Monster Hunter Generation
ジャンピン・ジョニー様作





On the ground of the yearning
Bar of midafternoon
In a huge maze
From the place of departure point
Hunting beginning
Hunting beginning 2 [Enigmatic behavior]
The truth in the other side of smoke
A bolt out of the blue
It's been one disaster after another
In the labyrinth like the jungle
The quiet before the storm
The quiet before the storm 2 [Approaching downpour]
The queen awoke
Darkness which begins to move
Truth which begins to move
Topsy-Turvy 1 [Light of the ground]
Topsy-Turvy 2 [Shadow of the sky]
Topsy-Turvy 3 [Wave of the wind]
Difference of view
The One
Swinging reliance
Crazy blue eye
Mutual understanding
For the town
Star shooter
Star shooting
Star shooting 2 [Turning point]
Star shooting 3 [When blooming]
Star shooting 4 [Star and mud]



   Quest.1 On the ground of the yearning


自然が創り上げた壮大な景色の中に人が造り上げた建造物が立ち並ぶ

     そこは巨大都市ケリーウッド

数多のハンターが目指し、集う、ハンター憧れの地
岩肌に並びそそり立つ、その街の巨大な門の前に一人の女ハンターが辿り着く
「ここか・・・やっと来れたよ、ケリーウッドに・・・」


     時は狩人時代

角笛と咆哮が警鐘として鳴り響く頃 
狩人は生きる為に剣を振り、生き残る為に銃の煙の中に立つ
怪物は生き残る為に大空を羽ばたき、生きる為に牙を剥く
怪物を狩る者 後に人はモンスターハンターと呼び、語り継いでいく
そんなモンスターハンター達が歩んだ時代の物語


商人やハンター達で賑わう街を疲れた足を止めることなく歩く女ハンター
「やっぱり凄い!こんなに人が多いなんて」
どこを見ても溢れかえる人々に心は弾み、
見たこともない武器や防具を纏うハンターを見ては胸を躍らせた
そんな時、街を彩るありとあらゆる店の看板を見て気付いた
「一つの街にこんなに多くのギルドがあるんだ・・・」
初めて見るものばかりで疲れを忘れて辺りを見回す
「おい、嬢ちゃん」
周りのざわめきを貫いて男の声が耳に入る
振り返るが、人が多く声の主が掴めない
「おい、嬢ちゃん、ここだよ、ここ」
声のする方を見ると、店に並べられた樽にもたれて座り込む男がいた
「え?わ、私のこと・・・ですか?」
「そうだよ、他に誰がいるんだ?ハハハ」
女ハンターの問いに笑って答える男
「嬢ちゃん、ここには今日来たのかい?」
「え、えぇ、そうですけど・・・」
男は再び笑いだし、息を調え喋りだす
「やっぱりな、いや、誰が見てもわかるぜ あれだけキョロキョロしてりゃあよ〜、ムハハハ!」
三度笑いだす男に少々苛立つ女ハンター
「あなた誰なんですか?初対面の人間に向かって失礼だと思います!」
「スマンスマン、そう怒るなよ それよりよ、俺がこの街を案内してやるよ、どうだ?」
女ハンターは少し考え答える
「案内料なんか持ち合わせてません!」
「おいおい、誰もそんな阿漕なことしねぇよ こっちは親切で言ってやってんだぜ?」
男のその言葉に女ハンターは悩んだ
右も左もわからない街で路頭に迷っても、結局街の人間に頼らなければならない
「わからないことがあれば聞きな、なんだって教えてやるよ」
男のその言葉に思わず声が出た
「あ、あの、どうして一つの街にこんなに多くのギルドがあるんですか?」
それを聞くと、男は立ち上がって答える
「確かに、これだけの数のギルドがあるのもこのケリーウッドだけかもな
 この街には、ある種の依頼を専門で受けたりしているギルドがいくつかあるんだ」
「専門・・ですか?」
男は疑問を抱く女ハンターを尻目に話しを続ける
「例えばレウス専門で依頼を受けているギルド とかまぁ、そんな感じで色々とあるんだ
 レウス専門のギルドに行きゃあ他のギルドでレウスのクエストを探す手間も無くなるってことよ」
「なるほど・・・」
男はさらに話しを続ける
「レウス専門にはレウス専門で食ってる奴らが集まる
 その辺のギルドに頼んで下手なハンターに失敗されるよりも、少々値は張るが依頼主にとっちゃ確実性があるってことなのよ」
「ふむふむ・・・」
納得する女ハンターに間髪入れずに男が言う
「嬢ちゃんにはまだ早いがな お、そうだ 嬢ちゃんにピッタシなギルドに連れてってやるよ」
男は人の波を押し分け歩き出した
「え・・あの、ちょっとぉ」
女ハンターは少し戸惑ったが、少し進んだ所で男が手招きしているのを見て渋々ついて行くことにした
人の波に揉まれ、四苦八苦しながら男について行く


「ちょと・・もう少しゆっくり歩いてくださいよ・・・」
「おいおい、そんなんじゃここでやっていけねぇぜ まぁ見ろよ、着いたぜ、ここだ」
膝に手をついた女ハンターは、そう言われて顔を上げた
「こ、この、大きな建物が一つのギルド・・なんですか?」
目の前には、今までの思考では思いもつかない大きなギルドが建っていた
「店の名前はメリパティ 凄腕のお抱えハンターもいる、この街じゃ1、2を争う大きなギルドさ」
女ハンターはギルドを目の前に唖然としている
「まぁ中に入ろうぜ このメリパティにはバーもあってハンター達の社交の場としても一役買ってるんだ」
そう言うと男はギルドの中に入っていく
男について中に入ると、そこは多くのハンター達で賑わっていた
その光景に女ハンターの口元が思わず緩む
その表情を見た男が椅子に腰掛けながらこう言う
「なんだ、ワクワクしてきたのか? そうだ、まだ名前を聞いてなかったな
 俺の名前はクリンスト、一応ハンターをやっている ヨロシクな」
「名前・・・そうだった、まだだったね」
女ハンターは、このケリーウッドに来た喜びを満面の笑みに変え、振り返り答えた


     「私はノア、こちらこそ宜しくお願いします!」


【Quest.2 Bar of midafternoon】


多くのハンター達で賑わう巨大ギルド、メリパティ
ノアは、そんなハンター達を見て目を輝かせていた
「そんなにハンターが珍しいのか?どんな田舎から出てきたんだよ」
クリンストは少々呆れてノアに言った
「だって見たことのない武器や防具ばかりなんだもの」
ノアは視線をクリンストに向けることなく答える
「あ〜、かもしれねぇなぁ この街にいるハンターの殆どが特注の武具を身に付けてるからな」
「特注?」
ノアは、やっとクリンストに視線を向ける
「あぁ、ハンターってのは各々独自の狩りのスタイルを持っている
 同じ種類の武器でも使う人間によって使い方も変わってくる まぁ、当然の事だがな」
ノアは体の向きも変え、真剣に耳を傾ける
「例えばだ、軽量化を図ってみたり、自分が使いやすいように重心をズラしてみたり
 見た目は同じでも中身は全く別物だったりする この街じゃ同じ武器が二つあるなんて事はねぇだろうよ」
「むぅ・・やっぱり、この街は凄い・・・」
ノアは、クリンストの説明に納得し、驚きを隠せずにいた
「じゃあ防具もそうなの?」
ハンターを見る以上に目を輝かせ質問する
「そうだ その防具に普通使わない素材なんかを掛け合わせたりして性能を向上させたり
 自分の好きなカラーに染めたり、武器以上に自分の色が出るところかもしれねぇな」
「じゃあさ、あのカウンターにいる女の人が装備してるピンクのバトル系も?」
クリンストは体の向きを変えず、ノアの指差す方向を見て答える
「あぁ、アレは恐らく怪鳥の甲殻以外に鱗も使って、より堅く仕上げている
 あの色は鱗とカブレライトを獄炎石で融合させているんじゃねぇかなと俺は思ってる」
クリンストの説明を余所に、ノアはその女ハンターを見つめる
「まぁ、あぁいう武具があるのも、注文通りに加工できる職人がこの街にいるからなんだがな」
「・・・・・」
聞く耳を持たないノアに再び呆れるクリンスト
「おい、聞いてるのか?」
その問いを無視して出たノアの言葉にクリンストは拍子の抜けた声を漏らしてしまう

     「カワイイ・・・」

「はぁ?」
「カワイイ〜!あのピンクのバトル、すっごいカワイイ〜!」
クリンストは呆れを通り越して力が抜ける
「あのなぁ、アイツはカワイイとか言ってやれるヤツじゃねぇぞ」
「え!?あの人知ってるの!?」
ノアは再び目を輝かせながら身を乗り出してクリンストの言葉に食いつく
クリンストは、そんなノアとは逆に神妙な面持ちで答える
「アイツの名はジェリコ 周りのハンターからはクックノックとも呼ばれている」
「クックノック・・・?」
「あぁ、クック狩りを主として食ってるハンターさ
 あのピンクのバトル装備は、アイツの生き方そのものを表してるんだろうよ」
「へぇ〜」
驚きも何もないノアの反応に、思わず表情も元に戻るクリンスト
「オマエ、本当に知らないのか?結構有名なヤツだぜ?」
「有名?私だってクックくらい一人で狩れますよ!」
そう言い切るノアにクリンストは少し小声になって言う

     「ノア、オマエはクックを3秒で仕留められるのか?」

その問いにノアは虚を突かれる
「さ、3秒・・・」
「そうだ、ヤツはハンマーとヘビィボウガンを匠に使い分けクックを秒殺する
 3秒で仕留めたって話も、この街じゃ知らねぇヤツはいねぇだろうよ」
クリンストの言葉と真剣な表情にノアは固唾を呑む
そして、釣られるように小声になって言う
「ハンマーとヘビィって・・・同時に二つ持って行くわけ・・・ないよね?」
クリンストは即答する
「同時にだ ハンマーとヘビィ、二つ持って狩りに出掛ける」
その答えにノアは一瞬声が出なかった
この街に集まるハンターの凄さを痛感させられた
そして、心に思ったことを声にして出してしまう
「私と同じ女なのに・・ハンマーとヘビィなんて、あんなキレイな人のどこにそんな力が・・・」
その言葉にクリンストは何かを思い出したかのような顔になった
「ノア、言い忘れてたが・・」
ノアは我に返って耳を傾ける


     「アイツは男だ」


【Quest.3 In a huge maze】


日が傾き街が橙色に染まる頃、未だに賑わう街路を一人歩くノア
「あんなキレイな人が男の人なんて・・・でも、クックを秒殺するなんて、ちょっと憧れちゃうなぁ」
そんな名を馳せるハンター達がこの街には沢山いる
そして自分はその街にいる、そんなハンター達を近くで感じられる場所にいる
そう考えるだけで、ノアは胸の高鳴りを抑えられずにいた
「それにしても、これはないよなぁ・・・」
ノアはアイテムポーチから一片の紙切れを取り出し、そう呟いた

     今から三十分程前・・・


「だからぁ、この街にゃ注文通りに加工できる技術をもった職人がいるんだって」
クリンストはビールを片手に話す
「さすがケリーウッド!やっぱり工房も巨大なの?」
ノアの質問にクリンストは即答する
「巨大も巨大!どの街の工房も、この街の工房には勝てないだろうよ!」
「やっぱりそうなんだぁ」
自分の事のように得意気になるクリンストは続けて言う
「工房の名はプロカッサ 中にいる職人も一流揃いさ」
「行きたい!そこへ連れて行ってください!」
ノアは思わず立ち上がってクリンストに言った
クリンストはビールを一口飲み、ゆっくり答える
「わりぃな、俺はここでちょっと飲ませてもらうわ」
「えぇ〜」
ガッカリするノアを見てクリンストは紙切れを取り出し何かを書きだす
「何を書いてるの?」
「地図だよ、地ぃ図っ!プロカッサまで行けるように地図書いてやってんの 俺って親切だねぇ」
「わぁ、ありがとうございます〜」
礼を言うノアに、地図を書き終えた紙切れを差し出すクリンスト
「ほれ、地図持たせたんだから迷ったりしてんじゃねぇぞ〜」
「もちろんですよ!ホントありが・・と・・・え・・?」
渡された地図を見て言葉を詰まらせる
紙には、お世辞にも上手いとは言えない地図が書かれていた
「あ、あの・・クリンストさん?これは一体なんなんでしょう・・・?」
「よぉ!この間の狩りはどうだったよ?オマエのことだから、また逃がしたんだろ?ムハハハ!」
ノアの問いを余所に他のハンターと談笑を始めるクリンスト
それを見てノアは、諦めてギルドを出た


「はぁ〜・・・」
ノアは思い出して溜め息をついてしまう
「あら、そんな溜め息なんかついちゃカワイイ顔が台無しよ?」
「えっ!?」
突然声を掛けられたノアは、驚きながら振り返る
「こんばんは」
ノアの目の前にはギルドにいたジェリコが立っていた
「あ!あ!あ、あの、こんばんはです!」
ノアは、さらに驚きながら挨拶に応えた
「どうしたの?こんな所で溜め息なんかしちゃって」
「あ、あの、いや、工房に行こうと思ってまして・・・でも、ちょっと迷ってしまいまして・・・」
どぎまぎしながら答えるノアにジェリコは言う
「工房ってプロカッサかしら?それなら、ここから全く正反対の所にあるわよ?」
「えっ!?そうなんですか!?はぁ・・・」
ジェリコの前で恥かしい思いをしたノアは、溜め息をつきながらクリンストの地図を握り潰した
「まぁた溜め息ついてるわよ あ、そうだ、ちょっと待って」
そう言うと、ジェリコはアイテムポーチから紙切れを取り出し何かを書き始める
「え?あ、あの・・・」
「うふふ、地図を書いてあげる まかせて」
初対面の自分に優しく接するジェリコにノアは感激する
全く同じことをしてくれたクリンストのことなど、もう頭の中には無かった
「あ、ありがとうございます!」
「いいのよ、気にしないで ・・・はい、これで迷うこともないわ」
ジェリコは地図を書いた紙切れをノアに差し出した
「じゃ、アタシは行かなくちゃならないところがあるから行くね またどこかで会いましょ」
そう言って立ち去ろうとするジェリコにノアは思わず声にする
「あ、あの!」
立ち止まるジェリコにノアは言葉を続ける
「そのバトル、カワイイですね!」
「ありがと じゃ、またね」
振り返りそう言うと、ジェリコは再び歩き出した
立ち去るジェリコを憧れの眼差しで見つめるノア
「カッコイイ〜!ジェリコさん、カッコイイ〜!」
ジェリコが男であることを忘れ喜ぶ
自分もいつかは人に憧れられるハンターになりたいと思いながら、ノアは自分の握り拳を見つめた
その握り拳の中にあるジェリコに渡された地図を見て目的を思い出す
「あ、そうだ、工房に行くんだった」
ノアは嬉しそうに地図の書かれた紙切れを広げる
「へへ、ジェリコさんに地図書いてもらったから、もう大じょ・・・・・」


     ノアは、この後もケリーウッドの街を彷徨った



【 Quest.4 From the place of departure point】

澄みきった大空に朝日が昇り、新しい朝を告げる光りが街を照らす
巨大ギルド メリパティ、その隣にある大きなゲストハウスから一人の男が出てくる
「ふぁ〜〜・・ぁ・・あぁ ん〜、今日も良い天気だ」
出てきた男はクリンスト
気持ちの良い朝に目覚めは最高のようだ
「良い天気だじゃなぁ〜〜いっ!!」
いきなりの大声に尻餅をつくクリンスト
目の前には大声の主であるノアが仁王立ちしていた
「お、おはよう・・・ノア・・どうした?な、なんか怒ってるのか・・?」
「どうしたじゃないわよ!これ見なさいよ!」
そう言うと、ノアは紙切れをクリンストに差し出す
「なんだ?」
クリンストは紙切れを受け取り広げた
そこには線が入り乱れた訳のわからないものが書かれていた
「なんだこれ?」
そう言うクリンストにノアは即答する
「地図よ」
「はぁ?地図ぅ?きったねぇな〜、誰が書いたんだよ」
「あんたでしょ!これは、あぁなぁたぁがぁ書いたのっ!」
怒鳴り続けられるクリンストは負けじと反論する
「待て!待て!この字は俺の字じゃねぇって!大体、こんなに下手じゃねぇって!」
「え・・・?」
クリンストから紙切れを取り、覗き込むノア
そして、慌ててアイテムポーチから何かを取り出す
「こ、これよ!このあんたが書いたヘッタクソな地図のせいで私は昨日、迷いに迷ったのよっ!」
ノアは取り出したもう一枚の紙切れをクリンストの目の前で広げ、叫んだ
「そ、そか・・・そりゃあ悪かったな、スマン
 しかし、なんでそんなヘッタクソな地図を二枚も持ってんだ・・・?」

     「・・・・・」「・・・・・」

「そ、そんなことどうでもいいのよ!私は今日、しなきゃならないことが沢山あって忙しいの!
 あなたとこんなことしてるヒマはないのよ!」
そう言って、ノアはその場を立ち去ろうとする
「オマエが怒鳴りかけてきたんだろ・・・ それより、忙しいって何すんだよ?」
「何って、ハンターズギルドに登録したり、昨日行けなかった工房に行ったり
 道具屋行ったり・・とにかく忙しいのよ」
立ち止まって言うノアに、クリンストも続けて言う
「あ、ギルド登録か そう言えば、ギルド登録は前いた街のギルドで登録したままなのか?」
「したまま?確かに前いたギルドで登録して以来、他のギルドでは登録してないけど・・どういうこと?」
ノアは、クリンストの言った意味が理解できない
「オマエ知らないのか?プレジヘッドのこと」
「プレジヘッド?なにそれ?」
ノアの返答にクリンストは呆れる
「オマエ、ハンターのクセにホント何も知らねぇな
 いいか、プレジヘッドってのは世界にある全てのハンターズギルドを総括するギルドの総本山のことだ」
返事もせずに聞き入るノアにクリンストは立ちあがり説明を続ける
「そのプレジヘッドは、このケリーウッドにある
 これから登録するんなら、そこへ行って登録することを勧めるぜ」
「どうして?メリパティで済ませちゃダメなの?」
ノアの質問を予想してたかのように間髪入れずにクリンストは答える
「一つのギルドで登録しても、他のギルドでクエストは受けられない
 他のギルドでクエスト受けたきゃ、そこのギルドでまた登録をし直さないといけない」
「むぅ・・・」
クリンストは質問させる間も与えず説明を続ける
「要は、各ギルドに直接登録するってのは、そのギルドお抱えのハンターになっちまうってことさ
 まぁ、報酬金に多少色がつくってメリットはあるがな」
「へ〜、なるほど〜 クリンストって何でも知ってるね」
クリンストはノアに背を向け、歩き出し言う
「常識だよ ま、プレジヘッドで登録すりゃ、そんな面倒なことせずに色んなギルドでクエストを受けられる
 あ、今日は迷うんじゃねぇぞ、ムハハ!んじゃな」
「ゲストハウスで貰った地図があるから大丈夫ですよ!でも、ありがとね!」
それを聞き、背を向けたまま手を振って応えるクリンストを見送り、ノアはプレジヘッドを目指し歩き出した


     数時間後 場所は変わり、工房プロカッサ

「なんですって!?まだ仕上がってない!?」
工房内に響き渡るかのような大声の主はジェリコ
「ですから、ジェリコ様の注文通りに仕上がるのは5日後だと先日お伝えしたじゃないですか・・・」
なだめるように受付けの女が答えた
「ハッシュ、だからアタシはナーガンに直接言ったじゃない、2日で仕上げるようにって」
短時間の間に、この問答が繰り返されてきたのだろう
ハッシュと呼ばれた受付けの女は、出し尽くした返答らを頭の中で巡らせた
だが、ハッシュの苦悶の表情が笑顔へと急変した
「いらっしゃいませ、お客様 こちらは、ボウガン専用の発注受付け所となっております」
ジェリコが振り返ると、プレジヘッドで登録を済ませやって来たノアが立っていた
ジェリコは少し焦りながら言った
「ま、迷子のお嬢ちゃんじゃない」
「あの、昨晩はどうもありがとうございました」
そう言って深深と頭を下げるノア
「いえいえ、どういたしまして 地図が役に立ったみたいね、よかったわ」
「え、えぇ・・とっても・・・」
一瞬返事に困り話題を変えようとしたが、そうする必要もなくなることをジェリコが言う
「あら、あなたガンナーだったのね バレットシャワーの紅ね、良いの持ってるじゃないの」
「あ、ありがとうございます!」
「ちょっと見せてもらってもいいかしら?」
ジェリコにそう言われると、ノアはすぐに肩からボウガンを下ろした
「うん、ちゃんと手入れはしてるみたいね でも、弦が少し緩いわねぇ」
「あ、それ以上硬くしちゃうとリロードが遅くなっちゃうんで、ギリギリまで緩めちゃってます ダメですかね・・?」
「なるほど でもね、ここのナーガンって爺さんがね良い弦を作ったのよ〜」
「ホントですか!?それってどんな弦なんですか?」
その後も二人はボウガンの話に花を咲かせる
苦難を回避することができ、一安心するハッシュ
「ハッシュ!なにボケっとしてんの!ノアちゃんのボウガンをこの紙に書いてあるようにしてあげて!」
いきなりのジェリコの怒鳴り声にハッシュは虚を突かれる
「そ、そんな、いいですよ〜 それに、素材なんか持ち合わせてませんし」
ノアは申し訳なさそうに断りを入れる
「だ〜いじょうぶよ アタシがナーガンに直接言ってなんとかしてあげるから バトルを誉めてくれたお礼よ」
「またそんなムチャクチャなことを・・・・・」
ハッシュが呟く
「なんか言った!?」 「いえいえ!」
そんなやりとりが行われている横でノアは、これで狩りが始められると
憧れ続けてきたケリーウッドでハンターとして狩りができるという喜びに浸っていた
「よぉ〜し!明日から狩って狩って狩りまくるわぁ!」
ノアは喜びを言葉に変え叫んだ
そんなノアにハッシュが言った


「あ、お客様、はりきってるところ悪いですけど、仕上がるのは7日後になります」



【Quest.5 Hunting beginning】


今日もいつもと変わらず賑わう巨大ギルド メリパティ
そして、いつもと同じようにギルドに入っていくクリンスト
中に入ってすぐに椅子に腰掛けたノアを見つけた
「よぅ〜、ノア おはようさん」
ノアの隣まで行き、挨拶を交わす
「あ、クリンスト おはよ〜」
「お、なんだ、ボウガンなんか持って 早速狩りに行くのか?」
クリンストはノアの対面に腰掛けながら聞いた
「うん、今日から狩りのスタートよ」
ノアは、はりきって答えた
そんなノアの横に立て掛けられた昨日とは違うボウガンにクリンストは気付く
「ん?そのボウガン、どうしたんだ?」
「あ、今ね、プロカッサにボウガンを強化してもらってるの でね、このボウガンは、その代用で貸してくれたの」
ノアはボウガンを手に取り答えた
「ふ〜ん・・メイルシュトロームか、良いもん借りたな で、今日は何を狩りに行くんだ?」
「クック!」
クリンストは、その返答にノアが何を考えているのかに気付いた
「オマエ、まさかあのバトル作る気なのか・・・?」
「そ、そんなんじゃないよ〜 慣れないボウガンだから肩慣らしにクックを選んだのよ〜」
ノアは弁解する
「そかそか ま、別にどっちでもいいがよぉ」
「なによその言い方ぁ なにか

     「あんたがノアか?」

いきなりの問いがノアの言葉を割いた
二人の横には、声の主である男が立っていた
「え・・あ、はい」
「これ、クック狩り 俺も行っていいか?」
男はクエストボードに貼ってあった募集告知の紙を差し出した
「あ!私が募集してたクエスト!あ、全然オッケーですよ!宜しくお願いします!」
ノアは立ちあがって頭を下げた
「あぁ、こちらこそ んじゃ、早速行こうぜ」
男は軽く応え、そう言った
「え!?もう行くんですか?もう少し待てば、まだ集まるかもしれないですよ?」
「クックだろ?二人で十分だよ それに、これ以上増えたら報酬金も減っちまうしな」
男はそう言い、クリンストを横目で見ながら振り返りギルドの出口に向かって歩き出した
「なるほど・・・あ、待ってください!よいしょ、んじゃクリンスト、行ってくるね」
ノアはボウガンを背負い、男を追ってギルドを出た
「気ぃつけろよ〜・・・・・ん〜、あの双剣・・・・・」


青を白く染めようとせんばかりの大きな雲が広がり、それを覆うかのように更に広がる大空
それに負けじと自然と時間が育てた壮大なる景色も広がっていた
「すご〜い!前にいた街の近くの丘もキレイだったけど、ここもすっごいキレイ!」
そう言いながら両手を上げ全身で風を受けるノア
「ウィンダムは広い どこへ行っても景色は最高さ これから行く目的地からの景色も絶景なんだぜ」
「この丘、ウィンダムって言うんだ っていうか、目的地って・・・クックは探さないの?」
男の言葉に疑問を抱き、質問するノア
「今回のクエスト、依頼主が畑を荒らされて困ってるってヤツだろ?
 丘の真下に結構な広さの畑が広がってるのよ わかる?畑の真上が目的地なんだよ」
「なるほど クックはそのポイントに常駐してるんだね?」
男はそれに頷くと歩き出した
「でも、どうしてそんなことわかるの?」
ノアは男の後を追い聞く
「その依頼、ホント多いんだよ 小銭稼ぐのにハンターの間では重宝させてもらってるのよ」
「へ〜、そうなんだ〜」
そんな会話を続け、アプトノスの間を掻い潜り目的地を目指し歩く二人


「着いたぜ、ここだ」
「クックはいないみたいだね〜 わぁ・・ホント、キレイな景色ぃ〜 あ、畑ってアレね」
丘から遥か下には広大な畑地があった
「でも、どうしてクックは畑を荒らすんだろ?農作物なんか食べないでしょ?」
「ほら、よく見てみな 畑から少し離れた所にケルビの群れがいるだろ?」
そう言うと、男はノアに双眼鏡を渡す
ノアは双眼鏡を受け取り覗き込んだ
「ホントだ なるほど〜、あのケルビの群れを襲って、そのまま食い込んでこられて畑は被害を受けてるのね」
「そゆこと とんだとばっちりさ」
ノアは双眼鏡を置き、アイテムポーチを開いた
「なにするんだ?」
男はノアに目を向けた後、周りを見渡しながら聞いた
「クックもまだ来そうにないから、道具の最終チェックよ」
「余裕だな だが、そんな時間はくれそうにないぜ」
「え?」
ノアが顔を上げると、男は空を見上げていた
遠くから聞き慣れた羽音が聞こえてくる


     「お出ましだ 特等席を取られてお怒りのようだぜ」


【Quest.6 Hunting beginning 2 [Enigmatic behavior]】


平穏な時間が流れるウィンダムの丘
風の音だけが通りぬける静けさを、荒々しい羽音が破る
「さぁ、狩りの始まりだぜ」
男はそう言うと、額のゴーグルを下ろした
ノアはボウガンを肩から下ろし、構える
上空を見上げると、クックの姿が確認できた
それと同じく、クックも二人を姿を捕える
男はチェーンソーの刃のようなものが付いた双剣を抜き、構える
構えると、双剣は唸るような機械音をあげた
「お〜、強そう〜」
それを見たノアがそう言うと、男は笑みを浮かべ走り出した
それと同時に、クックも男目掛け急降下を始めた
男は足を止めず走る
男に気を取られてるクックを見て、ノアは徹甲榴弾の弾倉を手に取る
そして、ボウガンにそれを差し込みリロードを済ませた
クックの着地を兼ねているだろう急降下攻撃が男に迫る
次の瞬間、堅く大きなクチバシは地面をえぐった
男は瞬時に横に回転し、身をかわしていた
「おい!やる気あるのかぁ!」
男は笑みを浮かべながらそう言うと、再びクックに向かって走り出した
着地を済ませたクックは、後方にいる男の方に回転し体を向ける
その隙をノアは見逃さなかった
「相手は一人じゃないのよ!」
ノアはそう言うと、クックの頭部を狙い徹甲榴弾を撃った
弾はクックの後頭部に着弾し、高い爆音をあげ爆発した
クックは奇声をあげ、体を硬直させる
「やるじゃねぇか!」
男はノアにそう言うと、双剣を振り上げクックに飛びかかる
フラつかせるクックの体を高速回転する刃がえぐっていく
鳴き声をあげ暴れるクックを容赦無く切り刻む

     「危ない!!」

ノアのいきなりの叫び声に、男は手を止め振り返る
クックが体を回転させ振った尾が目の前まで迫っていた
男は瞬時に体を屈めたが、その攻撃に吹き飛ばされる
クックは吹き飛んだ男の方を向き、足で地面を蹴り唸っている
「だから無視してんじゃないわよ!」
ノアの撃つ貫通弾がクックを休ませることなく襲う
クックはノアの方に体を向け、再び唸る
「やっと、こっち見てくれたね」
ノアは、そう言いながらリロードする
その時、クックは頭を後ろに振り上げた
「え?」
ノアがその行動の意味を理解するまでに、クックは頭を振り下ろし火を吹いた
火の玉はノアに向かって襲ってくる
ノアは、たまらず横に飛んだ
地面に落ちた火の玉は、先刻までノアがいた場所を焦がす
「あっぶなぁ〜い」
ノアはそう言いながら、すぐに体勢を直しボウガンを構える
だが、目の前には怒りに奮えるクックはいなかった
クックは地面に這いつくばり、代わりに立っていたのは双剣を唸らせる男だった
「オマエ、やるじゃねぇか 俺に一撃かますなんてよ」
男がそう言うと、躊躇わずにクックの腹部に双剣を突き刺した
クックは奇声をあげ、剣を振り払うかのように暴れながら立ちあがった
剣ごと体を持ち上げられそうになった男は、クックの体から剣を抜く
「クソッ!」
男は眉を歪ませたが、目の前のクックを見て表情を元に戻した
クックは足を引きずり、男とは逆方向へ歩き出す
「逃がすわけないでしょ!」
ノアはそう言うと、再び徹甲榴弾の弾倉を手に取る
今ボウガンに差さっている弾倉と取り替えようとするが、初めて扱うボウガンに手間取る
一方、男は逃げようとするクックを追わず双剣を背中に収めた
差し替えに手間取り、焦るノアはそんな男が視界に入った
「ちょ・・何してるの!?逃げちゃうわよ!」
だが、男はノアの言葉に耳を貸さずにアイテムポーチを開け、何かを探っている
ようやく弾倉を差し替え終えたノアは、クックに狙いを定める
その時、男はアイテムポーチから取り出した玉をクック目掛け投げた
「え!?」
ノアは、目の前で起こった事に理解できなかった
男が投げたのは、けむり玉だった
真っ白い煙に包まれるクック
故に、狙いを定められないノア
「どうして!?一体なにがしたいの!?」
ノアは叫ぶが男は黙って立っている
すると、煙の先からクックが飛び立とうとする羽音が聞こえてきた
ノアは再びスコープを覗き込み、クックの姿を探す
その時、何かが叩きつけられるような大きな音がした
「なんなの・・・?」
ノアは何が起きたのかわからなかった

丘に静けさが戻り、二人のハンターの間を風が通り抜けた
煙が徐々に晴れていく
その薄れていく煙の中に一つの大きな影がある



     そこには力尽き横たわるクックの姿があった



【Quest.7 The truth in the other side of smoke】


平穏を取り戻したウィンダムの丘
謎と共に煙を運んでいくかのように風が吹きぬける
煙が晴れ、力尽きたクックが姿を現す
「ど、どうして・・・?」
それでもノアは、目の前で起こった事が理解できずにいた
「いやぁ〜、危なかったねぇ〜 もう少しで逃がしてしまうとこだったよ」
聞き慣れない男の声がした
「でも俺達がいて良かった」
そう言いながら、横たわるクックの向こうから声の主が現れた
「だ、誰・・・?」
ノアは、ますます現状が飲み込めない
現れた男は二人組み
一人は大剣を背負い、一人はヘビィボウガンを背負っている
「いやまぁ、結果 クエスト失敗にならずに済んだんだ めでたしめでたしじゃねぇか」
もう一人の男が言う
「あんた達、この状況わかるよな?わりぃが、このクエストの報酬金は俺達が受け取ることになる」
そう言った男は、背中の大剣を抜き クックに突き刺した
「え!?な、何言ってるんですか!?このクエストは私達が受けたんですよ!?」
ノアは思わず叫んだ
「何言ってんだ、おたくらはヘマこいたんだぜ?
 あの状況、俺達がいなけりゃクエスト失敗は確実だった 素直に諦めな」
男にそう言われ、何も言えないノア
一緒に来た双剣の男も黙ったまま立っている
「あんたら、メリパティからのハンターだろ?
 あそこは相変わらず来る者拒まずなんだな こんなクエストを・・ククク」
「そう言ってやんなよ 見るからに これからの若者じゃねぇか」
男達は笑いながら話す
悔しさが込み上げ、歯を食いしばるノア
「んじゃま、俺達がちゃ〜んと報酬金受け取っててやるから安心しな」
「帰り道、ランポスに気をつけるんだぞ?フハハ!」
男は突き刺した大剣を抜き、立ち去ろうとする

     「や〜っぱ こういうことだったのねぇ〜」

どこからか聞こえてきた声に、男達は足を止めた
「あ〜ん?誰だぁ?」
男達は振り返る
ノアも声のした方に顔を向けた
「クリンスト!!」
そこには、段差の上に立つクリンストがいた
「よう、なに泣きそうな顔になってんだよ?」
思わず叫ぶノアに、クリンストは笑ってそう応えた
「クリンストじゃねぇか 何の用だ?あんたはお呼びじゃないんだが」
「そうだ、もう話はついた ま、話し合うようなことじゃなかったが」
男達はクリンストに言う
「よく言うぜ 一部始終見させてもらってたんだぜ?」
クリンストにそう言われ、男達は双剣の男を睨んだ
「ナット・・・てめぇ、喋りやがったな・・・」
「違う!俺は誰にも喋ってなんかいない!」
ナットと呼ばれた双剣の男は弁解するかのように叫ぶ
「そうだよ 俺は誰からもなぁんにも聞いてないぜ しかしまぁ、馬脚はあらわしたな」
「チッ・・・」
クリンストの言葉に舌を打つ男達
「一体どういうことなの!?」
一向に状況が飲み込めないノアは、クリンストに向かって言った
「あの二人と 双剣のあんちゃんはグルだったんだよ」
クリンストは説明を続ける
「向こうの二人はカーゲーベーってギルドのお抱えハンターさ
 カーゲーベーってのは、メリパティと1、2を争う巨大ギルドなのよ」
「でも、何の為にこんなことを・・・」
クリンストは二人の男を横目で見ながらノアの言葉に答える
「目当ては報酬金なんかじゃない 評判さ 
 金で雇ったあんちゃんを使ってメリパティからクエストを受けさせる
 それでワザと失敗し、横からやって来てとどめを刺す メリパティの評判を落とす為の安い芝居さ」
ナットはノアに背を向けた
そして、カーゲーベーのハンターは言う
「クリンスト、あんたは別にメリパティの専属ハンターでもないだろ
 さっきも言ったが、お呼びじゃないんだ 帰ってくれねぇか」
「そうもいかねぇんだ この二人は俺の知り合いでねぇ
 残念だが、今回のあんたらの計画は失敗さ さっさと帰るのはあんたらの方だよ」
クリンストにそう言われた男達は、小声で話し出した
そんな二人を余所にクリンストは段差から下り、ノアのいる方へ歩き出す
「さ、帰ろうぜ 報酬金が入るんだ、酒の一杯でも奢ってくれよ」
「い、いいの・・?これって解決してるの?」
ノアは不安そうな顔でクリンストに聞く
「おい!おまえら!報酬金はくれてやるよ だが、次はこうはいかねぇからな!」
二人はそう言うと、振り返り立ち去っていく
「だそうだ さ、帰ろうぜ」
クリンストは笑ってノアに言った
その後ろで、ナットは立ち去ろうとしていた
「おい、オマエ やっぱりナットだったんだな」
クリンストは振り返らずに言う
「気付いてたんですか?クリンストさん」
ナットは足を止め、そう言った
「いや、正直 オマエを見ただけじゃわからなかったよ 最後に見たのはオマエが5歳くらいだったからなぁ
 でもまぁ、そんな機械仕掛け双剣背負ってりゃ気付くってもんよ」
「ふん・・やっぱりこれか・・・」
クリンストに言われるとナットは笑いながら双剣に手をかけた
「なんなの?二人はホントに知り合いなわけ?」
ノアは再び把握できない状況に立たされる
「ま、詳しくは帰って話してやるよ さ、早く帰って飲もうぜ」
クリンストはそう言って歩き出した
「ちょっと待ってよ!」
ノアはクリンストの後を追う
一方、ナットは二人に背を向ける
そんなナットにクリンストは足を止めずに言った
「おい、ナット なにしょげてんだよ、オマエも付き合うんだよ 早くしろ〜」


そう言われたナットは、うつむいたまま笑みを浮かべ 二人の後を歩き出した


【Quest.8 A bolt out of the blue】


日が昇りきる頃、メリパティはいつもの賑わいをみせていた
「しかしまぁ、なんであんなことやってまで小銭稼ごうとしてたんだよ?」
クリンストはビールを一口飲み、ナットに聞いた
「実は・・今、家を出てるんですよ・・・」
ナットは俯いたまま答えた
それを聞いたクリンストは、口に入れたビールを吹き出した
「ゴホッ!ま、待て・・・出たって、コホ・・家出したのか?コホッ」
そう言われたナットは黙って頷く
「そりゃケッサクだ!ムハハハ!」
クリンストはテーブルを叩きながら大笑いする
それを見たノアは言う
「ちょっとクリンスト、笑うなんて酷いわ なにか理由があるのよ、ね?」
そう言われたナットは俯いたまま答えた
「オヤジが悪いんだ・・・俺の構想をバカにするから・・・」
「あ?オマエ、ボルトのオッサンとケンカしたのか?」
小さな声で呟くナットにクリンストは聞いた
「そうだよ・・バカオヤジが俺の開発プランを理解しやがらねぇんだ
 あれは絶対にうまくいくんだ・・成功すればオヤジの機械槍を凌ぐものができるんだ・・・」
ナットは答えた後も小声で呟き続けた
「ムハハ、暫く会ってないがボルトのオッサンも元気そうだな
 しかしよぉ、オマエもそんなことでスネてんじゃあねぇよ まったく若いねぇ〜」
クリンストは、そう言いながら再びビールを飲みだす
「またクリンストは・・・でも凄いじゃない!ナット君、頑張ってその武器作ろうよ!」
ノアは身を乗り出してナットに言う
「そうだぜ、作っちまえばいいんだ バカにした分、オッサンも尻餅ついてぶったまげるぜ」
クリンストに続けて言われたナットは立ち上がった
「もちろんさ!作ってやるに決まってるだろ!」
そう言い、拳を強く握るナットを見てノアは微笑んだ
そしてクリンストはビアジョッキをテーブルに叩きつけ 言った
「よく言ったぜ!よぉし、ナット!オマエも飲め!おい、ビール3つ追加だ!」
そう言って、クリンストはビールを注文する
「ちょっと!クリンスト!私は飲まないよぉ!」
「あぁ?なに言ってんだよ、こういう時は皆でパーっと飲むんだよ!」
「そうですよ!ノアさんも飲みましょうよ!クリンストさんの言う通り、こういう時はドカーンと


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


三人は一瞬なにが起きたかわからなかった
三人だけじゃない、メリパティにいるハンター達全員が今の状況を理解できずにいた
楽しくなるはずだった三人の会話を割く爆音が街に鳴り響いたのだ
軽く地面を揺らした爆音は、街の奥の山まで響いていた
「な、なんなのよ一体!?ここは街の中なんだよ!?」
ハンマーを持った女ハンターが取り乱しはじめた
「ロロ!落ちつくんだ!しかし、マジでなんだってんだ・・・」
クリンストは女ハンターにそう言って立ち上がった
その横で、椅子から落ち 床に尻餅をつかせたノアも立ち上がって言った
「ビックリしたぁ・・・みんな大丈夫・・?」
ノアが顔を上げると険しい表情のナットが立っていた
クリンストも そんなナットに気付いた
「ナ、ナット君・・・どうしたの・・?」
ノアの言葉に耳を貸さず立ち尽くすナットの口が動いた


     「ま、まさか・・今の爆発・・・・・」



【Quest.9 It's been one disaster after another】


澄みきった青空に周りの雲とは違う一筋の黒い雲
それは街の一部から昇り続けていた
街中の人間は その黒煙を見上げ、誰もが不安な表情になっていた

「おい、ナット!どこへ行くんだ!?」
いきなり外に向かって走り出したナットにクリンストは叫んだ
しかし、ナットは足を止めることなく外へ飛び出す
それを見たクリンストとノアは慌てて後を追う
外へ出たナットは黒煙を見つけ 呟いた
「間違いない・・・あのヤロウ・・・」
そしてナットは黒煙の立ち昇る方へ向かい走り出した
続けて出てきた二人も黒煙に気付く
「あ〜、ありゃあギアテックだな」
クリンストは確信を得た表情で言う
「ギアテック・・?」
ノアの疑問にクリンストは答えだした
「あぁ、ナットの家がしてるギアテックっていう工房さ あの位置だ、間違いねぇ」
「え!?ちょっと大丈夫なの!?凄い爆音だったよ!?」
ノアは心配そうな表情で言った
「さぁな でもまぁ、最近は無かったんだが 昔はこういう事が多かったのよ、あそこ
 しかしオマエの言う通り、今回はちょっとデカかったな・・・ とりあえず、俺達も行ってみるか」
その言葉にノアは頷き、二人はナットを追った


黒煙が細くなり街の人間に冷静さが戻りだした頃
ナットは息を切らせ、工房ギアテックの前で立ち尽くしていた
工房の後方部分は爆発で大破し 崩れていた
幸い火の手は少なく 燃え広がる様子は無かったが、黒煙はしぶとく立ち昇っていた
そこへ、ようやく追いついたクリンストとノアがやって来た
「おい、ナット!どうだ、大丈夫だったか!?」
クリンストは問い掛けたが、ナットは無言で立っている
その時、崩れた瓦礫が動きだした
それに気付いたクリンストは瓦礫の山に駆け寄った
慌てて瓦礫をどかせ始める
すると、その中から一人の男が出てきた
「ブホッ!ゴホゴホッ!ふぅ〜、まいったまいった どうやら助かったみたいだの」
「オッサン!大丈夫か!?」
クリンストは、出てきた男に手を貸し 聞いた
「ん?・・・おぉ〜、オマエさんはクリンストじゃねぇか 久しぶりだの〜」
出てきた男は、ナットの父親のボルトだった
そんなのん気なボルトにクリンストは安心感の含む呆れた表情になる
「なぁにが久しぶりだよ、まったく ってか、こいつの仕業はやっぱりオッサンだったか
 しかしまぁ、無事でなによりだぜ ムハハ」
「なにを言うか!これはワシのせいではないわ!この爆発の原因は、あのバカむす

     「オヤジぃ〜・・・・・」

後ろから聞こえた恨めしい声に、ボルトは口を止めた
ボルトの言葉を割いたのはナットだった
「てめぇ!俺の大事な研究室を木端微塵にしやがって!このバカオヤジ!」
ナットはそう言うと、ボルトに飛びかかった
「ふざけるな!ワシの忠告を無視しよるから こんなことになるんだろうが!このバカ息子!」
ボルトも負けじとナットに掴みかかる
「まったく、人騒がせな親子だぜ」
クリンストは呆れ顔で言う
そこへ一人の大柄な男が走ってやって来た
「大丈夫かっ!怪我人はいないかっ!」
「お、ゴルドーじゃねぇか ごくろうさん」
クリンストは、その男に声をかける
「これはこれはクリンストさん、大丈夫ですか?」
「あぁ、俺は関係ねぇからな 事を起こした当人も怪我はなさそうだよ」
そう言ってクリンストは親指で掴み合いをするボルトを指す
「ふむ、それは良かった しかし、久しぶりにやってくれましたなぁ ボルトさんも・・・」
「ん、シルバはどうした?一緒じゃないのか?」
クリンストは そう言うと辺りを見回した
「あいつには今 救護班を呼びに行かせております まぁ、必要は無さそうですな」
その時、男が大声をあげて向かって来た
「ん・・お、そんなことを言っていたら そのシルバが来たみたいですな」
「ちょっと待て・・なんか様子がおかしくないか・・?」
そう言うゴルドーに対し、クリンストは走ってくるシルバの様子に違和感を感じた
そして、二人の前まで走ってきたシルバは息を切らしながら言った
「父さん、大変だ!今、こっちに向かってる時に手前のギルドで瀕死のハンターがいると呼び止められたんだ!」
「なんだって!?で、どうしたんだ!?」
ゴルドーは慌ててシルバに聞いた
「大丈夫です、こちらに向かっていた救護班の半分をそのハンターにつかせてきました
 で、そのハンターなんですが、大量の毒に犯されていまして 外傷が異常なんです・・・」
その話を聞いてナットとボルトも大人しくなる
それに釣られ、クリンストとノアも不安な表情になっていた
そして、シルバが走ってきた方が騒がしくなる
「あの担架で運ばれてるのが そのハンターです」
シルバがそう言うと、皆は運ばれていくハンターの元へ走った
「こ・・これは酷い・・・」
運ばれるハンターを見てゴルドーは呟いた
その時、そのゴルドーを押しよけ ノアがハンターに駆け寄った


     「な・・なんで・・・どうしてソルさんが・・ソルさんっ!!」

【Quest.10 In the labyrinth like the jungle】


日が少し傾き、街の影が伸びる頃
街にはいつもとは違う静けさが広がっていた
メリパティにもいつもの賑わいは無かった
「クリンストさん、あんたはどう思う?」
ゴルドーは神妙な面持ちで聞いた
「・・・ノアに少し聞いたんだが、あのハンター かなりの腕の持ち主らしい
 ただ事ではないことは確かだな」
クリンストが答え、続けてゴルドーは話す
「名はソル・リドル 国から直々に依頼されるほどのハンターだ
 今回、ソルはゲリョス討伐のクエストでイロカイの森に向かっていたらしい」
「ジャングルにゲリョスを?
 じゃあ、あの毒は・・・しかし、ゲリョスなんかにやられる男でもないだろ?」
クリンストは疑問を抱き 聞いた
「いや、救護班によると あの毒はゲリョスによるものではないらしい
 私も耳を疑ったんだが、どうやら麻痺性の毒らしいんだ」
「麻痺毒?でも、向かった先はジャングルだろ?」
クリンストに再び疑問が浮かぶ
「そこなんだ 麻痺毒を持つモンスターと言えばゲネポスやガレオス
 しかし、ソルという男を瀕死の状態にまで追い込むとは思えない それに、場所はジャングルだ」
「それとだ、あの外傷 大型のモンスターに襲われたものじゃない」
クリンストのその言葉にゴルドーは顔を上げ言った
「やはりそう思うか?・・・・・まさかだとは思うんだが
そこまで言ったゴルドーにクリンストは空かさず言う
「ゴルドー、それはない 場所が場所だが、それは考え過ぎだ ヤツらはもういないんだ」
そう言われ、ゴルドーは黙って頷いた
「そうだ、ゴルドー 今回の件、プレジヘッドから依頼が出るんだろ?」
「あぁ、謎な部分が多いからな 明日にはプレジヘッドから調査依頼が出されるだろう」
「その調査、俺が行こう」
「おぉ、それは助かる クリンストさんなら安心して任せられる」

     「その調査、俺も行くぜ」

後ろから聞こえたその言葉に二人は顔を見合わせ、振り返った
そこにはナットが立っていた
「ナット、オマエには危険すぎる 行かせるわけにはいかん」
ゴルドーは立ち上がって言った
「いいや、止めたって俺は行くぜ ソルさんは俺の大事な客なんだ
 今 造ってるハンマーはソルさんの為に造ってる 俺の構想を理解してくれたのはソルさんだけなんだ
 ソルさんがやられて俺が黙ってるわけにはいかねぇんだ!」
そう叫んだナットにゴルドーは間髪入れずに言い返す
「だったら尚更だ!オマエはそのハンマーをソルさんの為に完成させろ!
 死ぬかもしれんような危険な真似をしてどうなる!」
ゴルドーの怒鳴り声でメリパティは さらに静かになる
そんな中、クリンストは立ち上がり 言った
「・・・わかったよ オマエも連れていってやる だが、俺の言うことは聞くんだぞ」
「クリンストさん!なにを言うんですか!?こいつにはまだ危険過ぎます!」
ゴルドーは慌てて止めようとする
「なぁに心配するな 今回は調査だ 危険と判断すれば すぐに引き返す
 それに、俺が一緒なんだ 任せろ」
クリンストはそう言うとゴルドーの肩に手を置いた
「・・・・・仕方ない ナット、現地ではクリンストさんに従うんだぞ」
ゴルドーは少し呆れた顔でそう言った
「ありがとうございます!」 ナットはそう言うと深深と頭を下げた
その時、運ばれるソルを追いかけて行ったノアが帰ってきた
「ノアさん!ソルさんは!?」
ナットは、ノアを見るなり傍まで駆け寄り 聞いた
「ソルさんは大丈夫 毒も抜けて意識も戻ったし、安静にしてれば良くなるって」
元気は無かったが、ノアは笑って答えた
それを聞いたナットは、安心して床に座り込んだ
「ノア、今回の件について何か言ってなかったか?」
クリンストもノアの傍まで歩み寄り 聞いた
「・・・ほとんど覚えてないって言ってた 相手を確認する前に襲われたって・・・」
「そうか・・・」
ノアの答えにクリンストの表情は険しくなる
「でも、一つだけ覚えてることがあるって言ってた・・・」
静まり返る中、ノアは口を開いた


「目の前には、後ろまで迫って来ていたモンスターの信じられない大きさの影があった、って・・・」


【Quest.11 The quiet before the storm】


日が沈み始め、街に黄昏の時が訪れる頃
今までに無い静けさがメリパティ全体を包んでいた
そんな中ノアは、ソルと話したことを伝える為に口を開く

     今から1時間程前、場所はルカ療養所

ノアは、手当てが済まされたソルのいる部屋の前に立っていた
ノブにそっと手を延ばし音を立てずにドアを開ける
ノアが部屋に入ろうとした時、中から声がした
「誰だ?」
思わず動きを止めたノアは答える
「ノアです 入っても大丈夫ですか・・・?」
「あぁ、いいぜ 入りな」
そう言われ、部屋の中に入るとベッドに寝ているソルがいた
「よぅ、久しぶりだな 元気にしてたか?・・・よっこらしょ」
ソルはそう言いながら体を起こした
「だ、大丈夫なんですか?無茶しないでください」
ノアはそう言いながら慌ててソルの元に駆け寄り、手を貸す
「大丈夫だよ 今からでも狩りに行けるぜ、ははは!」
予想以上に元気なソルを見て、ノアの顔にも笑みが浮かぶ
「随分大人っぽくなったじゃねぇか 色気はねぇがな、ははは!」
「ほっといてください!でも、ルカ先生の言ってた通り、全然大丈夫そうで良かったです」
「ルカ?ここの医者か?会ってねぇな、美人かい?」
「残念、男の方です 男前でしたよ」
「はは・・そうか、そりゃ残念」
そんな たわいのない話を続けていた時、ノアの表情から笑みが消えた
「どうした?」
ソルは、そんなノアに気付いて聞いた
「一体何があったんですか・・・?ソルさんほどの人が・・一体、相手はなんだったんですか?」
ノアの言葉でソルの顔からも笑みが消えた
「・・・情けねぇ話だが、全く覚えてないんだ 一瞬だった・・・
 後ろまで迫って来ているのはわかったんだ 目の前に見たこともないデカい影があったからな」
「一瞬・・・・・」
ノアはそれ以上言葉が出なかった
「俺はゲリョスを狩り終え、帰り支度をしていたんだ すると、遠くから妙な音が聞こえてきたんだ
 どこかで聞いたことのあるような、でも初めて聞く音・・・妙な感じだった」
「妙な音・・ですか?」
「あぁ、その後 影が見えたと同時にその音も後ろまで迫ってたよ
 それから一瞬・・・・・気がつけば このベッドの上だったってわけよ」
その言葉に、ノアは疑問を抱き険しい表情になる
「・・・でも、ソルさんはその場で気絶されたんですよね?
 どうしてギルドに・・・誰かがソルさんをギルドまで運んだ・・・?」
ノアの言葉で部屋に沈黙が訪れた


全てを話し終わったノアは椅子に腰をかけた
「とりあえず、今のあの森は危険だ 暫くは近寄らない方がいい、ソルさんは最後にそう言ってた」
「ふむ・・妙な音か・・・しかも、新たな謎が増えてるではないか・・・」
ゴルドーは考え込むように言う
クリンスト達も同じく険しい表情でいた
そんな静寂をナットが破る
「明日になりゃあわかることじゃないっスか!なんだったら、そいつをやってやりましょうよ!」
その言葉にノアは俯いていた顔を上げる
「明日?そのモンスターを狩りに行くんですか?」
「いやいや、違うんだ!行くと言っても調査なんだよ」
ノアの言葉にゴルドーは慌てて答える
「そうだ、ノアには関係のないことだ それと、今日はこれ以上の狩りはやめておけ」
クリンストはそう言うと外に向かって歩き出す
するとノアは立ち上がり口を開いた


     「その調査、私も連れて行ってください」

【Quest.12 The quiet before the storm 2 [Approaching downpour]】


静寂をもたらした騒動から時間が経ち
昨日とは打って変わって 街にはいつもの賑わいが戻っていた

「クリンストさん、本当に大丈夫なのですか?」
ゴルドーは心配そうな表情でクリンストに聞いた
「心配するなって 危険と判断すれば、すぐに引き返すさ」
クリンストは調査の準備をしながら答えた
「おはよーございまーす!」
元気な挨拶と共に現れたのはノア
その後ろからナットも続けて現れた
「よう、元気じゃねぇか やっぱオマエはそうでないとな」
そんなノアにクリンストは笑顔で言った
「狩りに行くんですよ!テンション上げないとね
 それに、リロードの練習もしたんです もうこのボウガンでも大丈夫ですよ」
「調査だよ、調査 それと、もしものことがあっても そのボウガンは使わなくてもいいぜ」
「え?」
クリンストの言葉に疑問を抱くノア
「もうそろそろ来る頃なんだがな・・・お!来た来た おい、トミー!ここだ、ここ!」
クリンストはそう言うと手を振った
クリンストの視線の先にはボウガンを持った男が立っていた
「あ、クリンストさん おはようございます 言われてたボウガン持って来ましたよ」
トミーと呼ばれた男は そう言いながら近づいてきた
「あ!そのボウガンって・・・」
トミーの持っているボウガンを見て ノアは思わず声を出す
「あ、もしかしてアナタがノアさん?はじめまして、トンプソンと言います
 昨日、クリンストさんに言われてノアさんのボウガンを早急に仕上げたんですよ」
「そうなんですか!?クリンスト、トンプソンさん、ありがとうございます!」
ノアは二人に対して深深と頭を下げた
「いや〜、僕は何もしてませんから 仕上げたのもナーガン師匠ですし あ、それと 僕のことはトミーって呼
「よっしゃ!んじゃま、準備もできたし 出発しますか!」
トミーが喋り終わるまでにナットはそう言った
「そうだな それじゃ行ってくるよ」
クリンストは立ち上がりゴルドーに言った
「気をつけて ナットとノア君はクリンストさんの言うことを聞くようにな」
「わかりました では、行ってきます!」
ゴルドーの言葉にノアが答えると、三人はプレジヘッドを出た
「一緒にいるだけで元気にさせてくれるな、ノア君は
 無事に帰ってくる事を祈ろうではないか な、トミ・・・どうした?」
「いえ・・な、なんでもないです・・・グス」


鬱蒼と生い茂る木々が広がり、過去の建造物が残る密林
その待ち受けるかのように静かに佇むイロカイの森の前に三人は立っていた
「妙に静かだな・・・イヤな感じだ・・・」
クリンストは、そんなジャングルを前に呟いた
「確かに、鳥の鳴き声さえ聞こえませんね・・・」
ナットも続けて呟く
「とりあえず中に入るか 話はそれからだ それで、少し様子を見て 探索を始めよう」
クリンストのその言葉に二人は頷き、三人はジャングルに足を踏み入れた

ジャングルの中は いつも以上に静まりかえっていた
いつもはいるランポスの影さえ見当たらない
そんないつもとは違う状況にクリンストの表情は険しくなる
「み、みんな、アレ・・なんだろ?」
沈黙を破ったのはノア
そして二人はノアの指差す方向を見た
そこには大きな何かが横たわっている
「なんだアレ・・?デカいな・・飛竜かな・・」
目を凝らしながらナットは言う
「ありゃあゲリョスだよ 恐らくソルが狩ったヤツだろう」
クリンストがそう答え、三人はゲリョスの死体に歩み寄る
「それにしても静かすぎますね・・・ホントにそんなモンスターがいるのかな・・・」
ナットがそう言うと、ゲリョスを調べていたクリンストが立ち上がった
「いや、ちょっと待て・・・何か聞こえないか?」
「え・・?何かって・・まさか・・・」
クリンストの言葉にノアは辺りを見回す
「・・・聞こえますね かなり遠いですが」
ナットはそう言うと、双剣に手をかけた
慎重になる三人
そして、三人がゲリョスの死体に背を向けた時 遠かった謎の音が一気に背後まで近づいた
虚を突かれた三人は いきなり迫ってきた謎の音と目に写った光景に動くことができなかった


     ソルが見たものと同じであろう巨大な影が三人を覆っていた


【Quest.13 The queen awoke】


今までの静けさが嘘のように木々が騒ぎはじめていた
そして、足元を照らしていた木漏れ日は巨大な影で遮られた

「クソッ!かかってきやがれ!」
ナットはそう言うと、双剣を抜き 振り返った
続けてノアとクリンストも振り返る
そして、三人は再び動きが止まってしまう

     「ラ、ランゴスタ・・・」

ノアは思わず声を出す
三人の目の前には大量のランゴスタがいた
隙間無く埋め尽すように飛ぶランゴスタは三人を覆う巨大な影を作っていた
「なんてこった・・・こういう事だったのか・・・」
クリンストがそう呟いた瞬間、大量のランゴスタは三人目掛けて飛びかかってきた
三人は体を屈めた
大量のランゴスタが一気に通り抜ける
「ぐっ!・・・なんて数だ・・・」
ナットは双剣を振ることもできない
クリンストは体を屈めながらアイテムポーチに手を入れ玉を取り出す
「オマエら、そのまま目を閉じてろよ!」
そう言うと、取り出した玉を上に投げた
投げた物は閃光玉
閃光玉は暫くして上空で光りを放ち弾けた
甲高い鳴き声をあげ、次々と地面に落ちていくランゴスタ
「よし、走るぞ!立て!俺について来るんだ!」
そう言って走り出したクリンストにノアとナットも立ち上がりついていく
閃光玉で窮地を逃れることができたものの、ランゴスタの数は増え続けていた
クリンストは閃光玉を投げながら走った
しかし、ランゴスタは減ることなく襲いかかってくる
暫く走り、クリンストは遺跡に入り込んだ
続けてノアとナットも入っていった

「はぁ・・はぁ・・なんなの・・あの数 何が起こったのよ・・・」
ノアが呟く
「クイーンが動き出したんだ・・・」
答えるようにクリンストが言う
「クイーン・・?」
「ランゴスタクイーンさ 女王虫とも呼ばれてる
 コイツが動き出す時、ランゴスタは異常発生してクイーンを護るかのように見境なく襲ってくるんだ」
ナットがノアの疑問に答える
「しかし、数が尋常じゃない 俺も異常発生は過去に数回見てきたが、今回は桁違いだ・・・」
続けてクリンストが言う
「なに弱気なこと言ってるんですか!?今、大きな波は通り過ぎました
 今の内に奥まで行ってクイーンを叩きましょう!」
そう言うナットに間髪入れずにクリンストは反論する
「バカ言うな!今言っただろ、過去に見ない異常な状況だ!
 今 奥に行けたとしても状況は変わらねぇ!今の群れに追いつかれることだってあるんだ!
 オマエは豪雨の中 全く濡れずに走りきることができるのか!?
 奥に着く頃には蜂の巣状態だ!ソルの外傷を見ただろ!」
「・・・・・」
クリンストに怒鳴られ黙り込むナット
「俺達の目的は調査だ このまま街に戻ってゴルドーに伝えるだけだ
 ゴルドー達は過去に何回もこの状況を打破してきた専門家だ この場はヤツらに任せればいい
 それより、問題はこの後のことだ 何も起こらなければいいが・・・」
「この後・・・?」
クリンストの言葉に疑問を抱くノア
「そんなの迷信ですよ 何も起こりませんよ」
ナットが冷静に答える
「一体なんのことなの?」
二人の会話についていけないノアにクリンストが答える
「ランゴスタが異常発生する時、それは世界に異常が起こる時と言われてる
 モンスターの生態系に異常が起こったり、世界規模の異常気象や災害が起こったりする」
「でも、5年前にも異常発生があったじゃないですか
 あの時だって何も起きなかったじゃないですか」
ナットが負けじと反論する
「5年前・・・あの時は世界の至る所で突然変異と思われる異色の飛竜が確認されたよ」
クリンストのその返答にノアの表情は険しくなる

     (5年前・・・異色の飛竜・・・)

その二つの言葉がノアの頭の中を過った
「リオソウル・・・」
ノアは思わず呟いてしまう
「ん・・なにか言いました?」
「あ、ん〜ん!なんでもないよ それより早く街に戻りましょ」
聞いてきたナットにノアは少し慌てて答えた
「だな さっきの群れもかなり離れたみたいだ 今の内に とりあえずキャンプまで行こう」
クリンストがそう言うと 三人は遺跡から離れキャンプを目指し走り出した

少しして三人が離れた場所に二つの影が近づく


     「人間が来てたみたいだね〜 ケリーウッドの人間かな〜?」





Quest.14 Darkness which begins to move


━ドーンとカロンはランポスの駆除お願い!私とバーダでやつを攻撃するよ!━

     ━ノア!よけてぇ!!!!━

                    ━うおぉぉぉぉ! よくもカロンを!━

        ━これは、一体どういうことだ!!━

                       ━リ、リオソウル・・・━

             ━ノア!!おい!ノア!!━


「おい、ノア!聞いてるのか!?」
「・・・・・え?あ!ごめん!」
クリンストの呼び掛けにノアは我に返る
「大丈夫か?なんかボーっとしてたぞ」
「あ、うん、大丈夫 ちょっと考え事してただけだから」
ノアは5年前のリオレウスとの死闘を思い出していた
「もう少ししたらゴルドー達も帰ってくるだろう
 報告は俺が聞いておく ノアは帰って休むといい」
「そっか、ゴルドーさん達が出掛けて結構経つもんね
 わかった、じゃあ私は先に帰って休ませてもらうね」
ノアはクリンストにそう答えると席を立った
「あれ?そう言えばナットはどうしたの?」
ノアは辺りを見回してクリンストに聞いた
「ナットなら先に帰ったよ 製作途中のハンマーを完成させるんだと」
「そっかぁ んじゃ、私はお先に帰らせてもらいます〜」
そう言うとノアはプレジヘッドを出た

「さて、後はゴルドー達の帰りを待つだけだな」
その時、プレジヘッドの裏口が騒がしくなる
「只今帰りましたぞ」
ゴルドー達がランゴスタ駆除から帰ってきた
「お、もう少しかかると思ったが早かったじゃないか?さすがだな」
クリンストにそう言われると、ゴルドーは椅子に腰掛けながら話しだした
「いや、それがですね、私達がジャングルに到着した時
 ハンター風の男と女の2人がランゴスタの駆除をしていたんですよ
 まぁ、ハンター風と言いましても話をした結果、ハンターではなかったんですが」
「男と女・・・?」
クリンストはゴルドーの話に疑問を抱く
「はい、ランゴスタと言えどあの数ですから少々苦戦していましたが
 2人ともなかなかの腕の持ち主でした
 おかげで予定より早く終わることができました」
「ふむ で、その2人は一体何者なんだ?」
クリンストは、さらに質問を投げかける
するとゴルドーは真剣な表情になり、一呼吸入れて答えた
「駆除を終えてから少し話したんですが・・・
 2人はイロカイ一族の生き残りだと言うんです・・・」
「な・・・なんだと・・・」
クリンストはゴルドーの言葉を聞いて険しい表情になる
「しかし、イロカイ一族はヤツに壊滅されたんじゃ・・・」
クリンストは少し小声になる
「彼ら2人は運良く逃げ延びることができたそうです
 で、その一族を壊滅に追いやったヤツのことなんですが・・・」
ゴルドーはそこまで言うと、体を屈ませる
それに釣られる様にクリンストも椅子に腰掛け
ゴルドーの顔に近づけるかの様に体を屈ませた

     「片方のトトという男が数年前にヤツに偶然会ったそうなんです」

「なんだって・・・ヤツは・・・ウェルは生きているのか・・・」
額に冷や汗を浮かべ、かすれた声でクリンストは呟いた
「そのようです・・・で、その時ウェルは一言残して去ったそうです」
「なんて言ったんだ・・・」
クリンストは唾を飲み込みゴルドーに聞いた
ゴルドーは再び一呼吸入れて口を開いた


     「ケリーウッドの血を絶つまでは私は死なない、と・・・」


Quest.15 Truth which begins to move


日が真上に昇る頃、ノアはメリパティで食事をとり終えていた
そんなノアはメリパティでウエイトレスとして働くライテストと会話を楽しんでいた

「ねぇねぇ、ノアちゃんはどうしてケリーウッドに来たの?」
そんなライテストの質問にノアは声を大きくして答えた
「それはもちろん、英雄的ガンナー ラス・ケリーウッドに憧れてですよ」
「や〜っぱりね〜」
ノアの答えにライテストは予想してたかのような言葉を返す
「え〜、ど〜して〜?わかっちゃいますか〜?」
「だって この街に来るガンナーさんの殆どが その理由で来てるんだもん」
ライテストは笑顔で答える
「へ〜、やっぱそうなんだね〜」
「うん でも、わかるなぁ
 だって、若くして この地を開拓して街を造り、ここまで大きくしたんだもん」
「でしょ! ホント凄いよ
 しかも、この街を襲ってきたモンスターの大群に立ち向かったんですよ!
 そして この街を守った 凄いよ〜、憧れちゃうよ〜」
ノアは興奮気味で語る
「『星落とし』と呼ばれるガンナーだもんね
 ハンターじゃない私にも その凄さは理解できるよ
 でも、モンスターの大群を追い払った後、街に戻る途中に力尽き 帰らぬ人となった・・・」
「惜しい人を亡くしたよね・・・一度だけでも会ってみたかったなぁ・・・」
ノアはそう言いながら肩を落とした
「あ、でも、『星落とし』の名を継ぐガンナーがこの街に今いるんですよ」
そんなノアを見てライテストは明るい声で言った
「え!?それってもしかして、ケリーウッドの息子さんですか!?」
「いえ、違うんです ケリーウッドの一人息子ロス・ケリーウッドは
 16年前に開拓調査に出掛け、モンスターに襲われて亡くなられたそうです・・・」
それを聞いたノアは、言葉無くして再び肩を落とす
「そのガンナーはケリーウッドのたった一人の弟子で
 今もハンターとして活躍しておられる方ですよ 名はジョット、星落としのジョットです」
「凄い!そんなハンターがこの街にいるなんて!会ってみたいな〜」
ノアの顔に明るさが戻る
「ふふふ、いつか会えるかもね ノアちゃんも頑張って凄いガンナーになってね」
「もちろんだよ!ライさんは何か目指してるものってあるの?」
ライテストは立ち上がりながら答える
「私は物書きになるの」
「へ〜、作家さんだね すご〜い、頑張ってなってね」
ノアの言葉にライテストは笑顔で頷いた
「こらぁー!ライー!!サボってないで手伝えー!!」
その時、ギルドの奥から怒鳴り声がした
「ヤバ!ゴメン、戻るね またお話しましょ」
ノアも笑顔で頷き返した
ライテストが奥に走っていった後、ノアは深呼吸する
「よ〜し!こうしちゃいられない!これから狩りに行こう!」

     その頃 場所は変わり、プレジヘッド内部

クリンストとゴルドーは一つの部屋を目指し廊下を歩いていた
一つのドアの前に辿り着き、ゴルドーはノブに手を伸ばしドアを開ける
二人は黙り込んだまま誰もいない部屋に入っていく
そして、ゴルドーが静かにドアを閉めたときクリンストは口を開いた
「ゴルドー・・・ヤツは何故そんなことが言えるんだ?」
しかし、ゴルドーは黙ったまま俯いている
「何故だ!?ラス・ケリーウッドは死んだ!ロスだって死んだんだ!
 それなのに、何故ヤツはそんなことが言えるんだ!?」
クリンストは振り返り、ゴルドーに向かって聞く
ゴルドーは黙ったまま首を横に振る
俯いたままの二人がいる小さな部屋に静寂が訪れる
クリンストは椅子に腰を掛け、静かに口を開いた
「知ってるのか・・・・・ヤツは気付いているのか・・・」
その言葉にゴルドーが俯いていた顔を上げる
クリンストも顔を上げ、ゴルドーの顔を見ながら言葉を続ける

     「ヤツは、ロスが死んでいないということを知っているのか・・・」

部屋に再び静寂が訪れる
クリンストは背もたれに倒れこむように天井を見上げた
その時、黙っていたゴルドーの口が開く
「しかし、彼はそう言っていたと・・・」
「そのイロカイ一族の生き残りとかいう2人は信用できるのか?」
クリンストはすぐに聞き返した
「それは大丈夫です 私が実際に彼らと話してきたんです
 彼らに我々に対する恨みはもうありません
 それに、ランゴスタに襲われ気絶したソルをギルド側まで運んだのは彼らなんです」
ゴルドーは声を大きくして答えた
「・・・そうか もう一度彼らに会って謝っておかないとな・・・」
その言葉にゴルドーは黙って頷いた
「俺は今からガレットさんの所に行って、今回のことを話してくる
 恐らく、今回の異常発生もヤツの動きに関わっているだろうからな」
「そうですね、ガレット殿の耳にも入れておいた方が良いでしょう」
ゴルドーがクリンストに そう答えると2人は深く溜め息をついた

     それから数十分後 場所は戻り、メリパティ

いつもの賑やかさを取り戻したメリパティにゴルドーが入っていく
中に入ると、大勢いるハンターの中からノアを見つける
「ノアちゃん、朝はご苦労様 君達の調査のお陰で無事に駆除することができたよ」
ゴルドーは笑顔でノアに語りかけた
「あ、ゴルドーさん お疲れです 私なんか何もしてないんですよ〜
 だから、これから狩りに出掛けるんです」
ノアも笑顔で答えた
「ほぅ、体力が有り余ってるって訳ですな
 でも、森の方は近づかない様にした方がいいですぞ」
「わかりました 忠告ありがとうございます
 ・・・あれ?クリンストはどうしたんですか?」
ノアはゴルドーの背後を覗き込むように見ながら聞いた
「あぁ、彼は用事があると言って出掛けたよ」
「ふ〜ん・・・」

     再び場所は変わる

部屋でロッキングチェアに揺られ、葉巻を吹かす男
男の傍の机の上にはコーヒーの注がれたカップと多くの葉巻の入った箱が並んでいる
その時、男のいる部屋に近づいてくる足音が聞こえた
男は吹かしていた葉巻を消し、カップを手に取る
それと同時に部屋にノックの音が転がり、扉が開いた
男はコーヒーを一口飲み、口を開く


     「よく来たな・・・待っていたぞ、クリンストよ」

Quest.16 Topsy-Turvy 1 [Light of the ground]


      視界を遮るかのように霧が広がる湿地帯
街を出た時の澄み切った青空は そこには無く
不安感を煽る暗雲が上からハンター2人を見下ろしていた

「ん〜、依頼内容にあったゲリョスが見当たらないね〜」
気を紛らわせるように明るい声で言ったのはノア
「あまり奥に行かないでおこうよ〜、この先には洞窟があるからさ〜」
ノアの明るさを他所に不安な声を出すロロ
2人はゲリョス討伐のクエストを受け、ボトムの沼がある湿地帯に来ていた
「大丈夫だよ〜、何が出ても私が完璧のサポートをしてあげるからさ〜」
ノアは自信に満ちた表情で答える
「ちょっと待って!これって洞窟じゃない・・・?」
ロロは立ち止まり前方を指差しながら言った
ノアも立ち止まり、ロロの指差す方向を見る
視界を遮る霧の奥に、うっすらと見える大きな影
それは確かにロロの言う洞窟の入り口だった
影の奥からは恐怖心を掻き立てる冷気が吐き出されてくる
「いつの間にか、こんな所まで来ちゃってたんだね〜」
そんな状況とは逆に能天気な態度で言うノア
「なにのんきなこと言ってんのよ・・・
 こんな所に用はないよ、さっさと移動しよう・・・」
弱々しい声を出しながら ロロは振り返り歩き出す
今回の目的はゲリョス、ノアはロロの言葉に従い後を追うように歩き出す
「それにしてもゲリョスが見当たらないね〜 暴れてるなんて嘘じゃない・・・イタッ!」
ノアが辺りを見回しながら歩いていると何かにぶつかった
よろける体勢を戻し、前を見る
そこには再び立ち止まっているロロがいた
「ちょっとロロ〜、なにボ〜っとしてるの〜?」
ロロは、ノアの問いに答えず 背負ったハンマーの柄を掴んだ
その行動に、ノアの表情が一変する
「コイツら嫌いなんだよね〜・・・いつも邪魔するんだもん・・・」
ロロは そう呟くと手に掛けたハンマーを抜いて構えた
ノアはボウガンに手を伸ばしながら目を凝らす
霧の中にうっすらと見える数個の影、かすかに聞こえる荒い気息、徐々に大きくなる地面を蹴る音

     ブルファンゴ

確信を得たノアはボウガンを手に取り構える
それと同時にブルファンゴらが一斉に突進を仕掛けた
ボウガンを構えたまま素早く横に移動するノア
それでもボウガンの先は 凄まじい勢いで横を走り抜けるブルファンゴをしっかりと追っている
ノアは散弾の弾倉を差し込みリロードをする
ノアを目掛けてきたブルファンゴらは振り返り、再び地面を蹴りだす
しかし、その音はブルファンゴの目の前まで迫っていた弾丸の雨に打ち消される
休む暇を与えず降り注ぐ散弾に次々と横になっていくブルファンゴ
「余裕ねっ!」
ノアが笑みを浮かべながら そう言った
その時、ノアの真後ろで何かが潰れるような音がした
ノアはボウガンを構えつつ慌てて振り返る
そこには、ハンマーを振り下ろしたロロと 押し潰されたブルファンゴが横たわっていた
「もっと周りもよく見ないとダメだよ〜 で、何匹やった?」
そう言うロロからは、さっきまでの怯えた表情は想像できなかった
「ありがと えっとね・・・3匹かな」
ノアは散弾の餌食となったブルファンゴを数えて答えた
「今ので4匹!勝ちね」
ロロは目の前に横たわるブルファンゴを指差し得意気に言う
よく見ると、ロロの後ろには3匹のブルファンゴが倒れていた
「っていうか、凄いよ!あっと言う間に4匹も狩っちゃうなんて!」
ノアは両手を広げてはしゃぐように言った
「いやいや〜、これくらいなんてことないよ〜
 それよりさ、早いとこ移動しようよ・・・ここ気味悪いからさ〜」
そう言うロロに再び怯えた表情が戻る
「そだね、引き返しましょ 暗くなっちゃうと帰るのも辛く
ノアは、そこまで言うと素早く振り返った
ロロも、ほぼ同時にハンマーを構え直す
振り返った先には突進してくるブルファンゴ数匹が迫って来ていた
別の群れがすぐ傍まで近づいて来ていたのだ
「間に合え・・・!」
ノアは、そう呟きながらリロードする
ロロも慌ててハンマーを振りかぶる

     その瞬間、2人の目の前が光った

「え・・・・・?」
2人は何が起きたか判断することはできなかった
目の前の地面を青白い閃光が横一線に走り抜ける
尻餅をつき呆然とする2人
閃光が通り抜けた場所には、焼け焦げたブルファンゴらが横たわっている
「一体なんなの・・・・」
静まり返る霧の中、思わず呟くノア
そんなノアの耳に妙な音が入ってきた
何の音? ノアはそう思い口を開こうとしたが、ロロの口が先に開く
「ノア・・・・・見て・・・アレってまさか・・・」
そう言ったロロは、先程見つけた洞窟の入り口を震える手で指差していた
ノアは目を凝らし、ロロの震える指の先を見つめる


     そこには、音を立てて青白い光を放つ大きな影があった


Quest.17 Topsy-Turvy 2 [Shadow of the sky]


街を出た頃より少し薄暗くなった湿地帯
不気味な空気は霧の濃さと比例していく
そんな中、さらに深い闇の奥では青白く光っては消え、そしてまた光ってを繰り返していた

「ヤバいって・・・アレだけは・・・」
ロロが震えた声を出す
闇の奥の発光体の足音が ゆっくりと近づいてくる
「ロロ・・・落ち着いて、私たちなら倒せるよ・・・」
ノアが小さい声で呟きながら、ゆっくりと立ち上がる
しかし、ロロは立ち上がらずに座り込んだまま後退りしている
だが、詰め寄るように 光を放つ影の主の荒い呼吸が近づいてくる
洞窟から吐き出される冷気が それの息を白くする
そして、招かれざる者は2人の前に姿を現した
「やっぱフルフルか・・・」
ノアがそう言い終わると同時にロロは立ち上がった
「出た・・・・・」
ロロの言葉に反応するようにノアは横を振り向いた
青ざめた顔、頬をつたう汗、震える口からは歯のぶつかる音が聞こえる
ノアが声をかけようと口を開こうとした時、ロロは目を見開いた

     「出たぁぁあぁあぁ!!!ぎゃあぁぁあぁぁぁ!!!」

「え?」
ノアは何が起きたかわからなかった
さっきまで真横にいたロロの姿が一瞬で消えたのだ
ノアは慌てて振り返る
遥か向こうを走っていくロロ
その姿は どんどん小さくなっていく
「うそ・・・・・」
思わず呟くノア
その時、後ろから甲高い咆哮が放たれる
反射的に耳を塞ぐノア
「ちょ・・待ってよ・・・いくらなんでも1人じゃ・・・」
しかし、構わず近づいてくるフルフル
その体は再び青白い光を帯び始める
それを見たノアは手にしたボウガンを背負い、口を開いた
「ここは一先ず逃げぇる!!!」
そう叫ぶと同時にノアは全力でロロの走っていった方向へ走り出した


なんとかフルフルを撒いたノアは膝に手を突き 息を整えていた
「ハァ・・・ハァ・・・ロロはどこまで走っていったんだろ・・・」
ノアは そう言いながら近くに立っていた大きな木の根元に座り込んだ
そして、大きく溜め息をつく
「ノア・・・ごめん・・・」
後ろから聞こえた不意の声にノアは驚いた
振り返った場所には蹲ったロロがいた
「ロロ!探したよ!大丈夫!?」
ノアの言葉に頷くロロ
「ホントごめん・・・でも、ダメなんだ・・・
 アレだけは・・・気持ち悪くて・・・ごめん・・・」
ロロは泣きそうな顔で震えた声を出す
「わかった、ここは一先ずキャンプまで戻って様子をみましょ ね?」
ノアの言葉に黙って頷くロロ
その時、空から羽音が聞こえてきた
ノアは慌ててロロの横に入り込むように隠れた
「マズいなぁ・・・来ちゃったよ・・・」
ノアは木の幹から顔を出して呟いた
大地に降り立ったフルフルは2人を探すかのように歩き出す
フルフルは嗅覚が発達している 隠れていても見つかるのは時間の問題・・・
そう思ったノアは俯いて考え込む
その横でロロは顔を埋めて震えている
大木の向こうから聞こえる不気味な足音
ノアは閉じていた目を開き 顔を上げた
「ロロ、今から私が有りっ丈の麻痺弾をアイツに撃ち込むわ
 効くかどうかわかんないけど、もしアイツが麻痺ったら その内に走って いい?」
ノアがそう言うと、ロロは顔を上げノアの顔を見て頷いた
それを見てノアは麻痺弾の弾倉を差し込みリロードする
「いくわよ・・・」
ノアは、言葉の後に一呼吸入れ その場から飛び出した

     目の前には鋭い牙が並んだフルフルの口があった

前に一度フルフルを狩ったことがあるが、
これだけ近い距離でフルフルの顔面を見たのは初めてだった
そんなことが頭の中を過ぎった瞬間、フルフルの顔がノアに迫る
一瞬の出来事でノアは身動きが取れなかった
フルフルの顔面は鈍い音をたてながらノアの身につけている防具ごと体にめり込んだ
「ごふっ!」
ノアはそのまま吹っ飛び、岸壁に叩きつけられた
岸壁を擦り落ち、地面に座り込むノア
真横を通り抜け 今、目の前にいるノアを見て ロロは目を見開く
「ロロ・・・・大丈夫よ・・・少し待ってて・・・」
擦れた声を出し 立ち上がろうとするノア
しかし、思うように体は動かない
ロロは恐怖で声が出なかった
真横からはフルフルの荒い息遣いが聞こえる
(ノアはすぐに動けない・・・フルフルは真横にいる・・・
 気はノアにだけ向いている・・・いける、今なら・・・・
 見なければ大丈夫・・・思いっきりハンマーを振れば・・
 大丈夫・・・いける・・・いける・・・いける!いける!)
ロロは自分を言い聞かすように心の中で叫んだ
そして目を瞑り、ハンマーの柄を握り締めた
その時ノアは、力を振り絞り 立ち上がろうとする
そんなノアを他所に、フルフルは口に電気を溜め始める

     グシャアァ!

予想してなかった目の前の出来事に ノアの動きは止まる
フルフルの顔面に鉄塊がめり込んでいた
ロロが振ったハンマーが見事フルフルの顔面を捉えたのだ
しかし、その瞬間 フルフルの顔面から光と同時に電気が放たれる
それはハンマーを伝い ロロの体に流れ込む
「うわぁあぁぁぁああぁ!!!」
うっすら光る体を大きく反らせながら叫ぶロロ
そして、電流が収まると同時にフルフルの顔がハンマーから離れる
そのままよろけながら後ろへ仰け反るフルフル
ロロはぐったりと項垂れる
「ロロォー!!」
そんなロロを見て ノアは立ち上がり傍まで駆け寄った
「ロロ!しっかりして!!大丈夫!?」
ロロの肩を掴み 叫ぶノア
「なんとか・・・うっ! いや・・・大丈夫じゃないかも・・・」
無理矢理作った笑顔で答えるロロ
大木の向こうでは、後退りしたフルフルが悲痛の叫びを上げている
「頑張って!今なら逃げられる!立てる!?」
ノアはそう言ってロロの肩の下に自分の肩を入れる
その時、上空で鳴き声が響いた
ノアは思わず動きを止めてしまう
慌てて見上げたノアの頬に汗が流れる
「ちょっと・・・冗談はやめてよ・・・」
上空には旋回するモンスターの影があった
「今の鳴き声ってクックよね・・・
 なんでこんな所にいるのよ・・・まさか、こっち来ないわよね・・・」
ノアのそんな言葉を裏切り、クックはこちらに顔を向け下降し始めた
「え・・・?」
この時 ノアの口からこぼれた言葉は、クックの行動によるものではなかった
ノアの目の先はクックの背中
クックの背中には もう一つの影があったのだ
謎の影を乗せたクックは下降し続ける
その時、謎の影はクックの体から離れ 空中に投げ出された
その動きを見たノアは、謎の影の正体がわかった



     「なぜ・・・なぜ、クックに人が乗ってるの・・・」


Quest.18 Topsy-Turvy 3 [Wave of the wind]


暗雲が広がる中、かすかに見せる隙間
そこからは、少し傾いた日が覗いていた
そして、それを隠すかのように現れた一つの影

「なぜ人が乗ってるの・・・っていうか、あの高さじゃ・・・」
上空のイャンクックの背中から飛び出した人影を見て、ノアは思わず呟く
その頃、体勢を取り直したフルフルは甲高い咆哮を上げる
耳を塞ぐノア
叫び終えたフルフルは首をうねらせている
「こうなったら・・・・・」
そう呟いたノアはボウガンを構える

     「イヤッホォオォォォー!!」

その時、遠くから声がした
ノアは思わず辺りを見回した
しかし、声の主は見当たらない 「誰!?どこなのっ!?」
ノアは叫んだ
「オレっちはココだぜぇ!!」
その声は上から聞こえた
見上げたノアの目線の先には さっきの影があった
「ここはオレっちに任せなぁ!!」
男はそう言いながら落ちてくる
しかし、落ちてくるという表現は間違っているとノアは気付いた
「滑ってる・・・」
男は大剣に乗って滑るかのように こちらに向かってきていた
その異様な光景にノアは それ以上の言葉が出なかった
男の乗った大剣は風を切る音を立てる
蛇行しながら滑り落ちてくる男を乗せたその大剣の先端はフルフルに向いた
男に気付いたフルフルの体に再び電気が帯び始める
構わずフルフルに向かっていく男

     ズドン!!

空気を切り裂いた大剣が作った渦巻く霧の向こうで大きな音がした
ノアは呆然と立ち尽くす
静まり返る湿地帯に一陣の風が吹き抜ける
霧の晴れた場所には少年と思わせる背の低い男が立っていた
「ねぇちゃん大丈夫か?」
その男は笑顔でノアに聞いた
「え・・・あ、うん・・・」
ノアは困惑しつつ答える
男の後ろには倒れこんで大きく痙攣しているフルフルがいた
そのフルフルの顔面には大剣が突き刺さっている
その大剣はフルフルの顔面を貫通し そのまま地面にも突き刺さっていた
「そかそか ジャージャー!よくやったなぁ!ナイスナイスゥ!」
男は上空を見上げ、親指を立てた手を突き上げ叫んだ
すると、それに答えるかのようにイャンクックの鳴き声が響いた
「え・・・クックが答えた・・・」
鳴き声に反応するように見上げたノアが呟く
「アイツはオレっちの兄弟みたいなもんさ 人懐っこくて いいヤツなんだぜ」
「人懐っこい・・・クックが・・・」
男の言葉に さらに困惑するノア
「それより、そっちのねぇちゃんは大丈夫かい?なんか笑顔で遠くを見つめてるけど」
男は そう言いながらフルフルの方に歩き始めた
「あ!」
ノアは男の言葉でロロのことを思い出す
慌ててロロの傍まで駆け寄るノア
「ハハハハハ!ねぇちゃん、おもしろいなぁ」
男は笑いながらフルフルに突き刺さった大剣の柄を掴むと、振るように引き抜いた
それによって顔面を引き裂かれたフルフルは、痙攣が止まり ぐったりとなった


「ゴメンね、ロロ 大丈夫?」
ノアは申し訳なさそうな表情で聞いた
「大丈夫大丈夫 持ってた応急薬全部使ったから、もうヘッチャラだよ」
座り込んだロロは笑顔で答える
「それよりホントに助かったよ ありがとね」
ロロは立ち上がって男に礼を言う
「いいのいいの、そんな礼なんかいらないよ〜」
男は照れながら答えた
「でも、ホント凄いよね クックと一緒に狩りをしてるなんて」
ノアは振り返りながら そう言った
そこには地に降り立ったイャンクックがいた
「名前はジャージャー、なかなかカワイイやつだろ?
 あ、オレっちはサフーっていうんだ ヨロシクな」
サフーと名乗った男はジャージャーと呼んだイャンクックの傍まで歩み寄る
「あ、そうだ ねぇちゃん達、ケリーウッドから来たのかい?」
サフーはジャージャーの体を撫でながら聞いた
「うん、そうだよ」
ノアは頷いて答える
「そりゃ丁度良かった オレっちもケリーウッドに向かってたところだったんだ
 良かったら一緒にどう?乗せていくよ?」
サフーは笑顔で言った
「乗せていくって・・・そのクックに・・・?」
ノアはジャージャーを指差しながら聞いた
「そうさ 生憎、乗れるのは2人までだけど オレっちはコイツに乗るから大丈夫だよ」
サフーはそう言うと、大剣を手に取る
「センチネル・・・あ!そうだ!それに乗って滑るように落ちてきたけど
 あれってどうなってるの?真っ直ぐ落ちてこなかったよね?」
大剣を見たノアは上空を指差しながら聞いた
「あ〜、アレね アレは『風の波』さ」
「か・・・え?」
上空を見上げながら答えたサフーの言葉に疑問を抱くノア
「えっとね、風にも波ってのがあるんだよ オレっちはね、その風の波がわかるんだ
 それに乗れば滑るように落ちてくることだってできるんだ
 まぁ、オレっちみたいに風の波が見えるようにわからないとダメだけどね
 その風の波を使うのがオレっちの狩りのスタイルなんだ ジャージャーと一緒にね」
サフーは得意気に説明する
「凄い・・・そんなことができるなんて・・・」
ノアは驚きの表情で呟いた
黙ってはいたが、ロロの表情もノアと同じものであった
「さっ!そろそろ行こうぜ!早くジャージャーに乗った乗った!」
サフーがそう言うと、ジャージャーは体勢を低くした
ノアとロロは少し躊躇しながらジャージャーの背中に乗り上がる
「よし!んじゃ行くか、ジャージャー!」
サフーが大剣を背負いながらそう言うと ジャージャーは鳴き声を上げ飛び上がった
その飛び上がったジャージャーの足をサフーが掴む
すると、ジャージャーは大きく羽ばたき 上空に舞い上がった
「イヤッホオォォオォォー!!」
サフーが叫ぶとジャージャーは暗雲を抜けた時点で止まった
「すご〜い!最高の景色じゃない!」
ノアは上空から見える360度の景色に思わず声が出た
その声にロロも背中にしがみついたまま見回している
「だろ〜 お、あそこに見えてるのがケリーウッドだな
 よぉし、ジャージャー あそこまで一気に行くぜぇ!」
サフーはそう言うと足を掴んでいた手を離し 空中に身を投げ出した
「えぇっ!!?」
その行動にノアとロロは同時に声を出してしまう
しかし、サフーは落ち着いた表情で空中を見つめている
「コレだ・・・」
そう呟くと サフーは膝を曲げ、背中の大剣を抜き 自分の足元へ持っていき手を離す
サフーが そのまま大剣の上に乗ると、紙のように浮き上がった
「凄い・・・ホントに風に乗ってる・・・」
それを見たノアは思わず呟く
「よ〜し!んじゃま、ケリーウッドへレッツゴー!」


     大空に浮かぶ大小の影はケリーウッドに向け進みだした


Quest.19 Difference of view


日も暮れ、空が青から橙に変わる頃
街のあちこちで灯が点りだす
そんな中、湿地帯から帰ってきた3人のハンターはメリパティに入っていく

「サフー君はケリーウッドに何をしに来たの?」
ノアはメリパティのドアを開けながらサフーに聞いた
「ちょっとね、ある人を探しててね ここにいるって話を耳にしたんで来たんだ」
「そっか〜 会えるといいね」
サフーの答えに笑顔で返しながら、ノアは椅子に腰を掛けた
「おかえり 狩りはどうだったかね?」
後ろから そう声を掛けてきたのはゴルドー
「あ、ただいまです え〜っと・・・」
そこまで答えたノアの表情が一変する
「忘れてた・・・ゲリョスのこと・・・」
その言葉にロロの表情もノアと同じものになっている
「忘れてた・・?何かあったのかい?」
首を傾げてゴルドーが聞く
「えっとですね・・・ゲリョスを探してたらフルフルに遭遇しちゃいまして・・・」
「なんと、そりゃ災難でしたな で、そのフルフルは?」
続けて聞いてきたゴルドーの質問に思い出したかのような表情になるノア
「そうだ!でね、その時この子に助けてもらったの!」
そう言いながらノアはサフーに両手を向けた
しかし、サフーはカウンターの方をじっと見つめている
「ほほ〜、こんな若い方なのにフルフルを

     「ちょっと待ってくれ」

サフーの一言がゴルドーの言葉を止めた
「すまない、話はまた後でゆっくりさせてもらうよ・・・」
サフーが続けてそう言うと、カウンターに向かって歩き出した
「え・・・どうしたんだろ・・・」
サフーの表情を見たノアが呟く
さっきまでの笑顔の絶えなかったサフーはそこにはいなかった
そのサフーは、カウンターに座るハンターの傍で立ち止まり 口を開いた
「やっと見つけたよ・・・ジェリコさん・・・」

     場所は変わり、ガレットの部屋

2人の男がいるその部屋には沈黙が訪れていた
そんな中、片方の男が葉巻を取り出し火を点け 口を開いた
「こちら側も、そろそろ戦いの準備をした方がいいかもしれんな・・・」
その言葉にクリンストが顔を上げる
「やっぱりガレットさんもそう思うか?」
クリンストの言葉に、ガレットと呼ばれた男は頷いた
「オマエの言う奴が残した言葉、今回の異常発生・・・奴が動き出したということだろう
 いや、もうずっと前から動き出していたのかも知れん・・・」
ガレットは葉巻を吹かしながら答えた
「どうする・・・やはり、攻め込まれる前にこちらが先手を・・・」
「いや、奴の狙いは昔とは違っている
 今の奴の狙いはロス・ケリーウッドの命・・・」
その言葉にクリンストの頬に汗が流れる
「クリンストよ、焦るでない・・・
 今回は我ら少数が動いたところで敵わぬ状況かも知れん・・・
 わかるな・・・全てを話す時が近いづいておるんだ・・・」
真剣な目で言ったガレットに、クリンストは黙って頷く
「心配するな、クリンストよ・・・
 相手が誰であろうとケリーウッドの事だけは洩らしはせん」


部屋のドアを開け 俯いたまま外に出てくるクリンスト
「お・・・すっかり暗くなっちまったなぁ」
街には夜の始まりが訪れ、昼とは違った賑わいが街を照らしていた
クリンストは両手を広げ 大きく深呼吸をする
その時、数人の男が大声を上げ クリンストの横を走り抜けた
「急げ!急げ!」
よく見ると、周りのハンター達も男が走っていった方向に走っていく
「なんだ・・・?」
クリンストはそう呟くと、後ろから走ってきた男を止めて聞いた
「どうしたんだ?なにがあった?」
「メリパティだよ、メリパティ!
 ジェリコが見掛けないハンターにケンカ売られたんだってよ!
 急がないと見れなくなっちまうぜ!」
男はそう言うと再びメリパティに向け走り出した
「はぁ・・・ったく、こんな時に何やってんだか・・・」
そう言いながら大きく溜め息をしたクリンストは、ゆっくりとメリパティに向け歩き出した

     場所は戻り、メリパティ

メリパティの中は野次馬が集まり、座ってはいられない状態になっていた
「アナタ、一体なにが言いたいの?」
カウンターの椅子に腰掛けたままのジェリコはカクテルを手にしたまま そう言った
「オレっちは別に回りくどい言い方なんかしてないぜ
 なんで今になってもクックばかり狩り続けてんのか聞いてるだけだよ」
サフーは にやけた表情で言い返す
「あら、ハンターがクックを狩って何がいけないのかしら?
 小銭稼ぎの為にクックを狩り続けるなんてこと、ハンターなら普通でしょ?」
ジェリコはサフーの方へ体の向きを変え、聞き返した
「ふん、よく言うよ アンタはそんな理由でクックを狩り続けてる訳じゃないだろ
 じゃあもう一つ聞く なぜ『アームズ』に選ばれたのにも関わらず
 自ら『アームズ』を抜けたりなんかしたんだ?」
サフーはカウンターに寄り掛かるように肘をつき聞いた
「さっきから変わったことを聞く子ね・・・
 それもアタシの自由でしょ?アナタには関係のないことだわ
 強いて言うなら、アタシは『アームズ』なんかに興味なんか無いの
 くだらない・・・」
ジェリコは吐き捨てるように答える
すると、サフーはいきなりカウンターを叩いた
「くだらないだと・・・
 オレっちがどれだけ必死になって『アームズ』に選ばれたと思ってるんだ!
 それをくだらないだと・・・ふざけるなっ!!」
サフーの怒鳴り声がメリパティ内に響く
騒がしかった野次馬達も一気に静かになる
「アナタ、その若さで『アームズ』に・・・・・
 思い出したわ・・・若干二十歳で『アームズ』選ばれた男・・・
        鳥を駆る
 アナタ、バードボードサフーね・・・」
ジェリコがそう呟くと、サフーは俯いていた顔を上げ 口を開いた
        鳥を狩る
「そうさ・・・クックノックジェリコ・・・」
静まり返るメリパティ
「ふふ・・・それでアタシに突っ掛かってきたのね
 アナタの相棒の仲間を殺し続けてるアタシが憎かったんだ?
 ま、それでも同じことよ アナタが何者であろうとアタシには関係がない
 アナタに止めろなんて言われる筋合いはないわ」
ジェリコはそう言うと、体の向きを戻した
「へっ・・・そんな幼稚な理由でアンタに会いに来た訳じゃねぇよ・・・」
サフーのその言葉にジェリコは目線だけサフーに向ける
「興味があったんだよ 興味があって聞きたかったんだ
 両親を殺したクックを狩ったにも関わらず、なぜ今尚クックを狩り続けてるのかがよ!
 『アームズ』を抜けたのだって、アンタをハンターにさせたくなかった両親の為だろ!」
サフーが言い終わると同時にジェリコは椅子を突き飛ばしながら立ち上がった
それに反応するかのように、サフーは後ろに下がり 大剣の柄を掴む
そこにゴルドーが透かさず入り込みジェリコを止めた
「知ったような口聞いてんじゃねぇぞコラ!!オマエに何がわかるんだ!!」
ジェリコが怒りの形相で怒鳴る
「へっ・・・口調が男に戻ってるぞ?触れちゃマズかったか?」
サフーが にやけた表情で言い返す
「ジェリコ君!やめるんだ!落ち着け!
 サフー君もだ!その大剣から手を離すんだ!街で武器を抜くのは罪だ!
 鉄格子の向こうに行きたくなければ直ぐに手を離すことだ!」
ジェリコを止めるゴルドーの言葉にサフーの表情は冷静なものになり 大剣から手を離した


     凍りつくような静寂の後、再び野次馬達が響めき始めた


Quest.20 The One


空の闇もすっかり深くなる頃
街の至る所にある窓からは光と同時に賑やかしい声も漏れていた

2人のハンターによる騒動があったメリパティにも普段の顔が戻っていた
そこに騒ぎに遅れたクリンストがやってきた
「お?なんだ、ケンカはもう終わったのか?」
クリンストは中に入るなり そう言った
「遅かったですな 問題の2人なら別々に出ていって騒ぎは一旦収まりましたよ」
そう言いながらクリンストに歩み寄るゴルドー
「そか ケリはついたってことだな」
「いや、そうでもないんですが・・・サフー君については監視をした方がいいかもしれません」
ゴルドーは腕を組みながら考え込むように答える
「サフー?あのバードボードの?」
「えぇ、そのサフーです」
「ふむ・・・で、相手はジェリコか・・・」
クリンストはそう言うと、表情を険しくした
「ま、そっちはオマエ達に任せるよ
 オレはもう1人のじゃじゃ馬を落ち着かせないといけないんでね」
「もう1人の・・じゃじゃ馬?」
続けて言ったクリンストの言葉にゴルドーは首を傾げる
それに対し、クリンストは親指である方向を指す
それに反応し ゴルドーは振り返る
そこには椅子に腰掛けたノアがいた
「ノア君・・・?」
ゴルドーの中の疑問は更に深まる
そんなゴルドーを他所にクリンストはノアの方に歩いていく
「よう、ノア なんだボウガンなんか持って 休まなかったのか?」
クリンストはノアの対面に座りながら聞いた
「うん、ちょっとね あのさクリンスト、ちょっと聞いていい?」
「ん?なんだ?」
ノアの言葉にクリンストはテーブルに肘をつきながら聞いた
「あのさ・・『アームズ』ってなんなの?」
「あぁ、ジェリコやサフーのことだな?」
クリンストの言葉にノアは頷く
「『アームズ』ってのは、国が選んだギルド登録をしていないフリーランスのハンターのことさ」
「国が・・選んだ?」
クリンストの言葉にノアは疑問を抱いた
「知ってると思うが、ハンターってのはギルドという団体で組織された特殊な職だ
 で、依頼者はそのギルドを通してハンターにクエストをこなしてもらうって形になってるその相手が例え国であってもギルドを通さないといけない
 それがハンターズギルドのルールなんだ」
クリンストの説明にノアは黙って頷く
「しかし、国が動くということは それなりに大きなことだ
 だから国からの依頼の殆どが失敗の許されないクエストが多い
 そんな時、国はギルド登録をしていないフリーランスのハンターを雇うんだ
 莫大な報酬金を払ってね」
「じゃあ、フリーランスのハンターが『アームズ』ってことなの?」
クリンストの説明を聞いてノアが聞き返す
「いや、フリーランスのハンター全員が『アームズ』じゃない
 失敗という文字が無い凄腕のハンター 国が持つ最高クラスの兵器にも匹敵する腕前を持つ者
           アームズ
 それを人は『兵器に成りし腕』と呼ぶようになった」

ノアは真剣な表情で黙って聞き込んでいる
「で、『アームズ』という言葉が確立されて以来、
 国がフリーランスのハンターを『アームズ』に選定するようになった
 『アームズ』に選ばれた者の殆どが国からの依頼で生計を立ててる」
説明を終えたクリンストはノアが飲んでいた水を手に取り 飲み干した
「凄い・・・そんな凄いハンターがいるなんて・・・
 でも、どうしてジェリコさんは自ら『アームズ』を抜けたりなんかしたんだろ?」
クリンストの説明に呆気に取られながらノアは呟く
「さぁな ま、アイツにも深い事情があるんだろ
 人様のそういう部分を深く追求したりしない方がいいぞ」
椅子の背もたれにもたれながらクリンストは答える
その言葉にノアは頷いた
そんなノアを見てクリンストはあることを思い出す

     「そうだ、ノア オマエにスゲェ『アームズ』を紹介してやろうか?」

その言葉にノアは俯いていた顔を上げた
「えっ!?クリンスト、『アームズ』の知り合いがいるの!?」
ノアは身を乗り出して聞いた
「あぁ、オマエも会いたい人だと思うぜ」
「私が会いたい人・・・・・」
クリンストは焦らすように背もたれに再びもたれながら口を開いた

     「星落としのジョットさ」



Quest.21 Swinging reliance


小鳥のさえずりが朝を告げるウィンダムの丘
朝日の光が澄み切った空を更に青くする
その雲一つ無い大空に鳥とは違う一つの影
自由に飛び回るその影の正体は1匹のイャンクック
イャンクックは1人の男を乗せ、大空を駆け巡っていた

「ったく、気分が悪い・・・来るんじゃなかったぜ・・・
 ま、思った通りのイヤな奴だったけどな」
ジャージャーに乗ったサフーは眉間にしわを寄せ、ブツブツと呟いていた
そんなサフーを他所にジャージャーは楽しむかのように飛び回る
「だいたい気持ちわりぃんだよ、男のクセに女言葉使ってよぉ
 クネクネしてるしよぉ・・・オマエもそう思うだろ?」
「クエェー」
「あ?そか、オマエ見てないもんな、アイツ」
そんな会話をしている1人と1匹の耳に妙な音が入ってきた

     ゴゴゴ・・・ゴゴゴゴ・・・

「ん・・・なんだ?この音・・・・・下か・・・」
サフーはそう言うと、ジャージャーの背中から乗り出すように下を覗き込んだ
サフーの言う通り、その音は下から聞こえていた
音は徐々に大きくなってくる
その時、ジャージャーは急に高度を落とした
「うわっ!!」
体を傾けたり回転したり、ジャージャーは乱暴に飛び始める
サフーは必死にジャージャーの背中にしがみつく
「ジャージャー!!どうしたってんだよ!!?落ち着けぇ!!」
サフーは叫んだが、目の前にある大きな耳には届いていなかった
「グ・・・グエェ・・・」

     ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

「な、なんなんだ・・・この地響き・・・」
自分の足元をじっと見つめて そう言ったのはジェリコ
朝 街を出て、狩りの為にこのウィンダムに出てきていたのだ
顔を上げ辺りを見回すジェリコ
その時、聞きなれない音がジェリコの耳に飛び込んできた
音のする方を振り返る
しかし、その方向には何も無い
だが音は聞こえる、かなり遠い場所から
表情が険しくなるジェリコ
すると、その聞きなれない音が止んだ
が、次の瞬間、謎の音がしていた方角から凄まじい轟音が押し寄せてきた
「こ、これは・・・・・」
ジェリコは何かを言おうとしたが、言葉を続けるのを止め
崖になっている場所とは逆の方向に走り出した

     ズドォォオォォォン!!!!

迫っていた轟音が辿り着くと同時に凄まじい揺れが丘を襲う
「地震っ!!?」
丘を見たサフーはジャージャーにしがみつきながら叫んだ
至る所で止まることなくヒビが走り、崖という崖は脆く崩れ落ちている
「デ、デカい・・・くそっ!止まれって言ってんだよっ!ジャージャー!!」
サフーの叫びも空しく ジャージャーは何も定めず滅茶苦茶に飛び回る
「グエェェーーーーー!!」
いきなり鳴き叫ぶジャージャー
すると急旋回し 何かを目掛けるかのように急降下し始めた
サフーは、振り落とされまいと必死にしがみつきながらジャージャーの目指す先を見る
そこには地震から逃れようとするハンター2人がいた
「まさかオマエ・・・やめろっ!!ジャージャー!やめるんだっ!!」
しかし、ジャージャーは止めることをせず ハンター目掛け下降し続ける
「そこのアンタぁ!!逃げてくれぇぇ!!」
サフーはハンターに向かって叫んだ

     ガキィィィイィィーン!!!

金属音が丘に響き渡る
勢い余ったジャージャーは、ハンターに突っ込んだ後 岩壁に突っ込んだ
寸前で飛び降りたサフーは地面に着地し ハンターのいる方を見た
そこには大剣でガードの体勢をとっているハンターが立っていた
それを確認したサフーは辺りを見回した
丘を襲った大地震は既に治まっていた
「おいっ!そこのボーズ!これは一体どういうこった!」
危機を逃れたハンターは背中に大剣を納め サフーに歩み寄りながら言った
「すまない!アイツはいきなりの地震に驚いただけで・・・
 別に狙ってアンタを襲ったんじゃないんだ!」
サフーは立ち上がって言った
「あぁ?あのクックはオメェのモノなのか?
 ・・・・・はは〜ん、オマエが昨日街に来てたサフーか
 で、オメェの相方は地震でビビって正気を失ってただけだから許してくれと?
 ふざけるなっ!オレを誰だと思ってるんだ!?あぁ!?
 カーゲーベーのコウ・カッツ様だぞ!アームズであろうが許さねぇからな!」
コウと名乗ったハンターはサフーに怒鳴る
怒鳴られたサフーは俯く
「コウ、それよりヒドい地震だ 一旦街まで戻ろう!」
一緒にいたもう1人のハンターがコウの肩に手を置き 言った
「コシーギー!ビビってんじゃねぇぞ!オレはコイツが許せねぇんだよ!」
コシーギーと呼ばれたハンターはコウに怒鳴られ肩から手を下ろす

     「グエェェエェェーー!!」

その時、モンスターの咆哮が轟いた
振り返るコウとコシーギー
サフーも俯いていた顔を上げた
そこには首を低くし 地面を蹴っているジャージャーが立っていた
「ジャージャー!!」
サフーは思わず声を出してしまったが、ジャージャーの様子のおかしさに眉を歪ませる
「ほほ〜、オメェの相方さんはやる気マンマンだぜぇ
 おもしれぇじゃねぇか オレ様が相手になってやるよ」
コウはそう言いながら大剣の柄に手をかける
「やめてくれぇ!!頼む!やめてくれっ!」
サフーはそう叫ぶと、コウの前に立つ
「あぁ?何言ってんだよ アレはモンスターだぜ?
 人間を襲うモンスターなんだよ!わかったらそこをどきな」
コウは そう言うとサフーを押しよける
「ジャージャー!!オマエどうしちまったんだよ!目を覚ませよっ!!」
サフーは叫んだがジャージャーは口から炎を漏らし 唸っている
歩きながら大剣を抜くコウ

     「やめなっ!!」

後方から聞こえた声にコウの足は止まる
振り返るサフー


     そこには腕を組んでいるジェリコが立っていた


   Quest.22 A crazy blue eye


ウィンダムの丘を襲った大地震は嘘だったかのような澄み切った大空
地面に走る大きな地割れなど他人事のように雲は緩やかに流れる

「ったく!ホント最近ツいてないぜ ジャマばかり入りやがる」
抜いた大剣の先を地面につけ、力の抜けた表情でコウは言う
「すまない ここはアタシの顔に免じて剣を納めてくれないか」
ジェリコは3人のいる方へ歩きながら言った
「あのなぁ、オマエには関係のないことなんだよ
 それに、オレはコイツに襲われたんだぜ?」
「そう言わないでやって 周りを見てよ、これだけの地震が起こったのよ
 取り乱しただけなの 普段は人を襲ったりなんかする子じゃないの」
ジェリコは言い返してくるコウの前に立ってジャージャーに視線を向ける
「え・・・」
サフーはジェリコの言葉に驚かされた
「でしょ?」
次にジェリコは、サフーに視線を向け聞いた
「も、もちろんさ!アイツは絶対に人なんか襲ったりしない!」
サフーは立ち上がって答えた
「ふん!知るかよ!相手はモンスターなんだぜ?
 オマエらがアームズであろうと説得力なんかねぇんだよ」
コウがそう答えた時、後方で何かが弾けるような音がした

     「よけろぉーーー!!」

コシーギーの叫び声が丘に響く
それに反応したコウとジェリコは後方に飛んだ

     ドオォォーーーン!!

激しい音の先には大剣でガードしているサフーが立っていた
ジャージャーが吐き出した炎の塊から身を守ったのだ
「テメっ!やりやがっ
「ジャージャー!!今なにしたかわかってんだろーなぁ!!」
何かを言おうとしたコウの言葉をサフーの怒鳴り声が割く
そのまま大剣を担いでジャージャーに向かって歩いていくサフー
「お、おい オマエはすっこんでろ そいつはオレが
サフーを止めようとしたコウがそこまで言った時、ジェリコが無言で肩を掴み止めた
「ジェリコ テメェいい加減にしろよ オマエは関係無いと言っただろ」
「お願い、ここはあの子に任せてあげて この借りは今度アタシが返すから

ジェリコは真剣な表情でコウに言った
そんなジェリコを見て考え込むコウ
サフーはジャージャーの目の前で立ち止まり、睨むように見上げる
そのジャージャーは何かに憑かれたように唸っている
「お、おい・・・またくるぞ・・・地響きだ・・・」
そんな中、コシーギーは辺りを見回しながら呟いた

     ゴゴゴゴゴゴゴ・・・

他の3人の耳に地響きが届いた時、丘は静かに揺れだした
「チッ!これ以上ここにいるのは危険だ コシーギー!街に戻るぞ!」
コウはそう言うと大剣を納めながら振り返り 歩き出した
「ありがとう」
ジェリコは呟く
「おい 今度 泣けてくるほどメシ奢らせてやるから覚悟しとけよ」
コウは立ち止まりジェリコを指差して言った
そしてコウとコシーギーは揺れる丘を走り去っていった
ジェリコは振り返り、サフーとジャージャーに視線を向ける
その時、大きな揺れが丘を襲った
「くっ・・・マズいな アタシ達も早いとこ丘から離れないと・・・」
ジェリコがそう呟いた時、ジャージャーが激しい咆哮を放つ
「オ、オマエ・・本当にどうしちまったんだよ・・・」
そう呟くサフーの目の前にいるジャージャーは明らかに様子がおかしい
揺れは激しくなってくる
それと同時にジャージャーの眼が青く光りだす
「な、なんなの・・・アレ・・・」
地面に手をつき、揺れに耐えながらジェリコは呟く
その時、ジャージャーは翼を大きく広げ 顔を真上に突き上げた

     「めっ!」

サフーの怒鳴り声が揺れる丘に響き渡った
「え・・・?」
目の前の光景にジェリコはそれ以上声が出なかった
サフーは真上に飛び上がり 大きく振り上げた大剣をジャージャーの顔面に振り下ろしていた
横にした剣身の側面はジャージャーの顔面を完璧に捉えていた
「グ・・グエェ・・・」
力無く崩れ落ちるジャージャー
「ふぅ ヘヘ、ビックリしたかい?
 悪いことした時は いつもこうしてるんだよ
 これで大丈夫さ 次 目が覚めた時は元のジャージャーに戻ってるよ」
サフーは気絶しているジャージャーを見て、笑みを浮かべながら言った
「そ、そうか・・・そりゃ良かった・・・」
ジェリコは微妙な笑みを浮かべて答えた
「ん・・・揺れが収まってるじゃん ふぅ〜、とりあえず一安心だな」
辺りを見回しながらサフーは言った
それを聞いたジェリコも立ち上がりながら辺りを見回した
「ありがとな・・・助かったよ・・・」
サフーはジェリコに視線を向けず 呟いた
それを見てジェリコは微笑む

     「グオォォーーーーォン!!」

いきなり丘に轟いた咆哮に2人はしゃがみ込んで耳を塞いだ
「クソッ!なんなんだよ!?」
サフーはそう言いながら大剣の柄を掴む
そして2人は武器を抜きながら同時に振り返った


     2人の前の岸壁の上には眼を蒼く光らせる巨大なリオレウスが立っていた



Quest.23 Mutual understanding


2度に亘る大きな揺れに耐えた丘に追い打ちをかけるような咆哮が轟く
その咆哮の主は2人のハンターの前に立ちはだかっていた

「リオレウス・・・デカいな・・・」
大剣を構えたサフーが呟く
「それよりなんなの、アレ・・眼が蒼く・・普通じゃなさそうよ」
続いてジェリコも呟いた
岸壁の上に立つ そのリオレウスは唸り声を上げながら両翼を大きく広げた
2人は足に力を入れ 武器を構え直す
次の瞬間、リオレウスは大きく羽ばたいた
真上に飛び上がっていくリオレウス
「チッ!なんだってんだ!風が無くなってやがる!
 丘のクセによぉ・・・さっきの地震のせいか・・・」
サフーは辺りを見回しながら叫んだ
上空で停滞するリオレウスは2人を見下ろした後、首を振り上げた
「気をつけて!上から撃ってくるつもりよ!
 とりあえず ここはアタシに任せて!」
ジェリコはそう言うと、ハンマーを納めヘビィボウガンを背中から下ろす
それと同時に上空で弾ける音が立ち、熱気が2人に迫った
それぞれ真横に飛び避ける2人
上空から放たれた火玉は2人のいた場所に着弾し、地面をえぐった
真横に転がったジェリコは体勢を直し、ボウガンを構える
素早くリロードを済ませ、狙いを定めることなくリオレウスに向かって撃った
撃った弾は拡散弾
その拡散弾は見事にリオレウスの腹部に命中し、爆破した
それと同時に数個の爆弾が左右に飛び散る
「ダメだ!それじゃあ拡散の意味がねぇ!」
空しく飛び散る爆弾を見たサフーが叫ぶ
「ふふ、アタシを誰だと思ってるの?これでも星落としの弟子なのよ」
スコープを覗き込んだジェリコが呟き、
リオレウスに向かって既に差し替えられた通常弾を連射した
撃たれた通常弾は飛び散った爆弾に着弾する

     ドォォーーーン!!
          ズドオォォーーーン!!
        ドオォォーーォン!!

数発の爆音が上がり、その爆発がリオレウスを包み込む
「うひょ〜 ムチャクチャなことするねぇ」
上空を見上げ サフーは言った
爆煙の中からは悲痛の鳴き声が放たれ、声の主は真下に落ちていく
「さぁ!一気にいくわよ!」
リロードしながらジェリコは叫んだ
しかしサフーは辺りを見回している
「くそっ!マジで風がねぇ・・・ジャージャーがいれば・・・」
気絶したジャージャーを見て呟く
地面に叩き落されたリオレウスは立ち上がり唸りだす
振り返り リオレウスの蒼く光る眼を睨むサフー
数秒の沈黙の後、リオレウスは咆哮を上げ 2人に向かって走り出した

     「うおぉぉおぉーー!!」

サフーは叫びながら崖に向かって走り出した
向かってくるリオレウスに貫通弾を打ち込むジェリコは驚いてサフーの方を見る
そして、サフーはそのまま崖から飛び降りた
「え・・ちょ、ちょっと!」
戸惑うジェリコ
しかし、目の前まで迫ってきていたリオレウスの突進から身を守る為 飛び避ける
勢い余ったリオレウスは岸壁に突っ込む
「ちょっと・・・あの子ったら一体なにがしたいのよ・・・」
体勢を直したジェリコが呟く

崖から飛び降りたサフーは体を真っ直ぐにし 落ちていく
「風が無いなら、自分で作ってやるよ・・・」
凄まじい勢いで落ちていくサフーは、全身で風を感じながら目を凝らす
崖下に流れる川が近づいてくる
大剣を持つ手に力が入る
次の瞬間、サフーの目が見開いた
「こいつだっ!!」
サフーは体を屈め、大剣の上に足を乗せた
風を切る音を立て、サフーを乗せた大剣は浮き上がった
「いよっしゃあぁーー!!いくぜぇ!!」

ズドオォォーーーン!!
「くっ・・・コイツ、普通のレウスじゃないわね・・体力が桁違いだわ・・」
徹甲榴弾を外すことなく着弾させるも、リオレウスの動きに弱りは見えない
そのリオレウスは重心を低くし、首を上げた
「また火玉?やることは単純 おつむの中は変わんないようね」
そう言葉を吐き捨てたジェリコにリオレウ
スは炎の塊を吐き出した
「何度も何度も同じことを!当たんないって言ってるでしょ!」
ジェリコはそう叫ぶと真横に飛び 転がった
体勢を直し 顔を上げるジェリコ
「え・・・」
目の前の光景にジェリコは声が出なかった
リオレウスは、もう一つの火玉を放っていたのだ
その火玉は飛び避けたジェリコの目の前まで迫っていた
ジェリコは体を屈めた
と言うより、体が動かなかった

    「ダメか・・・」

ジェリコは覚悟を決めた
その時、ジェリコの体は本人の意思とは別に浮き上がる
ジェリコは何が起きたかわからなかった
ジェリコの目には 今まで自分がいた地面が映っていた
その場所を、さっき自分に迫っていた火玉が通り抜ける
火玉はそのまま岸壁に当たり、それを崩す
ジェリコはここで初めて自分が宙に浮き上がっていることに気付き、見上げた
そこには自分の背中を掴んだジャージャーがいた
「あ、あんた・・・目が覚めたのね」
「クエェーー」
ジェリコの言葉に答えるように鳴くジャージャー
「よくやったぜ!ジャージャー!!」
声に反応し 振り返るジェリコ
その先には、大剣に乗り 飛んでいるサフーがいた
「さぁ!今度こそ一気にいくぜぇ!」
サフーはそう叫ぶとリオレウスに向かい飛んでいく
サフーに気付くリオレウス
「よぉ、待たせたなぁ 今度の相手はオレっちだ!」
そう言うと サフーはリオレウスの腹の真横を飛び抜ける
するとリオレウスの腹部が切れ、血飛沫を吹いた
悲痛の叫びを上げるリオレウス
サフーはそのままリオレウスの周りを旋回する
リオレウスの体の至る所から血飛沫が吹き上がる
飛び回るサフーに噛みつこうと リオレウスは必死に首を振り回す
しかしサフーは華麗にかわしていく
そしてサフーはリオレウスから離れた
「オマエなかなかタフだな でも、そろそろ終わりにしよ〜ぜ〜」
サフーはそう言いながら距離を取ると体の向きをリオレウスに向けた
リオレウスは口から火を漏らしながら唸っている

「いいわよ〜、その位置 そのまま動かないでね〜」
そう言ったのはジェリコ
ジェリコはジャージャーの背中に乗ってボウガンでリオレウスを狙っている
サフーは勢いをつけ リオレウスに向かって突き進む

     「これで終わりだぁー!」
     「バ〜イ、レウスちゃん」
ジェリコは真上からリオレウスに向けて貫通弾を撃つ
そして、サフーはリオレウスの胸部に突っ込んだ

リオレウスの断末魔が丘に響き渡る
ジェリコの撃った貫通弾はリオレウスの眉間に命中し、
貫通した弾は顎を抜け地面にめり込み煙を上げていた
そして、サフーの乗っていた大剣はリオレウスの胸部に深く突き刺さっていた
立ち上がったまま絶命したリオレウスは その後、力無く崩れた


平穏が戻った丘に涼しげな風が吹き抜ける
「へっ 折角謝ってたってのにジャマされちまったな」
サフーは横たわるリオレウスに歩み寄りながら言った
その言葉を聞き 微笑むジェリコ
「昨日はすまなかったな 皆がいる前であんなこと言っちまって」
サフーはリオレウスに刺さった大剣を抜きながら小さく呟く
「いいのよ アタシこそ謝らないとね・・
 くだらないなんて言って・・・ゴメンね」
謝るジェリコにサフーは大剣を納めながら鼻で笑う
「かまわねぇよ オレっちが何と言われようと
 ジャージャーもアンタを気に入ったみたいだしな」
ジャージャーを見ながらサフーは答えた
「その子の背中、なかなか良かったわ
 上からだと狙いやすいし、見晴らしは最高だし
 どう?アタシと組まない?ジャージャーちゃん」
ジェリコの言葉にジャージャーは首を傾げ、困った表情をした
「ふふふ、冗談よ アンタにはもう既に最高の相方がいるものね」
そんなジャージャーと笑って言うジェリコを見てサフーも微笑んだ
「さぁて、そろそろ行くか ジャージャー」
「クエェー」
サフーの言葉に答えるジャージャー
「もう行くの?街には戻らないのね」
「あぁ、またコイツと一緒にフラフラと当ても無く飛び回るよ」
「そう またいつか会いましょ」
ジェリコの言葉にサフーは頷き、少し間を置き 口を開いた
「なんかわかんねぇけど、アンタに会えて良かったと思うよ」
サフーはそう言うとジャージャーの背中に飛び乗った
「またね、ジャージャーちゃん  その子に嫌気が差したら いつでもアタシの所においで」
「ク・・クェ〜」
ジェリコの言葉に困ったような鳴き声を残しジャージャーは飛び上がった


澄み切った大空に浮かぶ一つの影に、ジェリコは見えなくなるまで手を振っていた


Quest.24 For the town


丘を襲った猛威は巨大都市ケリーウッドまで響き渡っていた
元々 地震の少ない土地だっただけに、街の人間の動揺は隠せるほど小さいものではなかった

「ゴルドー!西側の状況はどうだった!?」
遠くから走ってくる大柄の男に大声で問いかけたのはクリンスト
「西側にも大きい被害は見られませんでした
 街全体を見てもこれといった被害は出ていないようですな
 被害者の数もゼロという報告がきましたよ」
クリンストの前まで走ってきたゴルドーは答えた
「そうか、それは良かった
 だが、街の人間の動揺は大きいようだ 引き続き警戒態勢を取っておこう」
「うむ、そうした方がよさそうですな
 では、私はプレジヘッドへ戻り 指揮を執って参ります」
「あぁ、大変だと思うが任せるよ」
最後にそう言ったクリンストにゴルドーは黙って頷き、プレジヘッドに向かい歩き出した
ゴルドーを見届けたクリンストはメリパティに入っていく
「あ、クリンスト 街の状況はどうなの?」
中に入るなりノアが聞いてきた
「あぁ、これといった問題はないようだ
 だが、警戒態勢は暫くの間 解除されないかもな」
「え・・じゃあ、今日は星落としに会えないのかな・・?」
クリンストの言葉にノアは呟くように聞いた
「早く会いたいか?」
聞き返してきたクリンストにノアは黙って頷く
「ん〜・・ジョットさん次第だなぁ
 これだけの地震があったから街に戻ってくるとは思うんだが
 あの人だと・・・まだあそこにいるかもしんねぇなぁ」
クリンストがそう言った時、奥の出入り口から丘から帰ってきたジェリコが入ってきた
「あ、ジェリコさん 狩りに行ってたんですか?大丈夫でした?」
ジェリコに気付いたノアは椅子から立ち上がり聞いた
「えぇ、なんとかね 街の方は大丈夫だったの?」
「はい 街に大きい被害は無かったみたいですよ」
「そ じゃあ、とりあえずは安心ね でも、丘の方は凄か
「ジェリコ」
2人の会話を割くようにジェリコを呼んだのはクリンスト
ジェリコが声のした方を見ると そのクリンストが手招きをしていた
「何か用かしら?」
ジェリコは椅子に座るクリンストの前まで行くなり聞いた
するとクリンストは立ち上がり奥の方へ歩いていく
その行動にジェリコは疑問を抱いたが、クリンストの後をついていった
奥の壁まで歩いた所で立ち止まるクリンスト
「どうしたの?」
同じように立ち止まりクリンストに聞くジェリコ
「丘に行ってたんだろ?
 どうだった?なにか変わった様子はなかったか?」
「変わった様子?それどころじゃなかったわ
 今、丘はメチャメチャよ 街が無傷なことに驚いてるくらいだわ」
ジェリコは壁にもたれかかりながら答えた
「そんなにヒドかったのか・・・
 街にはランク5ほどの地震が2回あったが、
 もう少し大きな地震だったら危なかっただろうな」
「ランク5!?丘はそんなもんじゃなかったわよ! ランク8はあったわ」
クリンストの言葉にジェリコは もたれかけた体を起こし言った
「ランク8だと・・・それが本当なら ここら一帯じゃ過去最大だな・・」
数秒の沈黙の後、再びクリンストは口を開いた
「もう一度聞くが、何かおかしな様子はなかったか?」
「おかしなこと聞くのね?たしかに この辺一帯は地震の少ない土地
 でも、大きかったとは言え ただの地震なのよ?
 アナタ、最近なにかと率先して行動してるけど・・・一体なにを気にしているの?」
「・・・・・」
ジェリコの問いに黙り込むクリンスト
「余所者には言えない事なのね・・・」
ジェリコはそう呟いたがクリンストは黙ったままでいる
そんな2人を先程までいたテーブルからノアは見つめる
「余所者とは言え、アタシもこの街に来て大分経つわ
 この街は好きよ だからアタシもこの街に居座っている
 わかる?もし、この街に何か起きた時は力になるわ
 だからお願い 一体なにが起ころうとしてるの?教えて」
真剣な表情で言うジェリコを見て黙っていたクリンストは口を開いた
「わかった でも、まだ話す時じゃないんだ
 もう少し待ってくれ もう少ししたら話す時が来る
 その時まで待ってくれ・・・」
クリンストは俯いて答えた
「わかったわ・・・・・
 さっきアナタが聞いてきたことだけど、一つ気になることがあったわ」
ジェリコの言葉にクリンストは顔を上げる
「1回目の地震の直前に遠くから奇妙な音がしたわ」
「奇妙な・・音・・・」
「えぇ・・モンスターの咆哮にも聞こえたけど、何か妙だったわ」
「聞こえた方角は覚えているか?」
クリンストの問いにジェリコは少し考え、口を開いた
「場所は特定できないけど、方角は砂漠の方だったわ」
「砂漠・・か・・・ ありがとう、ジェリコ」
礼を言うクリンストにジェリコは微笑み返した
クリンストがノアのいるテーブルに戻ろうとした時、
ジェリコは再び真剣な表情に戻し 口を開く
「ねぇ・・アナタ、一体何者なの?」
立ち止まるクリンスト
「・・・・・」
「まぁいいわ 今は聞かないことにする
 でもいい?なにかあったら すぐに言って 力になるから」
ジェリコの言葉にクリンストは笑みを浮かべ静かに頷いた
そして、ジェリコは外に向かって歩き出す
「そうだ!ジェリコ、ジョットさんの居場所はわからないか?」
クリンストは振り返りジェリコを呼び止めた
「さぁね ま、あの人なら この地震でもいつもの場所にいると思うわ」
振り返らずに答えるジェリコ
「そうか ありがとな、ジェリコ」
クリンストが色んな意味の込められた礼を言うと、
ジェリコはそのまま手を振って返事をし メリパティを出ていった
そして、クリンストは笑顔で振り返り、ノアに向け言った



     「よぉしノア!ジョットさんの所へ行っか!」


Quest.25 Star shooter


澄み切った大空とは裏腹に丘の至る所には地震による無残な爪痕が残っていた
そんな丘に、クリンストとノアは星落としのジョットに会うためにやって来ていた

「しかしまぁホントにメチャメチャじゃねぇの
 ジェリコのヤツ、よく無事だったな・・」
辺りの景色を眺めながら歩くクリンストは言った
「でも、これが街にこなくてホント良かったよね」
続けてノアも言う
「あぁ、これがきてたらヤバかったかもしれねぇな
 しかし、こんな状況でホントにジョットさんいるのかねぇ」
「ジョットさんって、いつも丘にいるの?」
クリンストの言葉を聞いてノアが聞く
「あぁ、殆ど出掛ける先は この丘さ
 しかも、いつも決まった場所で狩りをしてる」
「決まった場所?」
ノアはさらに問う
「この丘に隣接した小さな森、ルーズレムの森ってのが丘の奥にあるんだ
 その少し手前に『竜の鼻』って呼ばれてる高台があるんだけど
 ジョットさんは、いつもそこで狩りをしてるんだ
 スゲェ見晴らしが良いんだぜ」
クリンストは両手を広げて説明する
「へぇ〜 そんな場所があるんだぁ 楽しみだな〜」
ノアは満面の笑みで言った
「崩れてなきゃいいけどな・・・
 まてよ・・この地震で帰ってこないってことは・・もしかして・・・」
そんなノアを見てクリンストは小さな声で呟いた
「えぇ〜!!ちょ、ちょっと大丈夫なのっ!?」
ノアは立ち止まって叫んだ
その表情は今にも泣きそうなものだった
「ムハハ 冗談だよ、冗〜談 ほれ、あそこ見てみろよ」
笑いながら言ったクリンストは ある場所を指差す
「え?」
クリンストの言葉で表情を元に戻したノアは、指差す方を覗き込むように見る
そこにはライトボウガンを手にした1人の男が座っていた
「あ、あの人が星落としのジョット・・・」
ノアの目は輝きだす
「クリンスト!早く行きましょ!」
「ちょっと待てよ 今行っちゃジャマしちまう」
クリンストはそう言うと、走り出そうとしたノアの腕を掴んだ
「え・・?ジャマって・・ジョットさんは座ってるだけじゃ・・・
 一体 何のジャマになるって言うの?」
止められたノアは振り返って聞く
「狩りだよ」
クリンストは一言そう言うと、さっきとは違う方向を指差した
ノアはクリンストが指差した方に振り返る
その先には1匹のゲリョスが空を飛んでいた
ノアは星落としの狩りが見れるとわかり、さらに目を輝かせる
飛行するゲリョスは急に旋回し、スピードを上げ 飛びはじめた
ジョットの存在に気付いたのだ
しかし、ジョットは座ったまま動く気配すら無い
「え・・?え?」
その状況にうろたえるノア
高度を落とし、さらに加速するゲリョス
すると、ジョットは腰を上げ 手にしたボウガンを構え スコープを覗き込んだ
「な、なんなの・・あのバレル・・・」
ノアはジョットのボウガンを見て 思わず声に出す
ジョットが構えたボウガンの先には
普段見慣れているロングバレルより更に長い物が伸びていた
「一瞬だ・・・見逃すなよ・・」
唖然とするノアの後ろでクリンストが呟く
ジョットに迫るゲリョスは咆哮をあげる

     ズドオォーーン!

高台に響き渡る一発の銃声
ジョットに向かっていたゲリョスの進行方向が変わり、ノア達の方に飛んできた
「え!?えぇっ!!?」
思ってもいない声がノアの口から漏れる

     ズザザザァァーーーーー・・・・・

目の前で砂埃が舞う
何が起こったのかわからないノア
そんな尻餅をついたノアの目の前で舞う砂埃の向こうから あるものが姿を現した
「そ・・そんな・・・・・」
それでも理解ができないノア
目の前には眉間から血を吹き出している絶命したゲリョスが横たわっていた
「大丈夫か?狩りは終了だ」
クリンストは、呆然とするノアに手を伸ばしながら言った
それに気付かず、今 目の前で起こった出来事を理解することに必死になるノア
そんなノアを見て呆れた笑みを浮かべるクリンスト
そのクリンストの顔に影が被さる
「久しぶりですね、ジョットさん」
そう言いながら見上げるクリンスト
「ふん、オマエさんが来る時はホントにロクなことが起こらんな フハハハ」
その上から聞こえてきた声で我に返ったノアは、ゆっくりと見上げた


そこには逆光によって影に染まったジョットがゲリョスの背中の上に立っていた Quest.26 Star shooting


日が この世の頂点に昇りきる頃、丘には平穏が戻り 小鳥たちが元気に飛びはじめる

「師匠ぉー!お願いします!私を弟子にしてくださいっ!」
そんな丘に、ノアの叫び声が響き渡る
目の前で土下座しているノアを見たジョットは呆れた顔で頭をかく
「クリンスト・・・この子は一体なんなんだ?」
「いやぁ・・ジョットさんに憧れてるハンターだよ
 ま、ハンターとしてはまだまだだが、ボウガンの扱いに関してはなかなかのもんだよ」
ジョットの問いにクリンストは笑みを浮かべながら答える
ジョットは そんなクリンストの腕を掴みノアから少し離れた所へ歩いていく
「おい・・一体なにを考えてるんだ?ワシに何をさせたい?」
「いやいや、ホントに見込みがあるんだよ 是非、ジョットさんに
「クリンスト 何を企んでおるんだ?」
クリンストが答えてる途中でジョットは再び問いなおす
笑みを浮かべていたクリンストは真剣な表情にして口を開いた
「ジョットさんも感づいてると思いますが ちょっと色々とありましてね
 少しの間、あの子の面倒を見てもらいたいんです
 何かと聞き分けの無い子でしてね ジョットさんの言うことなら聞くんじゃないかと」
「なっ・・・」
「まぁまぁ、詳しい事情は今晩にでも話します だから、お願いします」
なにか言おうとしたジョットをなだめるようにクリンストは言った
「まったく・・・本当にオマエが来るとロクなことが
「んじゃあ、そういうことで たのんますよ〜」
ジョットの言葉を割く一言を残し、クリンストは街の方に走っていく
「あ!おい!コラッ!・・・・・ったく、相変わらず強引なヤツだ
 ふぅ・・・さて、どうしたもんかねぇ・・・」
そう呟くと、振り返り目を輝かせてこちらを見ているノアを見た
「はぁ・・・君、残念だがワシは弟子を これ以上とらんことにしておるんだ」
ジョットはノアに歩み寄りながら言った
「これ以上!?既にお弟子さんはいらっしゃるんですか!?」
「あぁ、一応な ジョニーって奴なんだが、街で見なかったか?」
そのジョットの言葉にノアは少し考え込み、顔を横に振る
「ふむ・・そこそこ有名な奴なんだがな・・・
 まぁ、そういうことだ この件は諦めてくれ」
ジョットはそう言うと、ノアの横を通り過ぎ
竜の鼻に生える唯一の木の木陰に座りこんだ
「そ、そんなぁ!私は星落としに憧れて この街にやって来たんです!
 お願いします!私を弟子にしてくださいっ!!」
ノアは立ち上がり、ジョットに走り寄って叫んだ
ジョットはノアを見ず、黙って遠くを見つめている
そのまま数秒の沈黙が続いたとき、ジョットは口を開いた
「わかった」
その言葉にノアは顔を上げた
「これからワシが角笛を吹く その後、現れたモンスターを撃ち落としてみろ
 どこを撃ってもいい どれだけ撃ってもいい 殺せなくてもいい
 君自身が襲われるまでに飛んでくるモンスターを落とすんだ
 それができれば少しは相手になってやろう」
そう言ったジョットは貫通弾の弾倉をノアの足元に置いた
「え・・・」
ジョットの出した提案にノアの表情は一変した
そんなノアを他所にジョットは立ち上がり、腰に下げた角笛を手にした
「いくぞ」
ジョットはそう言うと角笛を口に持っていく

     ブォオーーーォーー ブォオーーーォーー ブォオーーォー

角笛の音が平穏な丘に響き渡る
ノアは慌ててボウガンに貫通弾の弾倉を差し込む
そんなノアの表情には複雑な心境が浮き出ていた
(どうする・・・飛んでくるモンスターを撃ち落とす・・?
 できるわけない・・・弱ってるモンスターならまだしも・・・
 弱ってるモンスターが飛んできてくれたら・・ありえない・・)
ノアは辺りを見回しながら考える
(いや・・そんなんじゃない・・・それじゃ意味がない・・
 私は何のために この街にやって来たのよ・・・
 やるしかない・・これは弟子にしてもらえるチャンス・・)
心の中で自問自答をするノアを尻目にジョットは少し離れた場所に腰を下ろす
その時、遠くの方から聞き覚えのある咆哮が聞こえた
ノアは振り返る
「そ、そんな・・・よりによって・・・」


そう呟いたノアの視線の先には こちらに向かって飛んでくるリオレイアの姿があった


Quest.27 Star shooting 2 [Turning point]


      雲一つ無い青空の下、子供達の無邪気な声が広がる
ここは人里離れた山奥の小さな村
大自然に囲まれた大地に、語り部と呼ばれる一族は ひっそりと平和に暮らしていた

スパァーン!
村を囲む山々を映し出す鏡のような湖に軽快な音が響き渡る
「イェ〜イ!私の勝ちぃ〜!」
満面の笑みで そう言った少女は両手でガッツポーズをとる
少女の数メートル先には的の絵が描かれた板があり
その下には割れたペイントの実がいくつも転がっていた
「ちぇ、やっぱパチンコじゃノアには勝てないや」
隣にいた少年は口を尖らせて言う
「ヨベル!弱気なこと言ってんじゃねぇよ!
 ノア!オレは勝つまでやめねぇからな!」
そう叫んだのは見るからに活発そうな少年
「エノク〜、いくらやったって同じよ〜
 私、パチンコじゃ負ける気しないも〜ん」
ノアと呼ばれた少女は得意気な表情で言った
「るせ〜!次は本気でやってやる!本気になれば余裕なんだよ!」
エノクと呼ばれた少年は負けじとノアを指差して叫ぶ
「やめなよ〜、二人とも〜 エノクも諦めなよ〜、ノアには勝てないって〜」
そんな2人を見て、ヨベルと呼ばれた少年はエノクをなだめる
「くっそ〜・・やめやめ!パチンコはやめだ!
 よし!次は競争しようぜ!村の入り口まで誰が1番か競争だ!」
エノクはそう言うと、体を構えた
「えぇ〜、それならパチンコしよ〜よ〜 かけっこじゃエノクに

     ズドォーン ズドォーン

いきなり鳴り響いた音はノアの口を止める
その音に驚いた鳥達が一斉に飛びたつ
「な、なに・・・?」
頭を手で押さえ しゃがみ込んだヨベルが呟いた
「今のは・・銃声ってやつ・・だよな・・」
続けてエノクが辺りを見回しながら呟く
鳴り響いた音は気のせいだったのかと思わせる静寂を3人の沈黙が呼び寄せる
不安な表情になるノアとヨベル
それとは逆に、笑みを浮かべたエノクが口を開く
「行ってみないか?」
その一言に顔を見合わせるノアとヨベル
「な、なに言ってんだよ〜 ダメだよ、早く村に帰ろうよ〜」
泣きそうな顔でヨベルは言い返す
「そうだよ・・・村にいる大人に言った方がいいよ・・」
ヨベルに賛同するようにノアも言った
2人の言葉にエノクは腕を組み 喋りだす
「んじゃ、この勝負はオレの勝ちだな
 オレは行くぜ オマエら負け組みは さっさと村へ帰りな」
エノクはそう言うと、音のした方へと歩きだした
黙り込むノア
「やめなよ〜!危ないから帰ろうよ〜!」
そう言ったヨベルは、とうとう泣きだしてしまう
そんなヨベルの横で黙っていたノアが静かに口を開く
「待って・・・私も行く」
その言葉にヨベルの涙は止まり、エノクの足も止まる
「いいぜ どっちが逃げ出さずに音のした所まで行けるか勝負だ・・」
エノクは振り返ってノアに言った
「いいわよ ヨベル、あなたは村に戻って大人を呼んできて わかった?」
ノアは、エノクに返事をしたあと 再び泣き出しそうなヨベルにそう言った
ヨベルは黙って頷き、村の方へ走っていった
「いいよ、行こ・・・」
走っていくヨベルを見届けたノアは、そう言ってエノクの横を歩き過ぎる
エノクは負けじとノアを追い抜き森の中に入っていった

ノア達の住む村の周辺はモンスターがあまり近寄らず
子供達も大人を連れずに遊びに出掛けられる のどかな土地である
とは言っても、子供達だけで遊ばせるのは大人達にとっては不安なものであるため
村の周辺には大人達が交代で見張りに立っていた

あれから暫く歩いたノアとエノク
これといったモノは発見できず、ただ黙々と茂みを掻き分け歩き続けていた
その時、エノクの足が止まる
「ちょ・・どうしたの?」
エノクの後ろを歩いていたノアが言う
「アレ見てみろよ・・・」
そう呟くと、エノクは ある方を指差す
ノアはエノクの指差す方を見た
そこには茂みの間から覗かせる人間の手があった
それを見たノアは思わず声が出そうになったが、手で口を押さえた
「人が倒れてる・・」
エノクは そう呟くと、そこへ向かって歩きだした
茂みから抜け出す2人
そこは少し開けた場所で、上からは太陽の光が降り注いでいた
その照らされた足元には1人の男が横たわっていた
「おじさん大丈夫ですか!?」
ノアは倒れた男に駆け寄る
男は腹部から血を流し、苦しんでいた
「モンスターだ・・・モンスターが出たんだ・・・」
エノクは呟く
「助けを呼ばないと・・・またモンスターが出たらヤバいよ・・・」
「わかってるよ!くそっ!ボウガンが落ちてしまってる」
ノアの言葉に間髪入れずに言い返したエノクは足元を覗き込むように見ていた
倒れた男から2メートルほど離れた場所は5メートルほどの高さの段差ができており
その段差の下には男が持っていたと思われるボウガンが落ちていた
「無理だよ!ボウガンがあっても使えないじゃない!
 それより早く助けを
「この人はどうするんだよ!この人を ここに置いて助けを呼びに行くのか!?」
ノアの言葉を掻き消すかのように叫ぶエノク
「でも・・・」

     ギョエェェエェーーーー!!

その時、森にランポスの鳴き声が響いた
思わず尻餅をつくノア
「逃げろ・・・おじさんのことは気にしなくて・・・いい・・・
 だから・・2人とも・・・早く・・逃げるん・・だ・・・」
そんなノアの横で男が擦れた声で呟いた
男の腹部からは血が流れ続けている
それを見たノアは泣きそうな表情になる
「で・・出た・・・ド、ドスランポスだ・・・」
その言葉にノアは振り返る
目の前には尻餅をついたエノクがいた
そのエノクの見る先の光景にノアは声が出なかった


     向こう側の岩壁には獲物を見る眼で睨んでいるドスランポスが立っていた


Quest.28 Star shooting 3 [When blooming]


平穏な時間が流れる澄み切った大空
それとは逆に静かな森には獣の唸り声が聞こえていた

「あ・・あぁ・・・」
数メートル先にいるドスランポスの鋭い視線にノアは声が出なかった
それだけではなく、座り込んでしまった体は言う事を聞かなくなっている
それはノアだけでなく、エノクも同じことであった
ドスランポスは、そんな2人の様子を伺うかのように静かに唸っている

     カチャ

震えるノアの指先に何かが当たり、金属音のような音が聞こえた
ゆっくりと自分の指先に顔を向けるノア
そこには、倒れた男の腰袋から抜け落ちた拳銃が転がっていた
ノアは無意識に その拳銃を手にする
「無駄だ・・・そんな・・対人の護身用銃じゃ・・モン・・スターは・・殺せない・・・」
自分の拳銃を拾うノアを見た男は擦れた声で呟く
しかし、その声はノアの耳には届いていなかった
ノアは再びドスランポスの方を向き、拳銃を持った震える手を自分の前に持っていく
ドスランポスと言えど、その外皮は人より硬く さらには頑丈な鱗で覆われている
男の言う通り、ノアの持つ拳銃では かすり傷を負わせるのが精一杯である
しかし、拳銃を構えたノアは真っ直ぐにドスランポスを見つめる
それに気付いたドスランポスは、体の向きをノアの方へと変えた

     ギョエェェエェーーーー!!

高らかと鳴き声を上げるドスランポス
それと同時にドスランポスはノア目掛け飛んだ
震えるノアの手は、ゆっくりとドスランポスの動きに合わせ動く

     「うわあぁぁあぁーーーー!!」





ノアはボウガンを構え、スコープを覗き込む
そして、1回だけ深く呼吸する
(できる!落ち着いてやれば絶対にできる!)
心の中で自分に言い聞かせるノア
そんなノアを他所にリオレイアはスピードを上げ、竜の鼻に迫ってくる
横で座っているジョットは黙ってノアを見ていた
(こやつ・・ワシと同じことをしようとしているのか・・・無茶なことを・・)
心の中でそう言ったジョットは、横に置いてあるボウガンに静かに手を掛けた

     ズドォーーン

1発の銃声が響き渡る
放たれた貫通弾はリオレイアの頭部の真横を真っ直ぐに飛んでいく
「なにっ!?」
それを見たジョットは思わず声に出してしまうと同時に立ち上がった
「くっ・・手が震えて狙いが定まらない・・・」
小さな声で呟くノア
そんなノアを見て、手にしたボウガンを足元に置くジョット
(外したとは言え、この距離で1発目をかすめさせるとは・・・
 クリンストの言ったことは本当なのか・・・)
ノアは再び深く呼吸し、静かに目を閉じる
(いける・・落ち着いて・・これができないで他に何ができるの・・・)


     「大丈夫かぁ!」 「2人とも無事です!オリブさんも、何とか息はある!」


(私の取り柄はコレしかないのよ・・落ち着くのよ・・・)


     「ドスランポスは!?」 「死んでます・・一体 誰が・・・」


(このチャンスだけは逃せない・・・逃さない・・・)


     「両眼を的確に撃っている・・あと、口から脳に撃ち込んでいる・・・」


(この先に待ってる試練には自分の力で立ち向かうんだ・・・)


     「スゲェーんだぜ!ノアが拳銃でドスランポスを倒したんだ!」


(その為には、もっと力をつけないとダメなんだ!)

ノアは目を見開いた
迫るリオレイアは咆哮を上げる

     ズドォーーン


ノアの放った2発目の銃声は、あの時のように平穏な時間が流れる大空に鳴り響いた


Quest.29 Star shooting 4 [Star and mud]


日がこの世の頂点から少し傾き、丘に風が戻った頃
ノアが放った2発目の銃声が辺りに響き渡る
その広がる銃声は隣のルーズレムの森にも届いていた

「ン〜・・・ったくもう、ドンドンドンドンうるせぇナ〜
 ゆっくり寝ることもできねぇじゃね〜カ・・・」
森の中にある大きな切り株の上に横になる人影が そう呟きながら起き上がった
「せっかく地震も治まって一眠りできると思ったのニ・・・
 こんな時に狩りなんかしてんじゃ・・・・・ン・・・」
ぶつぶつと呟いていた その男の口が途中で止まる
「この臭い・・・」
そう呟いた男は立ち上がり、顔を上げ小鼻を動かす
「間違いネ〜、近くにいやがるゼ なかなかデカいんじゃねぇノ?」

     グオォォオォーーーン!!

男が言い終わると同時に上空でモンスターの悲痛な鳴き声が響いた


「ダメかっ!?」
そう叫んだのはノア
ノアはスコープから目を離し、肉眼でリオレイアを捉えようとする
リオレイアは悲痛な鳴き声を上げたあと、頭を大きく退け反らし空中でもがいていた
ノアの放った貫通弾はリオレイアの左眼を撃ち抜いていた
「いや、十分だ」
リオレイアを見てそう言ったジョットは地面に座り込んだ
すると、リオレイアは錐揉み状態で森に向かって落ちていく
「やった・・・」
ノアは力が抜けた声で呟いた
そんなノアを見てジョットは鼻で笑う
「やったぁー!落としたぁー!やったぁー!!」

     ズボォ!ズザザザザザアァァ!!

ノアの歓喜の声が響き渡る中、リオレイアは木を薙ぎ倒しながら森に突っ込んでいった


「キタ!キタ!キターーーッ!!」
そう叫んだのは浅い眠りから覚めた男
男は上空を見上げ、飛来してくるモンスターを待ち構える
木を薙ぎ倒す音が近づき、大きくなってくる
「サァ、来やがレ・・・」
男は腰の剣に手を掛ける

     ズボォボオォォ!バキバキバキッ!!

木々の間から姿を現したのは左眼の潰れたリオレイア
そのリオレイアは男の真上を通り過ぎ、さらに加速する
「アララ・・・ちょ、ちょっと・・
 テメェー!どこまで行きやがるんだヨー!!」

     ズドオォォーーーーン!!

森にリオレイアが落ち、その轟音が地面を伝わる


「やった・・すごい・・・ホントに落としちゃった・・・」
ノアは、さっきとは一変し冷静になっていた
リオレイアが落ちた森から物凄い砂煙が舞い上がっている景色を見て
自分が落としたという現実に我が返ってきた
だが、実感できすにいるノア自身は呆然と立ち尽くし 小さな声で呟き続けているのだ
そんなノアを見てジョットは思う
(この子の射撃センスは本物だ・・・
 結果、狙っていた眉間には当たらなかったが
 それでも標的の顔面は確実に捉えていた・・・
 ふふ・・・面白い・・・)
ジョットは静かに立ち上がり、口を開く
「約束だ」
その言葉にノアは振り返る
「約束通り、これから少しだが君の相手になってあげよう」
ジョットは笑みを浮かべながら言った


     その後、丘には再びノアの歓喜の声が響き渡った

















By Mind of Hunting