竜騎六番隊
カルパッチョ様作





一章【前編】 一章【中篇】

カルパッチョ

第一章【前編】

その昔、ハンターはいなかった。
その昔、人は現在より遥かに強力だった。
その昔、人はその技術で暮らしは豊かだった。
が、今も昔も変わらない。即ち、
「狩るか、狩られるか。」

竜大戦。
いつ始まったかわからない。なぜ始まったかわからない。
しかし俺にはそんなことはどうでもいい。
毎日のようにあの憎い憎い竜を殺せるのだから。
毎朝起きるといつもそんな風に思う。
起床を伝える鐘の音で俺は目覚めた。ベッドから上半身を上げ,
右隣のベッドに目を向ける。
同室のアルノはもう起きているようだ。
「あいついつも何時に寝て何時に起きているんだ…?」
ユーラは独り言を言うと、しばらくボーっとし、ベッドから腰上げると、
タンスの中にある服を適当に引っつかみ、薄手のシャツに頭を突っ込んだ。
着替えが終わると部屋から出、食堂へ向かった。
するといつもの様に食堂へ通じる階段のすぐ側のドアからニーナが飛び出 してくる。
「ん…あぁ…なんだ…納豆かぁ…。」
ニーナはそう言うとその場に崩れた。
どうやらまた寝てしまったようだ。意味不明な発言をしてからその場に寝
込む。時々そんなことが起きるが、本人は「気付いたら廊下で寝てた。」
と言う。
放っておくのもなんだと思ったが、俺は寝ているニーナを面倒くさいので
無視し、そのまま食堂への階段を下りた。
階段を下りると、香ばしい匂いが漂ってくる。どうやら今朝はパンのよう
だ。どこに座ろうかと辺りを見回ていると、親しみやすそうな感じの声が
ユーラを呼んだ。
「おーいユーラ!こっちに来いよ!」
ユーラは一瞬戸惑い辺りを見回す。すると大柄の男がこちらに手を振って
いる。へクターだ。ユーラは食堂のおばちゃんからモーニングセットを受
け取ると、ヘクターのいる席へと向かった。
「ん?ニーナは一緒じゃないのか?」
パンを食べながらヘクターが言う。
「さっきあったが今も多分廊下で寝てる。」
座りながらユーラは軽く答える。
「廊下ってお前…。いつも放って置くなよ…。」
あきれながらヘクターは言った。
「面倒くさいし、あいつなら放って置いても平気だろ。」
パンをほうばりながらユーラが答える。
「しょうがない、ちょっとニーナを連れて来る。」
面倒見のいいへクターはユーラがいつも面倒くさがって連れて来ないニー
ナを連れて来る役だ。
「あ、そうそう、飯食い終わったら総隊長が司令室に来いって言ってたぞ。
たぶん指令かなんかだろう。」
ヘクターはそう言い残し、ニーナが寝ている廊下へと向かった。
「あぁ、わかった。」
ユーラはそう答えると、目玉焼きをほおばった。
3分ほど経ち、朝ごはんも残り少なくなったところでヘクターがニーナを
おぶって帰ってきた。ニーナは起きている様だが、かなり眠たそうだ。
「あぁ…ユーラおはよう…。」
そう言いながらユーラが持っているパンを引ったくり、そのまま口に運ぶ。
「おい。人の勝手にとるな。」
そういいながらユーラはニーナに地獄突きを喰らわす。
「…カッハァ!!」
かなり効いたようでニーナは悶絶している。
「さてと、じゃあ司令室いってくる。」
立ちながらユーラが言う。
「…あぁ、わかった。」
ニーナを心配しながらヘクターが答える。
すると地獄突きで目が覚めたらしいニーナが、
「ユーラ…覚えときなさいよ…。」
と、ユーラの背中にぼそりと言った。ユーラは聞こえていない振りをし、急 いで食堂を出た。
ユーラは、ニーナが最後に言った事を思い出さないようにしながら指令室に 向かった。
最近体の調子がいいせいか、いつもより早く司令室の前に来れた。
(総隊長か…俺あの人苦手なんだよな…。)
総隊長は、竜騎兵の中でも圧倒的強さを持ち、かつてたった一人で最強の竜、
エメクレスを討伐したと言う。性別は男で、若く見えるが時折ヘクターと同
じくらいに見える、といった感じだ。
「失礼します…。」
ユーラがドアを開ける。
「今日は早かったね。いつもは後30分後にくるのに。」
総隊長が言う。
「あ、はい、まぁ…。」
ユーラが弱気な返事をする。
「まぁそんなことは良いとして。」
「今回の指令は龍殺しの実が少なくなってきたので採集隊を行かせることに
したんだが、そこの火山は竜が多くてね。従って今回の指令は採集隊の護衛、
及び龍殺しの実の捜索手伝いだ。なにか質問は?」
「あ、はい、ないです。」
「出発は明日の明朝。採集隊はお前らの竜に乗せるから鞍を忘れずに。以上 だ。」
「ふぅ…。」
ドアを閉めながらユーラはため息を吐いた。
(やっぱ総隊長はなんか苦手だな…。)
そう思いながらユーラは食堂に着き、待っていたヘクターに指令の内容を言った。
「よしわかった。ほかの二人には俺が伝えておくよ。ニーナは今復讐の算段を
立てている頃と思うしな。」
「お、おぉ、ありがとな。」
ユーラはニーナが言った言葉を思い出した。前は飲み水にニーナが開発した新 薬を飲まされ、
3日間不眠症に落ちいったが、最近ニーナは部屋にこもってい るので多分また薬だろう。
さすがに明日は仕事なのでニーナの復讐はなく、今日は何事もなく一日が終わ った。
「明日も早いし、もう寝るか…。」
ユーラは布団の中で考えた。
(待てよ、たしか龍殺しの実がある山っていろんな草が生えてるって聞いた事が…)
(まさかニーナは、さらに強力なものを…?)
考えれば考えるほど辻褄が今日ニーナが復讐をしてこなかったことに辻褄が合い、
結局ユーラはあまりに眠れなかった・・・。


【第一章中篇】

「…ユーラ起きろ…。」
ユーラの体を揺さぶりながら、何者かが声を掛ける。
「いやだ!俺は断じて薬は飲まんぞ!それに地獄付きくらいで…!」
必死にユーラは口を開けない様に歯を食いしばる。
「…違う…指令だ…。」
恐る恐る目を開けると、そこにいるのはニーナではなく、アルノだった。
「なんだアルノか…脅かしやがって…。」
ユーラはそういい終わると、心底安心したようで、ため息を吐いた。
「ふぅ…。で、アルノ、今何時だ?」
「…4時…50分だ…。」
相変わらずぼそりとアルノが言う。
「うぉ!もうそんな時間か!」
昨日ニーナの復讐のことばかり考えていたので、あまり眠れなく、寝坊をして
しまった。
大急ぎでユーラは鎧を着、父の形見のハルバート(MHのハルバートと別物)
を担ぎ、司令室へと向かった。
走った甲斐があってか、なんとか時間ぎりぎりに司令室へついた。
ドア開けると、既にヘクターとニーナ、それと採集隊が居た。
ニーナはユーラが来た事に気づくと、ニヤリと笑った。
ユーラがなるべくニーナに目を合わせないように席に着くと、丁度総隊
長が出てきた。
「作戦は昨日話した通り。6番隊は採集隊の護衛と、龍殺しの実の捜索手伝い、
採集隊は龍殺しの実を持てるだけ持ってくる。以上だ。準備が整い次第出発。」
一向は竜舎(竜を休ませている所)に行き、採集隊の隊員が誰のミルヴィスト
に乗るかを決めた。
全員がミルヴィストに乗ったことを確認すると、ユーラは出発の合図をした。
「目標は火山!全員出発!」
合図と同時に皆飛び出し、遥か上空へと飛んで行った。
「あ…今日はよろしくお願いします。名前はケビンって言います。」
後ろに乗っている気の弱そうな男が言う。
「ん?ああ、よろしく。」
ユーラがさっと答える。
1時間ほど飛行し、火山のふもと辺りに来たとき、不意にヘクターが叫んだ。
「前方にベクトレウス発見!数は10匹くらいだ!ユーラ!どうする!?」
ユーラは前方に目を向けると、表情を変え、
「当然皆殺しだ!だがその前に採集隊を安全なとこに降ろすぞ!」
猛スピードで地面に急降下し、採集隊を下ろす。
「アルノ!お前は採集隊を守ってろ!」
ケビンを降ろし、飛び際にアルノに言う。
「…了解…。」
アルノは一対の剣を両手に構え、警戒態勢をとる。
ベクトレウス達もこちらの存在に気づいたようで、こちらに近づいてくる。
ユーラはハルバートを構え、柄のスイッチを押す。
ノコギリ状の刃が高速に回転し、チェーンソーのような音を立てる。
ヘクターは腰の二本の大剣を構え、攻撃態勢をとる。
ニーナは背中に背負っている大銃を構える。
「俺が最初に行く!ヘクターは俺が突っ込んだら突撃!ニーナはヘクターの援護!」
言い終わるや否や、ユーラはミルヴィストの手綱を引き、竜の群れへ突撃する。
群れのベクトレウスが一体、ユーラに向かって突撃してくる。
ミルヴィストは体を斜めにしベクトレウスの体当たりを避け擦違う刹那、ユーラ
は渾身の力でハルバートを振り下ろし、ベクトレウスの首を叩き落とす。
首の無いベクトレウスは、首から血を撒き散らしながら地上へ落ちて行く。
ヘクターはユーラに続き、敵の群れへ突っ込む。ヘクターは敵の攻撃を避けなが
ら擦違い座間に切り付けて行く。ニーナはヘクターの死角に攻撃しようとする
ベクトレウスを打ち抜く。
ユーラはベクトレウスの首を叩き落すと、標的を前方にいる竜に変え、
ハルバートの射程内に捉えようと突っ込む。
ベクトレウスは深く息を吸いユーラめがけて炎のブレスを吐く。
ユーラは瞬時にミルヴィストの手綱を引き回避する。ベクトレウスは炎は無駄と
悟ったのか、身構えて接近戦に備える。
ユーラがすぐ近くまでに来ると、ベクトレウスは鋭利な足の爪を前に突き出し、
ミルヴィストに掴み掛かろうとする。
―が、ベクトレウスがミルヴィストの足を掴んだ瞬間、ユーラはミルヴィストの
頭の上に乗り、足元にあるベクトレウスの頭を叩き割る。割れた頭部から鮮血が
吹き出し、もはや命の無い足は力なくミルヴィスト足から離れ地面へ落ちていく。
返り血を浴びたユーラはニヤリと笑うと、右側で呆然としているベクトレウスを
睨み付ける。勝ち目が無いと悟ったベクトレウスは翼を折り畳み地上へいるアルノ
達の方へ急降下する。
「アルノ!一匹そっち行ったぞ!」
ユーラは60mほど下のアルノ達にそう叫ぶと、右前方のベクトレウスに向かって突撃した。
ベクトレウスがこちらに来ることを確認したアルノは、双剣を構え、ベクトレウス
を待ち受ける。戦闘能力の無い採集隊は近くの岩に隠れ震えている。
ベクトレウスが地上へ降り立ち、アルノへ向かって咆哮し、突進をしてくる。
ベクトレウスとアルノが接触する瞬間、アルノは一方の剣でベクトレウスの顔を突
き刺し、もう一方の剣で首を突き刺し、剣を支えにしてベクトレウスの首の上に軽
やかに飛び乗る。そして間髪いれずにベクトレウスの首にある急所を突き刺す。ベ
クトレウスは声にならない断末魔を上げると、走りは徐々にゆっくりになりやがて倒れこんだ。
ヘクターがベクトレウスの群れを発見してから3分ほど立っただろうか、
12匹いたベクトレウスのは全て死に、戦闘を行っていた上空の地上は血に染まっていた。
ユーラは辺りにもうベクトレウスがいないことを確認すると、ニーナ、ヘクターに
地面へ降りるよう指示し、地上にいるアルノと採集隊と合流した。
「よし、じゃあ引き続き目的地の火山を目指す。行くぞ!」
5体のミルヴィストは一斉に飛び上がり、前方にある火山へと飛び立った。















By Mind of Hunting