かないよりマシだろう。」
 「サンキュー、恩にきるよ。」
 そう言って、一目散に自宅へ帰る。
 「えーっと、ドスランポス、ドスランポスっと、…あった!!」
 竜神は、自宅のモンスターリストでドスランポスを調べていた。
 「ん?なになに…集団行動をするランポスのリーダー。少し大柄で大きなトサカが特徴。テリトリーを見回って移動している。」
…この程度?これはいける!勝てそうだ!そう思った竜神は、一目散に家を出て、村長の家に駆けていった。
 「なぁ、ドスランポス討伐。俺にさせてくれないかな?」
 すると、村長が驚いた顔で言った。 
 「何言っとるんじゃい!!お前にはまだ早いわい。」
 村長に怒鳴られて、むっ、とする怒りを抑えながら。言い返した。
 「一人の野良仕事の時に、ランポスに襲われても倒したんだ!俺なら行けるよ!もちろん、ちゃんとアイテムも持って行くし!だからさ、頼むよ…」
 あまりの熱心さに、意表を突かれたのか、ふぅ、と、ため息を漏らし
 「…ふぅむ、仕方が無いのぉ。ただし、危なくなったらすぐ引き返すんじゃぞ!それと、これは餞別じゃ、受けとれぃ。」
 そう言って、村長は『アオキノコ』と『閃光玉』と渡した。
 「ありがとう!なぁ、でもアオキノコは、一体何に使うんだ?」
 「ぶぁかもん!!それぐらい自分で考えろぃ!!」
 と怒鳴りつけられた。
 アイテム、防具、武器と万全の準備をして、村の人達に見送られつつ、村を出た。

馬車に揺られ、辿り着いた場所は、険しい崖の中に作られた、ベースキャンプという土地だった。
 ここは狭いので、飛竜はおろか、小型のモンスターすらも入れない仕組みになっている。
 近くにある青い箱『支給品ボックス』を開け、中身を確認する。
 幸い、応急薬があったので、貰っておく。地図を確認する。まずは3番に行くことにした。
 巨大な滝、流れる水。広大な中に広がる自然。その中の自分。これからの狩りを見守っているようだった。 
 「おーい!!俺は絶対、伝説になるぞー!!!」
 つい、叫んでしまったが、あまりの広さに、その声も、滝の中に吸い込まれていくようだった。
 「よし!いくか!!」
 無駄な殺生はいけないと草を食うアプトノスを無視し、まっすぐ進む。
 そして、ようやく3番に着いた。いない。いるのはアプトノスばかりだった。
 気を落とさずに10番に行く。やはりいない。
 「…やっぱり無駄足か。」
 そう思って、立ち去ろうとした、その時だった。
硬直。視線を感じる。何か大きな… 直後に『グワァークワァー』と鳴き声がして、硬直は解けた。急いで振り返ると、やはりいた。
 青い体に鋭い目。そして大きなトサカと爪。しかも一体だけではない。部下も何体かいた。
 震える。恐怖ではない。強力な、大きい獲物を狙う時の緊張感。武者震いだ。
 湧き上がる闘志に体中が唸りを上げていた。これが…これが狩り!!
 「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」
 背中の大剣を取り出し、一直線にドスランポスに挑んでいく。
 まずは、縦切り、決まった。厚い肉厚を切り裂く音が聞こえる。
 ドスランポスも、自身の血を見て怒りを露にする。
 なぎ払い、切り上げと決まり、ドスランポスは大きく体を仰け反らせる。
 よし!これで、止めだ!!その瞬間だった。
 迂闊だった。部下のランポスのジャンプ攻撃で、大きく吹き飛ばされてしまったのである。
 「くっ!!痛ってぇ…。」
 防具が守ってくれた、だが敵もランポスだ、胴の防具は爪あとに沿ってへこみ、傷口からは、血が溢れ出した。
 一つ幸いだったのは、ドスランポスが逃げてくれたこと、敵も相当な深手のようである。
 村で貰った薬草を潰して傷口に塗る。痛い。それも相当な痛さ。
 「ふう、これがイーオスじゃなくて良かったぜ。」
 と、自身に安心を与えるために、冗談交じりに言う。
 イーオスというのは、火山地帯でよく発見される、ランポスの亜種だ。
 真っ赤な体に、毒を溜め込み、吐き出して攻撃する。
 毒は猛毒で、『解毒薬』が無いと、致命傷になりかねない、中級ハンターでも、倒すのには相当な技量がいる。そう資料に載っていた。
 傷口を応急処置した後は、改めて、ドスランポス討伐に行く。
 「あの、ランポスが厄介だな。何とかドスランポスと一対一に出来ないか…!?閃光玉は?いけるかな?よし!!やってみよう!!」













By Mind of Hunting