ドーン伝記第五話〜伝説の彼方へ〜
ライテスト様、ぽんち様、自由なクモ様、Masaki様作








ここは灼熱の砂漠。
普段は優しく暖かく私達を照らしてくれる太陽も、ここでは凶器と変わる。
ジリジリと突き刺さる光が全ての生物の体力を削っていくのだ。

「…来る!」
「きゃぁ!?」
ドーンに突然突き飛ばされるシリア。
彼女がつい先程まで居たその真下から飛び出す巨大な2本の角を持つ飛竜。
ディアブロス。
砂漠に好んで生息しその巨大な体躯に2本の角は脅威的である。
地面の砂をかき分けて地中に潜り、足下から突然襲いかかって来る。
性格は非常に攻撃的で、特に人間から攻撃を受けると猛烈な怒気を発する事が多いという。

彼女はドーンに突き飛ばされなければディアブロスの巨大な双角に貫かれていただろう。
「あはは!遅いよ!」
ゴク…と唾を飲み込みその場から動く事も忘れ、ドーンの動きに見とれてしまうシリア。
彼女の目には、ディアブロスと戯れているドーンのその姿が現実の出来事にはとても見えなかった。
それ程華麗に、ドーンの姿がまるで踊りを舞っているかの様に見えたのだ。
あえて例えれば凶暴な飛竜を自在に操るサーカスの猛獣使いの様にも思えた。

「おいシリア!なにやってんだ!死ぬぞ!」
「!」
相棒のハンマー使い、コッズの言葉に慌てて立ち上がり、彼女は愛銃バストンメイジを構える。
…が、ディアブロスの姿は彼女の視線の先には既に無かった。
彼女がきょろきょろと周りを窺っていると、ドーンが何もない砂漠の一箇所に向かって走り出していた。
と、ドーンのそのすぐ目の前に飛び出すディアブロス。
「し…信じられない…」
思わず声に出してしまうシリア。
だが、それと同時に自分の情けなさにその場にへたり込んでしまいそうになる。
『次元が違いすぎる…私なんかが役に立てるわけないよ…』
「シリアァー――!」
「避けろぉ!」
コッズと普段は無口なランサー、バシシがありったけの大声で叫ぶ。

「!?」
間一髪、角の直撃は免れたものの、
突進するディアブロスの巨大な鉄骨の様な足に蹴飛ばされ、吹っ飛ぶシリア。

「逃げ…た?。…ふぅ…」

「おいシリア!しかっりしろ!シリア!」
ドーンの視線の先には気を失ったシリアと彼女に必死に声を掛けるコッズ、
その側で槍を支えにしながら無言で心配そうに様子を見ているバシシの姿があった。

数時間前〜街外れ〜

遠くに火の手があがっている街を見下ろす丘の上。
周りを山に囲まれた荒地にしばし立ち尽くす若者4人の姿があった。

バーダが足元に落ちている小さな石ころを拾うと、右手の手の平でポ〜ンポ〜ンと
弾きながら口火をきった。

「あいつ・・・とんでもねぇ女だぜ!」

そう一言呟くと手に持った石ころを、火の手のあがる街の方へと投げ捨てた。
石ころは、闇の中へと吸い込まれるように消えていく。

「今のドーンの片手剣に太刀打ちできる人間がいるとはな・・・それも女だぜ!」

石ころの行方を目で追っていたカロンが、あきれたように呟く。

 小さい頃からおてんばで勝気だったドーンは、ミナガルデの街でもその名を知らない
者はいないくらいだった。
そして現在、ドーンの名は天才的女片手剣使いとして、国中にその名を響かせる程となっていた。
知る者の中には「あの父アルフレッドをも上回るのではないか?」とまで言われるように
なっていたのである。

「そうだよね・・・どうする?ナインブレイカーの言ってたことが本当だとすれば、
はやく手をうたないと、大変なことになるよ・・・。」

岩に腰掛けたノアが、ドーンの顔を下から覗き込むようにして言った。
バーダとカロンも腕組みをしたまま「う〜ん」と唸りながらドーンの方へと顔を向ける
ドーンは、髪の毛を両手でかきあげると星空を見上げた。
そこには、数え切れないほどの星達がドーン達を見下ろしている。

「明朝に攻めてくると言うのは、でまかせかもしれないがナインブレイカーとの
戦闘はまず避けられない・・・。しかし、なぜ奴らは戦争など起こす必要があるんだ」

ドーンは星空を見上げ、そう言うと心の中で呟いた。
「人間同士で殺しあうなんて、馬鹿げている・・・」

「わぁ〜!綺麗なお星様達!!まあ、みんな・・・とにかくひとまず街に帰ってこれから
のことを考えましょうよ!どっこいしょっとw」

ノアはそう言うと、持ち前の笑顔でドーン達に微笑むと岩から腰をあげポンポンと
かわいいお尻を振るった。

「そうだな!いつまでもここにいたって、しょうがねぇもんな!ガハハッ!」
バーダが大声で笑い飛ばした。

「ああ、とにかく街に戻ろう」

そう言って4人が荒地をあとにしようとした時だった。

「はんっ!あんな戦いかたじゃ、ジャスティーンには勝てねぇぜ。」

広い荒地の片隅にある壊れかけた石碑の方から、突然声がしたのだった。

「だれだっ!?」

ドーン達はいっせいに振り返ると、バーダとカロンが同時に叫んだ。
そして、ドーン達は声のした石碑がある暗闇の方へと目をこらした。

「出てきなさいよっ!」

しばらくすると、ノアの甲高い声に応えるように声の主はゆっくりと石碑の裏側の暗闇から姿を現わした。
銀色をした髪の毛を月明かりに怪しく輝かせながら、不敵な笑みを浮かべている。
背中には、見たこともないような細長い剣を背負っていた。

「なんだ!?てめぇは!?」

バーダが警戒しながらも、1〜2歩近ずくと威圧感たっぷりに問い掛けた。

「俺は、ロザリオってもんだ。ジャスティーンとの戦闘見せてもらったぜ。
とてもじゃないが、おめぇ達じゃ話にならねぇな!」

そう言いながらロザリオという男は、ニヤニヤしながらドーンを見つめている。

「なんだと!?この野朗っ!」

同時にそう言うとロザリオの胸倉を掴んだのは、カロンだった。

「まぁ、待ちな!俺は本当のことを言ってるまでだ。
いいか、てめぇら、この国で奴に勝てるのはふたりだけだ。ひとりはこの俺!
もうひとりは、青い疾風と呼ばれている男だ。どうだ?俺と手を組まねえか?」

ロザリオのその言葉にドーン達は同時に声をあげた。

              「あ、青い疾風!?」


「サ、サマート!?あなた、サマートを知ってるのっ!」

そう言いながら、4人の中から飛び出したのは言うまでもなくノアだった。
ロザリオは、いきなり飛び出してきた少女に少しびっくりしたようだったが
すぐまた元のにやけ顔に戻ると、ノアを見ていた目を4人へと移した。

「ほぅ、さすがに奴の噂は、知ってるようだな。そうか・・・
奴の名前は、サマートってのか!?ふんっ、スカした名前だぜ!」

「なによっ!あんた!!知ってるもなにも、わたし達はねえっ・・・」

その言葉に怒ったように、ロザリオへ迫るノア。

「やめろ、ノア!今わたし達は、こんな奴の相手をしてるヒマはないんだ!」

バーダとカロンの間にいたドーンが、そう言い放つと一歩踏み出しロザリオに鋭い視線を向けた。
そして、そのドーンを守るように一歩踏み出すバーダとカロン。

「ロザリオさん、あなたの目的が何かは知らないが、今は個人の争いをしてる時じゃ
ないんだ。それに悪いが、あなたと手を組む気はない。さあ!みんな行こう。」

聞いているのか、聞いていないのかわからないようにニヤニヤしているロザリオに
ドーンはそこまで言うと、他の3人に目で合図をかわし、ロザリオに背を向けると
さっさと街へ続く坂道へと歩きだした。

「ガハハ、ま、そう言うこった!あばよ、ロザリオのだんな!」

バーダもそう言いながら、ロザリオの肩をドンっと叩くとドーンの後に続いて街へと歩き出した。

「スカした名前ってのは、取り消してよねっ!!ふんっ!」
「あはは、じゃあまたな!」

プンプンのノア、それを見て笑うカロンもドーンに続いて街への坂道へと歩き出した。

その様子を銀髪を怪しく光らせ、ニヤニヤしながら見ている謎の男ロザリオ。

青い疾風サマートと面識があり、漆黒の女ハンターのことをジャスティーンと呼ぶこの男に
どんな秘密が隠されているのだろうか。はたしてドーン達の味方なのか?それとも
敵となる存在なのか?
無意識の内にそんなことがドーンの頭の中を横切る。

そして、街への坂道を下りかけたドーン達を追いかけるようにロザリオがゆっくりと歩きだしたちょうどその時だった。
坂道を下りていくドーン達の目に暗闇の中を駆け上がってくる
ひとつの人影が飛び込んできたのだった。

 街への入り口は東西南北の4ヶ所にあり、それぞれが堅固なゲートで護られている。
今、ドーン達がいるゲートは街の西に位置しており、山へとのびる緩やな坂道が街の
外へとのびていた。
その、きり通しともいえる山道の頂の部分にあるゲートが、ナインブレイカー達によって
破られてしまっていたのだった。
ナインブレイカーが西の坂道へと去ったあと、ドーン、ノア、カロン、バーダ、
そして謎の男ロザリオの5人は、街へと続く山に挟まれた細い坂道を街のほうへと下りはじめていた。

「ん?おい!ドーン。誰かがこっちへ向かってくるぜ。」

バーダが人影の方を指差し、ドーンへと顔を向けると

「うん。」と頷き足を止めるドーン。
カロン、ノア、ロザリオも足を止め、前方の暗闇へと目をこらした。
やがてボンヤリとだが、坂道を駆け上がってくる人影がドーン達の知った人物であること
がわかった。

「お〜〜い!ドーンッ!!ド〜〜〜〜ンッ!!」

ドーン達の耳に聞き慣れた声が暗闇にコダマした。
その人影は手を振り、大声で叫びながらドーン達に近づいてきた。
そしてその人影の正体を一番に気づいたドーンが不思議そうにつぶやいたのだった。

「モ、モスライス・・・?」
「なんだぁ〜!?ありゃモスライス野朗じゃねェか!!」

カロンも上体を前へと突き出すと、暗闇にもかかわらず右手で日除けをつくり不思議そうにモスライスの男を眺めていた。
その時だった、ドーン達の背後から聞こえていたコインを指で弾く「チーン、チーン」という音が止まったかと思うと、それと同時にロザリオのため息に近いような声がした。

「ちっ!あいつかよ・・・。」

そして、その声に振り返ったのはノアだった。

「あらっ?あなた、まだいたの!?あなたの行く方向は・・・あっちっ!」

そう言うとノアは左手を腰にあて、右手の人差し指をロザリオのしかめっ面に触れるほ近づけ、そのカワイイ指先を反対側の山道へと向けた。
そして、ちょうどその頃にはモスライスの男はドーン達のすぐそこまでたどり着いていた
のだった。

               ザッ、ザッ、ザッ!


やがてモスライスの男は、ドーン達の目の前までたどり着くと両手を膝にあて、肩で息を
しながら呼吸が整うの待った。

「はぁ、はぁ、はぁっ〜〜!」

「おい!モスライス、大丈夫か!?」

ドーン達が心配そうに見守る中、呼吸の整ったモスライスの男がドーンへと顔をあげると同時に声を出した!

「ド、ドーン!すぐギルドマスターの所へ行ってくれっ!」













By Mind of Hunting